のれん分け
のれん分け(のれんわけ)とは、日本において、奉公人が主家から許されて出店することを意味する概念[1]。主家と同一またはそれに近い屋号を染め抜いたのれんの使用を認めたことからこの名があり江戸時代に盛んに行われた[1]。
無償方式のフランチャイズのような性格があるが、江戸時代ののれん分けと現代のフランチャイズ・システムには事業対象や契約関係、身分関係などに大きな相違がある[1]。のれん分けは江戸時代には盛んにおこなわれたが、時代が下るにつれ、身分制度や雇用形態の変化、経済構造の変化などに伴って少なくなった[1]。ただ、現代でも従業員の士気高揚策や販売網拡充策として用いられることがある[1]。
飲食店における暖簾分け
[編集]のれん分けした店舗は、支店ではなく独立した店となり、本店に屋号の使用料を納めることはない。少なくとも1960年代に日本にフランチャイズという考え方が持ち込まれるまでは、独立に際して名前の使用許可をもらうことはあっても、それ以上の要求をするような習慣はなかったとされている[2]。
また、独立したら材料の仕入れも味付けもメニュー構成も各店の自由となっており[2]、その点がフランチャイズ・システムとは異なっている。
のれん分けの例
[編集]飲食業
[編集]- 餃子の王将 → 大阪王将
- スエヒロ
- 力餅食堂
- 来来亭
- 大勝軒
- ラーメン二郎
- ぼてぢゅう総本家 → 株式会社東京フード・BOTEJYU Groupホールディングス株式会社
- のれん分け後、ぼてぢゅうの商標権は株式会社東京フード・BOTEJYU Groupホールディングス株式会社に移動している。
- コメダ珈琲 - 創業時の店舗に存在する。
- 支留比亜珈琲店
小売業
[編集]出版業
[編集]製造業
[編集]- 三洋電機 → 東京三洋電機 その後1986年に三洋電機本体に吸収合併。
- 松下電器産業 → 松下電工
- その後、松下電器産業のパナソニックへの社名変更と同時にパナソニック電工に社名変更し、最終的にはパナソニックに再度統合されている。
- 田辺製薬(旧:田邊五兵衛商店・大阪) → 東京田辺製薬(旧:田邊元三郎商店・東京)
- セイコーインスツル(旧第二精工舎 → セイコー電子工業 → セイコーインスツルメンツ) → セイコーエプソン(旧大和工業 → 諏訪精工舎)
- 高見沢電機製作所(後に倒産) → 高見沢サイバネティックス
サービス業
[編集]- 大映(後に倒産 → 再建、現・角川映画) → 大映テレビ、映像京都
- ノヴィル(旧シンクス、徳島、遊技業・外食業主体のコングロマリット)→アクサス(旧(有)セルバ、徳島、専門店主体の小売業)
- 帝拳プロモーション(東京帝拳) → 大阪帝拳、福岡帝拳、八戸帝拳
- 協栄ボクシングジム → 協栄札幌赤坂、博多協栄、協栄カヌマ
- 新日本木村ボクシングジム → 新日本大阪・新日本仙台・新日本カスガ・新日本周南・新日本大宮
- U-FILE CAMP → U-FILE CAMP岐阜
- スーパーホテル
- 森友学園(大阪府)→ 森友学園(兵庫県・愛知県。2024年に新清和台学園に改名)
出典
[編集]- ^ a b c d e 山本誠「会計用語としてののれん概念について」『大阪商業大学論集』第12巻第1号、大阪商業大学商経学会、2016年6月、1-11頁、ISSN 0287-0959、NAID 120006458980、2021年10月30日閲覧。
- ^ a b 北尾トロ『夕陽に赤い町中華』集英社インターナショナル、2019年6月10日。ISBN 978-4797673746。