ガズニー州

ガズニー州

غزنى
北緯33度20分 東経67度45分 / 北緯33.333度 東経67.750度 / 33.333; 67.750座標: 北緯33度20分 東経67度45分 / 北緯33.333度 東経67.750度 / 33.333; 67.750
アフガニスタンの旗 アフガニスタン
州都 ガズニー
政府
 • 州知事 ムハンマドザイ・アホン(2021年時点)
面積
 • 合計 22,460.5 km2
標高 2,178 m
人口
(2012)[2]
 • 合計 1,168,800人
 • 密度 52人/km2
等時帯 UTC+4:30
ISO 3166コード AF-GHA
主要言語 パシュトゥー語
ダリー語
座標は[4]

ガズニー州(ガズニーしゅう、ペルシア語: غزنى[4][5])は、アフガニスタン南東部のである。面積は2万2461平方キロメートル(34州中8位)、総人口は約117万人(34州中5位)、人口密度は52人/平方キロ(34州中11位)である[2]ガズニ県ガズニ州[6] と表記されることもある。州都はガズニー市

地理

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アフガニスタン南部の河川

ガズニー州はヒンドゥークシュ山脈スライマン山脈に挟まれた地域にある。州の北西部から中央部にはヒンドゥークシュ山脈があり、その中心にはダシュテ・ナーウアー湖[4][7]Dacht-i-Navar火山群がある。一方、州の北東部から南部には細長い平野が広がっている。平野の幅は広いところで約40キロメートルほどあり、州内だけで100キロメートル以上の回廊を形成し、最終的にはカンダハール州に達する。州都ガズニーはちょうど平野が始まる辺りにあり標高(2178メートル[3])が非常に高く、カーブル(標高1798メートル[3])やカラート(1544メートル[3])、カンダハール(1003メートル[3])を見下ろしている。ヒンドゥークシュ山脈から乾燥した平野に向かって幾筋もの川が流れてきて所々にオアシスを作り、その中のひとつのタルナク川英語版はカンダハールまで流れて行く。スライマン山脈からも河川が流れてきて、ガズニーの東南の「サル・デ・バンド」ダム[4][8] や州の南部のアーベ・イスターダ・エ・ムクル塩湖[4][9] と繋がっている。州の東端はスライマン山脈から続く丘陵が南西に延びており、平野を東西に仕切っている。丘陵の東にはパクティヤー州パクティーカー州があり、そちらも細長い平野になっている。

歴史

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中世

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10世紀、ガズニー州はペルシアを支配したガズナ朝の中心地として栄えた。

近代

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1839年、第一次アフガン戦争ガズニーの戦い英語版が起きた。

冷戦時代

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1950年頃はガズニー州はカーブル州の一部だったが、1957年までに分割されて独立した州になった[10]

アメリカ同時多発テロ事件以降

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2001年9月、アメリカ同時多発テロ事件が起き、10月にはアメリカ合衆国がアフガニスタンに侵攻し、有志連合北部同盟と共に戦闘を開始した。2004年10月、第一回の大統領選挙が実施され、ガズニー州ではハーミド・カルザイ(約52%)が最多得票を得た[11]。2005年9月、第一回の下院選挙(Wolesi Jirga)と州議会選挙が行われた。2006年3月、アンダルー郡を巡って州警察とターリバーンが衝突し[12]、地元在住の元州知事タジ・モハマドが射殺された[13]。10月、国際治安支援部隊(ISAF)がアフガニスタン東部で活動を開始した。ガズニー州の担当はポーランド軍[14] などで構成されるガズニー地方復興チーム英語: PRT GHAZNI)だった。2007年、戦争は激しさを増し、自爆テロ無差別爆撃によってISAFや民間人に多数の犠牲者が出た[15][16]。ガズニー州でもターリバーンの力が州都のすぐそば[4] の幹線道路にまで及んでいる実態が明らかになった[17]。またこの頃から州内の3分の2の郡で職員が職場を放棄し、郡裁判所などが事実上閉鎖されていたことが後年明らかになった[18]。2008年6月、アーフィア・シディキ事件が起きた。同月、ターリバーンの手に落ちたアジルスターン郡をISAFが空爆したが[19]、8月には米軍がナーワ郡から撤退した[20]

第二回大統領選挙後

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2009年8月、ナーワ郡とアジルスターン郡はターリバーンの支配下にあったが[21]、第二回の大統領選挙が実施され、ガズニー州ではカラ・バーグ郡出身の慈善家ラマザン・バシャルドストが最多得票(約61%)を得た[22]。2010年9月、第二回の下院選挙と州議会選挙が行われたが、戦争は更に激しくなりISAFや民間人の死傷者が急増し[23][24]、ガズニー州でも副知事が自爆テロにより死亡した[25]。2011年11月、ISAFは州都ガズニーの治安維持権限をアフガニスタンに移譲し[26]、2012年1月にはアフガニスタン陸軍と多国籍軍が4年ぶりにナーワ郡を奪還した[27]。2013年6月、ISAFがアフガニスタンに州内の治安維持権限を移譲したので[28]、アフガニスタン陸軍第203軍団第三旅団はアンダルー郡やアジルスターン郡でターリバーンと交戦した[29]。しかし8月には幹線道路で再び誘拐事件が起き、カンダハール州の女性下院議員のファリバ・アハマディ・カカルがターリバンに誘拐された(人質交換により解放)[30]

第三回大統領選挙後

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2014年4月、第三回の大統領選挙が実施され、ガズニー州ではアブドラ・アブドラ元外相が最多得票(約54%)を得た[31]。9月、ターリバーンは政府の合同庁舎を襲撃し(10人死亡・160人以上負傷)[32]、アジルスターン郡を占領し、政府への協力容疑で多数の村民を斬首した(村民70人死亡・斬首15人)[33]。しかしISAFは2014年末で終了し、多国籍軍は確固たる支援任務に移行し、治安はアフガニスタン軍や警察が独力で維持することになった。一方、ターリバーンもムハンマド・オマルの死を認めて、アフタル・ムハンマド・マンスールが公式に後を継いだ[34]。2015年4月、ターリバーンは春の大攻勢「アズム」を開始し[35]、全国に攻撃をしかけた。ガズニー州でも9月の刑務所襲撃により多数のターリバーンが脱走し、10月には約2000名のターリバーンが州都を攻撃した[6][36]

第四回大統領選挙後

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2021年2月のPajhwok Afghan Newsの電話調査によると、ターリバーンはGero郡とアジルスターン郡、ナーワ郡を完全に支配しており、 Zankhan郡、Rashidan郡、Waeez郡の中心都市も支配していると言う[37]

8月13日、州知事がターリバーンと勝手に交渉して首都カブールに退避した為に、ターリバーンが州都を占領した[38]。アフガニスタン軍は基地に撤退して戦っており[38]、カブールに戻った州知事は逮捕された[38]

行政区分

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ガズニー州の郡

ガズニー州は1市18を擁する[2][39]

  • Ghazni - 州都ガズニー
  • Wali M. Shahid - khugyani
  • Khwaja Omari
  • Waghaz
  • Deh Yak
  • Jaghatu
  • Andar(アンダルー郡[4]
  • Zanakhan
  • Rashidan
  • Nawur
  • Qara Bagh(カラ・バーグ郡[4]
  • Giro
  • Ab Band
  • Jaghuri(ジャーグーリー郡[4]、ジャグリ郡)
  • Muqur(ムケル郡[4]
  • Malistan
  • Gelan
  • Ajristan(アジルスターン郡[4]
  • Nawa(ナーワ郡[4]

産業

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農業

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ガズニー州の農作物 (2012年度)[40]
種類 生産量 順位
小麦 15万9000トン 13位
とうもろこし 2万7280トン 2位
グレープフルーツ 8120トン 5位
大麦 7200トン 21位
2439トン 19位
アーモンド 600トン 5位
りんご 585トン 4位
12トン 22位

ガズニー州は農業が盛んで、農業収入が家計収入の半分以上(57%)を占めている[41]。特にトウモロコシ(34州中2位)やリンゴ(34州中4位)、グレープフルーツ(34州中5位)、アーモンド(34州中5位)の生産は全国的に見ても盛んである。

鉱業

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ムケルのすぐ北の山中にはザルカシャーン鉱山英語版英語: Zarkashan Mine[4] がある。この鉱山には484平方キロメートルのスカルン鉱床があり、を産出する。採掘は昔から行われていたようだが、1960年代中盤にドイツが再発見し、ソビエト連邦が実地調査をした。近年ではアメリカのアメリカ地質調査所(USGS)が評価し、2012年に優先入札会社が決定した[42]

交通

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ガズニー州には幹線道路のアジアハイウェイ1号線カブール・カンダハール高速)が走っている[43]。またガズニー空港があり[44]、2013年末から民間旅客機の運行が始まった[45]

住民

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民族

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ガズニー州の主な民族・種族はパシュトゥーン人ギルザイ部族連合アンダル族スライマーン・ヘール族タラキー族ハローティー族)とタジク人である。その他にニアジ族、スレマンジ族(Sulemanzi)、アリー・ヘール族ハザーラ人、ダプタニ族(Daptani)、デュラニ族、ミヤ・ヘール族、バヤット族ジャラルザイ族ホギャニ族ムサ・ヘール族ホータキ族ワルダク族が続く[41]。なお北部のマリスターン県など6県はハザーラジャート英語版と呼ばれる伝統的なハザーラ人の居住地帯である。[要出典]

言語

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ガズニー州の主要言語はパシュトゥー語(51%)とダリー語(47%)であり、少数のウズベク語話者(1%)が居る[41]。識字率は31%である[41]

宗教

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脚注

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  1. ^ Afghan Biographies - Akbarzada, Muhammad Musa Khan”. Afghanistan Online. 2014年3月2日閲覧。
  2. ^ a b c d Area and Administrative and Population”. Islamic Republic of Afghanistan (2013年). 2014年2月3日閲覧。
  3. ^ a b c d e Topological Information About Places On The Earth”. topocoding.com. 2014年3月9日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m The U.S. Board on Geographic Name”. U.S. Department of the Interior. 2014年2月14日閲覧。
  5. ^ ペルシア語ラテン翻字: Ghaznī
  6. ^ a b タリバン、東部の州都にも攻勢 アフガン、治安部隊が撃退”. AFP (2015年10月13日). 2015年10月13日閲覧。
  7. ^ ペルシア語ラテン翻字: Dasht-e Nāwêr
  8. ^ ペルシア語ラテン翻字: Sar Deh Band
  9. ^ ペルシア語ラテン翻字: Āb-e Istādah-ye Muqur
  10. ^ "Provinces of Afghanistan". Statoids. 2014年3月2日閲覧
  11. ^ Ghazni Province”. Independent Election Commission of Afghanistan. 2014年3月10日閲覧。
  12. ^ Taleban Call the Shots in Ghazni”. INSTITUTE FOR WAR&PEACE REPORTING (2006年5月5日). 2014年2月22日閲覧。
  13. ^ Afghan former governor shot dead”. BBC NEWS (2006年3月18日). 2014年3月10日閲覧。
  14. ^ RC – East”. ISAF. 2014年3月10日閲覧。
  15. ^ アフガン大統領、NATO・米軍の「無差別」作戦を非難”. AFP BBNews (2007年6月24日). 2014年2月22日閲覧。
  16. ^ アフガニスタン、2007年は自爆攻撃が多発、タリバン掃討作戦で犠牲者増大”. AFP BBNews (2007年12月18日). 2014年2月22日閲覧。
  17. ^ Taleban rule the road in Ghazni”. BBC NEWS (2007年8月6日). 2014年3月10日閲覧。
  18. ^ Absenteeism closes district offices in Ghazni”. Pajhwok Afghan News (2011年10月5日). 2014年3月10日閲覧。
  19. ^ Efforts to 'retake' Afghan town”. BBC NEWS (2008年6月24日). 2014年3月10日閲覧。
  20. ^ Concern over Afghan 'withdrawal'”. BBC NEWS (2008年8月15日). 2014年3月10日閲覧。
  21. ^ Afghanistan: Security map”. BBC NEWS (2009年8月19日). 2014年3月10日閲覧。
  22. ^ Ghazni Province”. Independent Election Commission of Afghanistan. 2014年2月17日閲覧。
  23. ^ アフガニスタン駐留兵の今年の死者600人に、過去最悪のペース”. AFP BBNews (2010年10月26日). 2014年3月10日閲覧。
  24. ^ 2010年の民間人死者、タリバン政権崩壊後最悪に アフガニスタン”. AFP BBNews (2010年3月9日). 2014年3月10日閲覧。
  25. ^ アフガン、自爆テロで副知事死亡 東部ガズニ州”. 47NEWS (2010年9月28日). 2014年3月10日閲覧。
  26. ^ Afghan president announces second troop transition”. BBC NEWS (2011年11月27日). 2014年3月10日閲覧。
  27. ^ Nawa district retaken from Taliban after 4 years”. Pajhwok Afghan News (2012年1月24日). 2014年3月10日閲覧。
  28. ^ アフガンで治安維持権限移譲完了 ISAF撤退へ節目迎える”. MSN産経ニュース (2013年6月18日). 2014年3月10日閲覧。
  29. ^ 36 militants killed in operations: ANA”. Pajhwok Afghan News (2013年6月28日). 2014年3月10日閲覧。
  30. ^ Afghan MP Fariba Ahmadi Kakar freed by the Taliban”. BBC NEWS (2013年9月8日). 2014年3月10日閲覧。
  31. ^ 2014 Elections Results”. Independent Election Commission of Afghanistan. 2015年2月24日閲覧。
  32. ^ Afghanistan Taliban kill 10 in Ghazni government compound”. BBC NEWS (2014年9月4日). 2015年2月25日閲覧。
  33. ^ Taliban seize strategic Afghan district in Ghazni province”. BBC NEWS (2014年9月4日). 2015年2月25日閲覧。
  34. ^ オマル師死亡 タリバンも認める 世界欺き死後2年も「偽声明」 後継は序列2位”. 産経ニュース (2015年7月30日). 2015年10月14日閲覧。
  35. ^ アフガニスタン:タリバーンによる春季攻勢に関する注意喚起”. 外務省. 2015年10月14日閲覧。
  36. ^ Afghan forces repel Taliban attack on Ghazni as offensive spreads”. The Guardian (2015年10月13日). 2015年10月13日閲覧。
  37. ^ Govt, Taliban make exaggerated claims of territory they control”. Pajhwok Afghan News (2021年2月12日). 2021年2月21日閲覧。
  38. ^ a b c Taliban Take Over Ghazni City, Governor Arrested” (英語). TOLOnews. 2021年8月12日閲覧。
  39. ^ Central Statistics Organization (2013年). “Settled Population of Ghazni province by Civil Division , Urban, Rural and Sex-2012-13”. Islamic Republic of Afghanistan. 2014年2月8日閲覧。
  40. ^ Agriculture Development”. Islamic Republic of Afghanistan (2013年). 2014年2月5日閲覧。
  41. ^ a b c d Ministry of Rural Rehabilitation and Development (2013年). “Ghazni Provincial Profile”. Islamic Republic of Afghanistan. 2014年3月2日閲覧。
  42. ^ Ministry of Mines and Petroleum (2012年12月16日). “Preferred Bidder for Zarkashan Project”. Islamic Republic of Afghanistan. 2014年2月10日閲覧。
  43. ^ アジアハイウェイ路線とその現状”. 国土交通省. 2014年1月27日閲覧。
  44. ^ Civil Aviation Authority. “Airports”. Islamic Republic of Afghanistan. 2014年3月9日閲覧。
  45. ^ Maftoon, Saifullah (2013年12月28日). “$7m Ghazni civil airport inaugurated”. Pajhwok Afghan News. http://www.pajhwok.com/en/2013/12/28/7m-ghazni-civil-airport-inaugurated 2014年3月9日閲覧。 

関連項目

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