キャンディ (小説)

キャンディ』(Candy)は、マックスウェル・ケントンとメイソン・ホッフェンバーグ[1]が書いた小説で、1958年パリオリンピア・プレス (Olympia Press) より出版された。

作家名マックスウェル・ケントンは、テリー・サザーン(『博士の異常な愛情』『イージー・ライダー』などの脚本家)の変名であり、ゴア・ヴィダルの『マイラ』と並んで1960年代の奇書といわれている。

この小説はヴォルテールの『カンディード』を土台にしたもので、キャンディという少女の破瓜に至るまでの性的遍歴を、毒のあるユーモアを交えながらスラップスティック・コメディさながらに、シニカルに描いている。出版社が悪名高いポルノ本の版元であるため、フランスで発行された英語の小説であるにもかかわらず、青少年に悪影響を与えるとして発禁処分を受けた(度重なる発禁処分をめぐってド・ゴール政府と抗争状態にあった発行者のモーリス・ジロディアスは、『ロリポップ』と改題して発売した)。

米国では1964年になって、大手出版社のパトナムからテリー・サザーン名義で出版され、ベストセラーになった。

日本語版

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  • 『キャンディ』サザーン&ホッフェンバーグ、稲葉明雄訳、早川書房 ハヤカワ・ノヴェルズ、1965年6月。早々に発禁絶版となった。
  • 『キャンディ』清水正二郎または磯村謙(清水の変名で、のち作家胡桃沢耕史)訳、浪速書房、1964年6月
オリンピア・プレス版での翻訳で、マックスウェル・ケントン名義での出版もあり、下記のテリー・サザーン名義のものと若干内容が異なっている。

映画化

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1968年に、クリスチャン・マルカン監督で『キャンディ』として映画化された。主演のキャンディ役は当時は無名新人のエヴァ・アウリン(エヴァ・オーリン)だが、脇役にはマーロン・ブランドリチャード・バートンリンゴ・スタージェームズ・コバーンウォルター・マッソーシャルル・アズナブールアニタ・パレンバーグなど豪華な顔ぶれが出演している。ただ、映画の方は公開当時、豪華キャストの共演で話題になりながらも「あまりにもセックスシーンが多すぎる」と評論家から酷評された。テリー・サザーンは映画化にあたり、初めは協力的だったが、キャンディ役がスウェーデン娘に決まってからは、手を引いたという[2]

この映画は日本では1970年の初公開以来、長らく上映・ビデオ化されず、幻のカルト映画として語り継がれていたが、2003年にリバイバル上映され、原作が改訳刊行し、DVD化も話題になった。

脚注

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  1. ^ ホッフェンバーグ(1922-1964)はアメリカの詩人で本作のみの活動だった
  2. ^ ジョン・ディ・セイント・ジョア『オリンピア・プレス物語』青木日出夫訳、河出書房新社