シェエラザード (村上春樹)

シェエラザード
作者 村上春樹
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 短編小説
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出 『MONKEY』2014年2月15日発行・Vol.2[1]
出版元 スイッチ・パブリッシング
挿絵 クラフト・エヴィング商會(装丁)
刊本情報
収録女のいない男たち
出版元 文藝春秋
出版年月日 2014年4月18日[2]
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シェエラザード」は、村上春樹短編小説。2021年公開の映画『ドライブ・マイ・カー』に、内容の一部が、村上の短編「木野」とともに取り入れられた[3]

英訳

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タイトル Scheherazade
翻訳 テッド・グーセン
初出 ザ・ニューヨーカー』2014年10月13日号[4]
収録書籍 Men Without Women』(クノップフ社、2017年5月9日)

あらすじ

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羽原(はばら)はその女をシェエラザードと名付けた。彼より4歳年上の35歳で、基本的には専業主婦で、小学生の子供が二人いた。彼女は週に二度羽原の住む「ハウス」を訪れ、『千夜一夜物語[5]の王妃シェエラザードと同じように、性交するたびに興味深い不思議な話を聞かせてくれた。

「私の前世はやつめうなぎだったの」とあるときシェエラザードはベッドの中で言った。「私にははっきりとした記憶があるの。水底で石に吸い付いて、水草にまぎれてゆらゆら揺れていたり、上を通り過ぎていく太った鱒を眺めていたりした記憶が」

その日の日誌に羽原は「シェエラザード、やつめうなぎ、前世」と記した。

シェエラザードは空き巣に入っていた十代の頃の話もした。高校2年生のとき彼女は同じクラスのサッカーの選手の男の子に恋をしていた。しかし彼は目もくれなかった。ある日彼女は無断で学校を休み、男の子の家に行く。玄関のマットの下を探してみると、鍵が見つかった。彼女は彼の部屋から鉛筆を一本だけ盗むことにした。

「でもただ盗むだけではいけないと思った。だってそれだとただの空き巣狙いになってしまうじゃない。私は言うなれば『愛の盗賊』[6]なのだから」

シェエラザードはタンポンをひとつ、机の一番下の抽斗のいちばん奥に置いておくことにした。

脚注

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  1. ^ 『MONKEY』は翻訳家の柴田元幸が責任編集を務める文芸誌。2013年10月7日創刊。村上は創刊号からVol.6まで「村上春樹私的講演録 職業としての小説家」と題するエッセイを寄稿した。同エッセイはのちに『職業としての小説家』(スイッチ・パブリッシング)としてまとめられた。
  2. ^ 『女のいない男たち』村上春樹 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
  3. ^ カンヌ4冠『ドライブ・マイ・カー』179分没入の監督術 濱口竜介監督インタビュー前編”. NIKKEI STYLE (2021年8月19日). 2022年3月8日閲覧。
  4. ^ FICTION SCHEHERAZADE BY HARUKI MURAKAMI. October 13, 2014The New Yorker
  5. ^ 村上は『海辺のカフカ』において、主人公のカフカ少年に『千夜一夜物語』について次のような言葉を語らせている。「結局装丁の美しい数冊揃いのバートン版『千夜一夜物語』の中から一冊を選び、閲覧室に持っていく。以前から読みたいと思っていたものだ」(同書、上巻、新潮文庫、77頁)、「バートン版『千夜一夜物語』には僕が昔図書館で読んだ子ども向けの版と同じ話も入っているけれど、話そのものが長いし、エピソードも多く細部が入り組んでいて、とても同じものとは思えない。(中略)駅の構内を歩きまわっている無数の顔のない人々より、千年以上前に書かれた荒唐無稽な作り話のほうがずっと生き生きと迫ってくる。どうしてそんなことが起こりうるのだろう?」(同書、116頁)
  6. ^ カレル・チャペックが1920年に著した戯曲『Loupežník』の日本語訳のタイトルは『愛の盗賊』といった。訳者は田才益夫

関連項目

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