トルーバルサム
トルーバルサム(篤留抜爾撒謨[1]、Tolu balsam[2]またはbalsam of Tolu[3])は、南アメリカ(コロンビア、ペルー、ベネズエラ)で産出するバルサムである。ペルーバルサムと似ており、しばしば混同される。マメ科バルサムノキ属のMyroxylon balsamum var. balsamumの生きた幹から得られる[2]。新鮮なものは茶色でネバネバした半流動体であるが、徐々にもろい固体となり、温めると再び柔らかくなる[3]。安息香酸及びケイ皮酸のベンジルエステルやシンナミルエステル(安息香酸ベンジルやケイ皮酸ベンジル等)を多量に含む[4]。
収集
[編集]Myroxylon balsamum var. balsamumの幹にV字型の傷をつけ、滲み出た樹脂をヒョウタンに集める[3]。
利用
[編集]現在でも、咳止めシロップの調合に用いられているが、暖かくまろやかでいくらかスパイシーな香りを付けるため、香水に用いられることが多い。2002年には、オーモンド・ジェーンからTolu、2010年にはエステバンからBaume Toluが発売された。
また、皮膚発疹に対する自然薬としても用いられている。皮膚アレルギーの一種である接触皮膚炎の原因としてもよく知られている。
歴史
[編集]1841年、アンリ・エティエンヌ・サント=クレール・ドビーユは、トルーバルサムの乾留によりトルエンを単離した[5]。中央アメリカや南アメリカでは、伝統医学に用いられてきた[6]。コロンビアのトルーの港からヨーロッパに輸出されたため、この名前が付けられた。1753年、カール・フォン・リンネは、カルタヘナの恐らくトルーと呼ばれる町から採集した種を用いて、Toluifera balsamum(Myroxylon balsamumのシノニム)のタイプ種を記載し、採集場所にちなんで、Toluifera balsamumと命名した[7]。
出典
[編集]- ^ 三省堂百科辞書編輯部 編「トルーバルサム」『新修百科辞典』三省堂、1934年、1577頁。
- ^ a b “Assessment report on Myroxylon balsamum (L.) Harms var. pereirae (Royle) Harms, balsamum”. European Medicines Agency. Committee on Herbal Medicinal Products (HMPC) (2016年5月31日). 2021年3月9日閲覧。
- ^ a b c Flückiger, Friedrich August; Hanbury, Daniel (1874). Pharmacographia: A History of the Principal Drugs of Vegetable Origin, Met with in Great Britain and British India. London: Macmillan and Co.. pp. 177-184
- ^ Karl-Georg Fahlbusch (2007), “Flavors and Fragrances”, Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (7th ed.), Wiley, p. 116
- ^ Jörg Fabri (2007), “Toluene”, Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (7th ed.), Wiley, p. 4
- ^ James A. Duke (2009), Duke's Handbook of Medicinal Plants of Latin America, CRC Press, pp. 474–475
- ^ Bagnatori Sartori, Ângela Lúcia; Lewis, Gwilym P.; Mansano, Vidal de Freitas; Tozzi, Ana Maria Goulart de Azevedo (6 November 2015). “A revision of the genus Myroxylon (Leguminosae: Papilionoideae)”. Kew Bulletin 70 (4): 48. doi:10.1007/s12225-015-9604-7.