グリーン・ニューディール

グリーン・ニューディール』(A Green New Deal)は、2008年7月21日にグリーン・ニューディール・グループが発表し、新経済財団(NEF、New Economics Foundation)により出版されている報告書である。地球温暖化世界金融危機石油資源枯渇に対する一連の政策提言の概要が記されている[1]

報告書は、金融租税の再構築、および再生可能エネルギー資源に対する積極的な財政出動を提言している。正式名称は『グリーン・ニューディール:信用危機・気候変動・原油価格高騰の3大危機を解決するための政策集』(A Green New Deal: Joined-up policies to solve the triple crunch of the credit crisis, climate change and high oil prices[2]

2008年後半からの世界金融危機などへの対応のため、世界各国でこれに沿った政策が検討もしくは推進されている[3]

主な提言

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  • 省エネルギー技術とすべてのビルを発電所に変えるマイクロジェネレーション(マイクロ発電)技術への政府主導の投資
  • 温暖化対策の一環として原子力発電所の建設を後押し
  • 低炭素社会基盤構築を可能にする数千人規模のグリーンジョブの創出
  • 石油・ガス業界の利益に対してたなぼた利益税(Windfall profits tax、ノルウェーで導入済)の導入による再生可能エネルギーと省エネルギーに対する財政出動の原資確保
  • 環境投資と省エネルギーのための金融面でのインセンティブの創出
  • イングランド銀行の金利低減を含む、環境投資をサポートするための英国金融システムの変更
  • 巨大な金融機関である「メガバンク」のより小さなユニットへの分割とグリーンバンキング
  • 国際金融システムの再構築:金融セクターが経済すべてを支配しないことを保障(資本管理の再導入を含む)
  • デリバティブのような新しい金融商品に関する公的監査の強化
  • 財務報告書の提出要請と租税回避地の取り締まりによる法人税脱税の防止[4] [5][6]

思想的背景

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1990年代に台頭した「反生産力主義」的なエコロジズム(環境主義)や「脱労働組合依存」という左翼運動のその先の思想として労働者意識も多様性も保持しつつ両者を統合したマルクス主義思想の具体的政策の一つとして現れたのがグリーンニューディールであり、欧米の「レフト3.0」の共通した政策であるという(松尾匡「左翼の逆襲」講談社現代新書 2020‐11‐18)。

著者

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グリーン・ニューディール の著者を以下に示す。

タイトル・フレーズの由来と借用

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報告書のタイトルは、フランクリン・ルーズベルト米大統領がウォール街大暴落とその後の世界恐慌を克服するため行った社会・経済政策であるニューディールに由来している[7]。だが「グリーン・ニューディール」というフレーズは、グリーン・ニューディール・グループが造り出したものではない。この用語をより早く使ったのはトーマス・フリードマン[8][9]とエルザ・ヴェンツェル[10]である。

『グリーン・ニューディール』の発行以来、そのフレーズは幅広く使われるようになった。ヴァン・ジョーンズは、彼の著書『グリーンカラー経済』(The Green Collar Economy)の中でこのフレーズをしばしば使っている[11]

国際連合環境計画の「グローバル・グリーン・ニューディール」

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しかし最も特筆すべきは、 国際連合環境計画(UNEP)による採用である。2008年10月22日、UNEP事務局長アキメ・シュタイナーは、ロンドンで「グローバル・グリーン・ニューディール」と呼ばれるグリーン経済イニシアティブを発表した。グリーン・ニューディール・グループと同様に、UNEPイニシアティブはグリーンジョブの創出とグローバル経済システムの再構築による化石燃料への依存低減を提唱している[12]。 また2008年12月11日には国連事務総長が「緑の成長が数百万の雇用を創出する」と表明している[3]

オーストラリアの声明

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2009年1月9日オーストラリア自然保護財団オーストラリア労働組合評議会オーストラリア社会保障評議会オーストラリア緑の基盤評議会オーストラリア気候研究所オーストラリア年金信託協会オーストラリア不動産評議会は、「グリーン・ニューディールへ:二重危機に対する政策行動」(Towards a Green New Deal: Economic stimulus and policy action for the double crunch)という共同声明を出した[13]

各国のグリーン振興政策

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  • 米国オバマ大統領再生可能エネルギーへの1500億ドルの投資や公共施設の省エネ化による数百万人規模の雇用の創出を表明(関連書籍には、『気候危機とグローバル・グリーンニューディール』ロバート・ポーリン 共著、クロニス・J・ポリクロニュー 聞き手、早川健治 訳、Fridays For Future Japan まえがき、那須里山舎、2021年12月18日。ISBN 978-4-909515-06-3。原タイトル:Climate Crisis and the Global Green New Deal、がある。[14]
  • 中国は2年間で約6000億ドルの環境・エネルギー分野に投入することを表明[3]
  • ドイツは再生可能エネルギー産業で既に2400億ドル規模の経済効果と25万人の雇用を創出[3]
  • 日本でも2008年後半からグリーン・ニューディール政策が議論されるようになり、2009年1月には環境省が数十兆円の経済効果創出の方針を打ち出し意見募集を開始[3]

このほかフランス・イギリス・韓国など多くの国々で同様の動きがみられる[3]

出典

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  1. ^ Mark Lynas (July 17, 2008) "A Green New Deal" New Statesman
  2. ^ New Economics Foundation, (July 21, 2008) http://www.neweconomics.org/gen/greennewdealneededforuk210708.aspx
  3. ^ a b c d e f 日本環境省 "緑の経済と社会の変革(日本版グリーン・ニュー・ディール)に関するアイデア・ご意見の募集について"
  4. ^ David Teather (July 21, 2008) "Green New Deal group calls for break-up of banks", The Guardian
  5. ^ Jeremy Lovell (July 21, 2008) "Climate report calls for green 'New Deal'", Reuters.
  6. ^ Riley Smith (July 31, 2008) "Group Suggests a Green New Deal in the UK to Fight Climate Change", Celsias.com
  7. ^ Jeremy Lovell (July 21, 2008) "Climate report calls for green 'New Deal'", Reuters.
  8. ^ Thomas L. Friedman (April 15, 2007) "The Power of Green" The New York Times
  9. ^ Thomas L. Friedman (January 19, 2007) "A Warning From The Garden" The New York Times"
  10. ^ Elsa Wenzel (November 19, 2007) "Green jobs will clean up the economy, communities" cnet news
  11. ^ Van Jones (October 7, 2008) "The Green Collar Economy: How One Solution Can Fix Our Two Biggest Problems", HarperCollins. ISBN 0061650757
  12. ^ Paul Eccleston (October 22, 2008) "UN announces green 'New Deal' plan to rescue world economies" The Daily Telegraph
  13. ^ "Towards a Green New Deal: Economic stimulus and policy action for the double crunch"
  14. ^ "オバマ政権のグリーン・ニューディール", 環境ビジネス.jp

関連項目

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外部リンク

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