イギリス君主の称号
イギリス国王関連の地域 | |
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英連邦王国 (イギリスの君主) |
イギリス君主の称号(イギリスくんしゅのしょうごう)の項目では、グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国の国王、いわゆるイギリスの君主の称号について記述する。
現在の称号
[編集]現在のイギリス国王であるチャールズ3世(在位:2022年9月8日 - )の、連合王国における正式な称号は、1953年制定の国王称号法[1]に従って制定された、以下のものとなる。
- 英語: Charles III, by the Grace of God of the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland and of His other Realms and Territories King, Head of the Commonwealth, Defender of the Faith
- ラテン語: Carolus III, Dei Gratia Britanniarum Regnorumque Suorum Ceterorum Rex, Consortionis Populorum Princeps, Fidei Defensor
これを日本語訳すると、「神の恩寵による、グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国およびその他のレルムと領域の王、コモンウェルス首長、信仰の擁護者であるチャールズ3世」となる。
「グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国」はいわゆるイギリス、「その他のレルム」は「Commonwealth realm(英連邦王国)」の構成国家のうち、イギリスを除く諸王国を指す。英連邦王国を構成する諸王国でも「グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国」を当該国名に入れ替えた同様の形式の称号を持つが、「信仰の擁護者」については付加されない国が多い。
イングランド国王称号の変遷
[編集]期間 | 称号 | 使用者 |
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1066–1087 | Rex Anglorum (アングロ人の王) | ウィリアム1世 |
1087–1121 | Dei Gratia Rex Anglorum (神の恩寵によるアングロ人の王) | ウィリアム2世、ヘンリー1世 |
1121–1154 | Rex Anglorum, Dux Normannorum (アングロ人の王、ノルマンディー公) | ヘンリー1世、 スティーブン |
1141 | Lady of the English, Queen of England and Duke of Normans (イングランド人の女君主、イングランド女王およびノルマンディー公) | マティルダ |
1154–1199 | Rex Angliae, Dux Normanniae et Aquitainiae et Comes Andegaviae (King of England, Duke of Normandy and of Aquitaine and Count of Anjou) (イングランド国王、ノルマンディー公およびアキテーヌ公およびアンジュー伯) | ヘンリー2世、 リチャード1世 |
1199–1259 | Rex Angliae, Dominus Hiberniae, Dux Normanniae, et Dux Aquitaniae (King of England, Lord of Ireland, Duke of Normandy and Duke of Aquitaine) (イングランド国王、アイルランド卿、ノルマンディー公およびアキテーヌ公) | ジョン、ヘンリー3世 |
1259–1340 | Rex Angliae, Dominus Hiberniae et Dux Aquitaniae (King of England, Lord of Ireland and Duke of Aquitaine) (イングランド国王、アイルランド卿、アキテーヌ公) | ヘンリー3世、エドワード1世、エドワード2世、エドワード3世 |
1340–1420 | Rex Angliae et Franciae et Dominus Hiberniae (King of England and of France and Lord of Ireland) (イングランドおよびフランス国王、アイルランド卿) | エドワード3世、リチャード2世、ヘンリー4世、ヘンリー5世 |
1420–1422 | Rex Angliae, Haeres et Regens Franciae, et Dominus Hiberniae (King of England, Heir and Regent of France and Lord of Ireland) (イングランド国王、フランスの摂政および相続人、アイルランド卿) | ヘンリー5世、ヘンリー6世 |
1422–1521a | Rex Angliae et Franciae et Dominus Hiberniae (King of England and of France and Lord of Ireland) (イングランドおよびフランス国王、アイルランド卿) | ヘンリー6世、 エドワード4世、 エドワード5世、リチャード3世、ヘンリー7世、ヘンリー8世 |
1521a–1535 | By the Grace of God, King of England and France, Defender of the Faith and Lord of Ireland (神の恩寵によるイングランドおよびフランス国王、信仰の擁護者、アイルランド卿) | ヘンリー8世 |
1535–1536 | By the Grace of God, King of England and France, Defender of the Faith, Lord of Ireland, and of the Church of England in Earth Supreme Head[2] (神の恩寵によるイングランドおよびフランス国王、信仰の擁護者、アイルランド卿、地上におけるイングランドの教会の長) | |
1536–1542 | By the Grace of God, King of England and France, Defender of the Faith, Lord of Ireland, and of the Church of England and of Ireland in Earth Supreme Head[2] (神の恩寵によるイングランドおよびフランス国王、アイルランド卿、地上におけるイングランドとアイルランドの教会の長) | |
1542–1555[3] | By the Grace of God, King of England, France and Ireland, Defender of the Faith, and of the Church of England and of Ireland in Earth Supreme Headb[2] (神の恩寵によるイングランドおよびフランスおよびアイルランド国王、信仰の擁護者および地上におけるイングランドとアイルランドの教会の長) | ヘンリー8世、エドワード6世、(ジェーン・グレイ)、 メアリー1世 |
1554–1556 | By the grace of God, King and Queen of England and France, Naples, Jerusalem, Chile and Ireland, Defenders of the Faith, Princes of Spain and Sicily, Archdukes of Austria, Dukes of Milan, Burgundy, and Brabant, Count and Countess of Habsburg, Flanders, and Tyrol[2][4][5] (神の恩寵によるイングランドおよびフランス、ナポリ、エルサレム、チリとアイルランドの国王と女王、信仰の擁護者、スペインおよびシチリア公、オーストリア大公、ミラノ、ブルゴーニュおよびブラバント公、フランドルおよびチロルとハプスブルク伯および女伯) | メアリー1世とフィリップ(スペイン国王フェリペ2世) |
1556–1558 | By the Grace of God, King and Queen of England, Spain, France, Jerusalem, both the Sicilies and Ireland, Defenders of the Faith, Archduke and Archduchess of Austria, Duke and Duchess of Burgundy, Milan and Brabant, Count and Countess of Habsburg, Flanders and Tyrol (神の恩寵によるイングランドおよびスペイン、フランス、エルサレム、シチリアとアイルランドの国王と女王、信仰の擁護者、スペインおよびシチリア公、オーストリア大公および女大公、ミラノとブラバント、ブルゴーニュ大公および女大公、フランドルおよびチロルとハプスブルク伯および女伯) | |
1558–1603 | By the Grace of God, Queen of England, France and Ireland, Defender of the Faith, etc. (神の恩寵によるイングランド、フランスおよびアイルランド女王、信仰の擁護者、その他) | エリザベス1世 |
ステュアート朝時代の称号
[編集]期間 | 称号 | 使用者 |
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1603–1689 | By the Grace of God, King of England, Scotland, France and Ireland, Defender of the Faith, etc. (神の恩寵によるイングランド、スコットランド、フランスおよびアイルランド王、信仰の擁護者、その他) | ジェームズ1世、チャールズ1世、チャールズ2世、ジェームズ2世 |
共和国時代の称号
[編集]期間 | 称号 | 使用者 |
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1650–1653 | Captain-General and Commander-in-Chief of all the armies and forces raised and to be raised within the Commonwealth of England (海軍提督および全軍の最高指揮官、イングランドコモンウェルスの最高指揮者) | オリバー・クロムウェル |
1653–1659 | By the Grace of God and of the Republic, Lord Protector of the Commonwealth of England, Scotland and Ireland, et cetera, and the Dominions and Territories thereunto belonging (神と共和国の恩寵によるイングランドコモンウェルス、スコットランドおよびアイルランドその他、自治領および領域の財産の護国卿) | オリバー・クロムウェル、リチャード・クロムウェル |
名誉革命以後の称号
[編集]期間 | 称号 | 使用者 |
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1689–1694 | By the Grace of God, King and Queen of England, Scotland, France and Ireland, Stadholther of the Republic of the Seven United Netherlands, Prince of Orange, Count of Nassau, Defenders of the Faith, etc. (神の恩寵によるイングランド、スコットランド、フランスおよびアイルランドの王と女王、ネーデルラント共和国総督(オランダ総督)、オレンジ公、ナッサウ伯、信仰の擁護者、その他) | ウィリアム3世、メアリ-2世 |
1694–1702 | By the Grace of God, King of England, Scotland, France and Ireland, Stadholther of the Republic of the Seven United Netherlands, Prince of Orange, Count of Nassau, Defender of the Faith, etc. (神の恩寵によるイングランド、スコットランド、フランスおよびアイルランドの王、ネーデルラント共和国総督、オレンジ公、ナッサウ伯、信仰の擁護者、その他) | ウィリアム3世 |
1702–1707 | By the Grace of God, Queen of England, Scotland, France and Ireland, Defender of the Faith, etc. (神の恩寵によるイングランド、スコットランド、フランスおよびアイルランドの女王、信仰の擁護者、その他) | アン |
グレートブリテン王国成立以降の変遷
[編集]期間 | 称号 | 使用者 |
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1707–1714 | By the Grace of God, Queen of Great Britain, France and Ireland, Defender of the Faith, etc. (神の恩寵によるグレートブリテン、フランスおよびアイルランド女王、信仰の擁護者、その他) | アン |
1714–1801 | By the Grace of God, King of Great Britain, France and Ireland, Defender of the Faith, Prince-Elector of Hanover, Duke of Brunswick (神の恩寵によるグレートブリテン、フランスおよびアイルランド王、信仰の擁護者、ハノーヴァー選帝侯、ブラウンシュヴァイク公) | ジョージ1世、ジョージ2世、ジョージ3世 |
1801–1814 | By the Grace of God, of the United Kingdom of Great Britain and Ireland King, Defender of the Faith, Prince-Elector of Hanover, Duke of Brunswick (神の恩寵によるグレートブリテンおよびアイルランド連合王国国王、信仰の擁護者、ハノーヴァー選帝侯、ブラウンシュヴァイク公) | ジョージ3世 |
1814–1837 | By the Grace of God, of the United Kingdom of Great Britain and Ireland King, Defender of the Faith, King of Hanover, Duke of Brunswick (神の恩寵によるグレートブリテンおよびアイルランド連合王国の王、信仰の擁護者、ハノーヴァー王、ブラウンシュヴァイク公) | ジョージ3世、ジョージ4世、ウィリアム4世 |
1837–1876 | By the Grace of God, of the United Kingdom of Great Britain and Ireland Queen, Defender of the Faith (神の恩寵によるグレートブリテンおよびアイルランド連合王国の女王、信仰の擁護者) | ヴィクトリア |
1876–1901 | By the Grace of God, of the United Kingdom of Great Britain and Ireland Queen, Defender of the Faith, Empress of India (神の恩寵によるグレートブリテンおよびアイルランド連合王国の女王、信仰の擁護者、インド女帝) | |
1901–1927 | By the Grace of God, of the United Kingdom of Great Britain and Ireland and of the British Dominions beyond the Seas King, Defender of the Faith, Emperor of India (神の恩寵によるグレートブリテンおよびアイルランド連合王国およびイギリス海外自治領の王、信仰の擁護者、インド皇帝) | エドワード7世、ジョージ5世 |
1927–1948 | By the Grace of God, of Great Britain, Ireland and the British Dominions beyond the Seas King, Defender of the Faith, Emperor of India (神の恩寵によるグレートブリテン、アイルランドおよびイギリス海外自治領の王、信仰の擁護者、インド皇帝) | ジョージ5世、エドワード8世、ジョージ6世 |
1948–1953 | By the Grace of God, of Great Britain, Ireland and the British Dominions beyond the Seas King/Queen, Defender of the Faith (神の恩寵によるグレートブリテン、アイルランドおよびイギリス海外自治領の王/女王、信仰の擁護者) | ジョージ6世、エリザベス2世 |
1953–2022 | By the Grace of God, of the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland and of Her other Realms and Territories Queen, Head of the Commonwealth, Defender of the Faith (神の恩寵によるグレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国およびその他のレルムと領土の女王、コモンウェルス首長、信仰の擁護者) | エリザベス2世 |
2022–現在 | By the Grace of God of the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland and of His other Realms and Territories King, Head of the Commonwealth, Defender of the Faith (神の恩寵によるグレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国およびその他のレルムと領域の王、コモンウェルス首長、信仰の擁護者) | チャールズ3世 |
国王が保持するその他の称号
[編集]イギリス国王はその他、自治領や領域に関する称号を保有している
ノルマンディー公
[編集]征服王ウィリアム1世が保持していた称号であり、フランスのノルマンディー地方の領有権をも意味していた。しかしフランスの公国領は次第に縮小し、1204年にはチャンネル諸島を除いてフランス王国の手に落ちた。1259年、ヘンリー3世はノルマンディーの請求権を放棄した。しかし1420年のトロワ条約によってヘンリー5世はフランス国王とともにノルマンディー公の継承権を獲得し、彼の息子であるヘンリー6世以降のイングランド国王はフランス国王とノルマンディー公を称するようになった。フランス国王号は1801年に使用を停止したが、ノルマンディー公はそれ以降も称している。
またイギリスの王室属領であるチャンネル諸島のジャージーおよびガーンジーの元首としての称号は現在でも「ノルマンディー公」であり、両地域における行事ではこの称号が用いられる。
ランカスター公
[編集]ランカスター公であったヘンリー4世がイングランド国王位につき、息子ヘンリーをランカスター公に封じた。その後ヘンリー5世が即位して以降は国王が保持する公爵位となっている。
マン島領主
[編集]グレートブリテン島とアイルランド島の間に浮かぶマン島は、イングランド貴族であるスタンリー家が代々マン島領主(英語: Lord of Mann)として統治していた。1786年のマン島購入法によってマン島は王室財産となり、「マン島領主」の称号は国王が保持する称号の一つとなった。
陛下号
[編集]国王に対する呼びかけとしては、「(His/Her) Majesty」が用いられており、日本では通例陛下と訳される。
12世紀頃からイングランド国王は「Highness」(殿下)の称号を用いてきた。この称号は当時のヨーロッパの君主である神聖ローマ帝国、フランス王国、カスティーリャ王国、アラゴン王国でも用いていた称号に該当し、当時は最高の格式を持っていた。しかし16世紀になると神聖ローマ皇帝とフランス国王は「Majesty」に該当する称号を用い始めた。イングランドにおいて「Majesty」の称号はそれ以前にも散発的に用いられていたが、ヘンリー8世の時代から本格的に用いられ始めた。ただし国王の称号として「Majesty」のみが使用されたわけではなく、「Highness」や「Grace」(グレース (称号))も混用されていた。
またスコットランドでは当初「Grace」が用いられていたが、後に「Majesty」となり、ジェームズ1世がイングランド・スコットランド両国王となると「Majesty」が正式となった。実際の使用に際しては「最も優れた陛下」「最も慈悲深き陛下」といった成句としても用いられている。
脚注
[編集]- ^ “Royal Titles Act 1953”. 2022年9月22日閲覧。
- ^ a b c d England: Kings and Queens: 1066-1649. Retrieved 11-03-2010.
- ^ England: Royal Styles: 1553-1558. Retrieved 11-03-2010.
- ^ A History of the British Presence in Chile: From Bloody Mary to Charles Darwin and the Decline of British Influence. Palgrave Macmillan. (2009). pp. 2. ISBN 978-0-230-61849-7
- ^ Burke's Guide to the Royal Family. London: Burke's Peerage Limited. (1973). pp. 206. ISBN 0-220-66222-3