ハスイモ

ハスイモ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: オモダカ目 Alismatales
: サトイモ科 Araceae
: サトイモ属 Leucocasia
: ハスイモ L. gigantea
学名
Leucocasia gigantea
(Blume) Schott

ハスイモ蓮芋、学名:Leucocasia gigantea[1])は、サトイモ科サトイモ属の常緑性多年草である。サトイモの近縁種で、分類上は別種であるが、栽培上はサトイモの同類として扱われる[2]塊根は小さくて食用にならないが、長い葉柄の芋茎、茎長80センチメートル (cm) が食用になる[3]

概要

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東南アジアを中心に分布し、日本では葉柄専用種として栽培されている。草丈は3メートル (m)、全草(葉色・茎色)は淡緑で、花は白色(白い仏炎苞に覆われた白い肉穂花序)、冬から初夏が旬である[4]ジャワ島では、果実が調味料として使われることがある[5]。乾燥させると数か月から数年[5]の貯蔵に耐えて備荒食糧に適するほか[6]性具としても用いられる[7]

日本

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高知県徳島県の農林産物で、沖縄県琉球)から導入されたためリュウキュウとも呼ばれる[8]。高知県西部や愛媛県南予地方の一部では「ツイモ」とも呼ばれる。食用としてはスポンジ状となっている茎の部分の皮を剥き、水に少しさらして灰汁抜きし薄く塩を振って水気を絞り、酢の物サラダ味噌和え刺身つま煮しめ味噌汁などで食する[4]高知では炒め物を「リュウキュウ寿司」として食する[9]。沖縄ではチャンプルーやみそ汁の具に使用される[10]九州の一部では水田栽培が行われている[11]熊本県伝統の肥後ずいきは食用のほか、性具として用いられる。

東南アジア

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ベトナムではザックムン(ベトナム語dọc mùng, 学名:Leucocasia gigantea)と呼ばれ、食用にされる。同様に水に少しさらし、カインチュア(甘酸っぱいスープ)などに使用される[12][13]。「ザックムン」とは北ベトナム方言であり、では「バックハー」(ベトナム語bạc hà / 薄荷)と呼ばれる。北でバックハーは薄荷を意味する[13]

タイ: ตูน)の湿地にも自生し、生ではナムプリックソムタムラープなどと一緒に、若葉と茎はゲーンソム(カレー)にして食される[14]

マレーシアマレー語: lambok/keladi ulam)や中国南部(: 大野芋)にも分布する。

西洋

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西洋では農作物・食材として馴染みがなく、他の品種と混同したさまざまな名称がある。英語では、「ベトナムのルバーブ」(Vietnamese rhubarb[15])とも呼ばれるようにベトナムのものが有名であるが、ルバーブとは無関係である。他にもサトイモ・タロイモなどとまとめた「象の耳」(Elephant ear[15])や、「巨大なタロイモ」(Giant Taro[11])、「インドのタロイモ」(英:Indian Taro[16]: colocase de l'Inde[17])、「エジプトのタロイモ」(: Ägyptische Zehrwurzel[18])などとも呼ばれる。

クワズイモとの違い

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ハスイモは、クワズイモ属インドクワズイモAlocasia macrorrhizos[19])にさまざまな点で類似しており、サトイモとインドクワズイモとの自然交雑により発生した可能性が指摘されている[5]。インドクワズイモはベトナム山地部でブタ飼料として採集される[20]インドでは、水晒して救荒食として利用することがある[21]

クワズイモ属クワズイモAlocasia odora)との混同は危険である。クワズイモは日本で主に観葉植物として栽培されており、葉の形がサトイモやハスイモと似ているために誤って食べ、食中毒を引き起こす例が多く、厚生省が注意を呼びかけている[22][23]。ただし、中国・ベトナムでは薬用として用いられることもある[24][20]

関連

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脚注

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  1. ^ Blume. “Leucocasia gigantea” (英語). Plants of the World Online. Royal Botanic Gardens, Kew. 2024年7月14日閲覧。
  2. ^ ハスイモ 世界大百科事典 第2版
  3. ^ 蓮芋 デジタル大辞泉
  4. ^ a b リュウキュウ(琉球) 株式会社 科学技術研究所
  5. ^ a b c The Global Diversity of Taro Ethnobotany and Conservation[リンク切れ] Bioversity International
  6. ^ 図解|医食同源辞典 環境工学研究所 WEEF
  7. ^ ひご‐ずいき goo辞書
  8. ^ 『食材図典Ⅲ 地産食材編』、小学館、2008年。
  9. ^ 第18回 高知県(その2) 高知なのにリュウキュウの謎 日本経済新聞
  10. ^ ハスイモ、大きな花咲く 梅雨の庭に白が映え 琉球新聞
  11. ^ a b 食用としてのイモの重要性タロイモ 小西達夫
  12. ^ 甘酸っぱいスープ (カインチュア) POSTE
  13. ^ a b Cultivated Plant Collections from Market Places My Lien Thi Nguyen
  14. ^ タイの健康野菜
  15. ^ a b ASIAN VEGETABLE NAMES globetrotting gourmet
  16. ^ "T̀ư đỉên Vịêt-Anh = Vietnamese-English dictionary" Đ̣ăng Ch́ân Liêu, Lê, Khả K̂é, 1990
  17. ^ "T̀ư đỉên Vịêt-Pháp = Dictionnaire Vietnamien-Français" Lê Khả Ḱê, Nguỹên Lân, 1992
  18. ^ "Elsevier's dictionary of botany : in English, French, German, Latin, and Russian" P. Macura, 1979
  19. ^ Alocasia indica(佐々木、1982年)の学名が使われる場合もあるが、これらは、A. macrorrhizosシノニムである(参照:World Checklist of Selected Plant Families)。
  20. ^ a b "ベトナム北部におけるタロイモ : その利用,栽培および遺伝的変異 Taro in Northern Vietnam : Its Uses, Cultivation, and Genetic Variation" 松田 正彦, 縄田 栄治著、熱帯農業 46(4)、2002年
  21. ^ 佐々木高明『照葉樹林文化の道』NHKブックス、1982年、p43。
  22. ^ 食べられないイモ『クワズイモ』”. サイエンスなび. さいたま市健康科学研究センター (2017年6月23日). 2017年9月16日閲覧。
  23. ^ 「クワズイモ」誤食に注意呼び掛け 厚労省 日本経済新聞
  24. ^ Boyce, Peter C. (2008). A review of Alocasia (Araceae: Colocasieae) for Thailand including a novel species and new species records from South-West Thailand