ボヘミア・モラビア共産党
ボヘミア・モラビア共産党 Komunistická strana Čech a Moravy (KSČM) | |
---|---|
中央委員会議長 | カテジナ・コネチュナー |
成立年月日 | 1989年 |
前身政党 | チェコスロバキア共産党[1] |
本部所在地 | Politických vězňů 1531/9, Nové Město (Praha 1), 110 00 Praha[2] |
代議院議席数 | 0 / 200 (0%) |
元老院議席数 | 0 / 81 (0%) |
党員・党友数 | 49000名 (2015年3月[3]) |
政治的思想・立場 | 左翼[4][5] - 極左[6][7] 共産主義[1][8] マルクス主義 |
機関紙 | ハロー・ノビニ |
シンボル | |
国際組織 | 欧州左翼党(オブザーバー加盟) |
公式サイト | Komunistická strana Čech a Moravy |
欧州議会の政治会派は欧州統一左派・北方緑の左派同盟 |
ボヘミア・モラビア共産党(ボヘミア・モラビアきょうさんとう、チェコ語: Komunistická strana Čech a Moravy; KSČM)は、チェコ共和国の左派政党。中央委員会議長(党首)はカテジナ・コネチュナー(2021年-)。なお日本外務省や日本共産党はチェコ・モラビア共産党の日本語訳を使用している[9][10]。
概要
[編集]1989年、チェコスロバキア共産党の組織を連邦化するため、ボヘミアおよびモラビアを基盤とする下部組織として結成された。
1990年に、チェコスロバキア共産党は正式にボヘミア・モラビア共産党とスロバキア共産党(KSS)に分かれた(後にKSSは、社会民主主義を志向する民主左翼党(SLD)に党名を変更[11]。また1992年にはチェコスロバキアの連邦自体も解体した)。
2015年3月時点で党員数4万9千名で、欧州議会内では欧州統一左派・北方緑の左派同盟に属する。ポスト共産主義の東欧諸国において、1989年以降に党綱領を改正したが、党名に共産主義を残している唯一の政党である[12]。年金生活者などの高齢層や地方居住者を主な支持基盤としている[13]。チェコにおける広域自治体は14(首都プラハと13県)あるが、うち9自治体ではチェコ社会民主党と共に与党となっている(2014年6月現在の数字)[14]。
政策
[編集]長期的目標として、社会主義的システムへの変化を掲げている他、新自由主義政党であるODS(市民民主党)に対する対決姿勢を明確にしている。以下に個別分野におけるKSCMの立場を紹介する。
- 経済政策:国家の役割を重視、中小零細企業への支援強化。
- 社会政策:社会的弱者、とりわけ高齢者や年金生活者の権利保護政策の実施。
- 外交・安保政策:アメリカとNATO(北大西洋条約機構)の政策に反対、将来的にはNATOから脱退。アメリカでは無く、UN(国際連合)中心の国際政治の展開、OSCE(全欧安全保障協力機構)の活用。
- 利益団体との関係:労働組合および市民団体との協力関係の強化
- 出典:[15]
党勢推移
[編集]下院選挙
[編集]1992年の連邦解体前、最後の選挙に他の左派政党と選挙リストを組んで左翼ブロック(Levý blok)として参加し、得票率14.05%で35議席を獲得した。
連邦解体後の初の総選挙となった1996年下院選挙において得票率10.33%で22議席、1998年選挙では11.03%で24議席を獲得し、議会第3党の地位を維持した。続く2002年下院選挙では市民民主党(ODS)やチェコ社会民主党(ČSSD)など諸政党が軒並み支持を減らした中、二大政党のなれ合い批判や新規雇用創出や労働条件向上、福祉水準の向上などを訴え、失業者や年金生活者、労働者を中心に支持を拡大。18.5%の得票で41議席(前回比+17議席)を獲得し、議席率で20%を超える躍進を遂げた[16]。
しかし2006年下院選挙では、ODSおよびČSSDに次ぐ第3党の地位を維持したが、12.8%の得票で26議席に減少し、前回選挙と比べた支持の下落は党指導部を失望させた。下院の任期満了に伴って行われた2010年5月の下院選挙では得票率を前回よりやや減らしたものの、前回議席を維持。任期を前倒しする形で行われた2013年10月の選挙では得票率と議席を共に増やすことに成功した。2017年10月の選挙では得票率と議席を大幅に減らした。
2021年10月の選挙では得票率が議席獲得に必要な5%に満たず、はじめて議席獲得を逃した。この責任を取ってフィリプが中央委員会議長を辞任し[17]、欧州議会議員のカテジナ・コネチュナーが後任となった[18]。
選挙 | 得票数 | 得票率 | 議席数 |
---|---|---|---|
1992年選挙 | 909,490 | 14.05% | 35 |
1996年選挙 | 626,136 | 10.33% | 22 |
1998年選挙 | 658,550 | 11.03% | 22 |
2002年選挙 | 882,653 | 18.51% | 41 |
2006年選挙 | 685,328 | 12.81% | 26 |
2010年選挙 | 589,765 | 11.27% | 26 |
2013年選挙 | 741,044 | 14.91% | 33 |
2017年選挙 | 393,100 | 7.76% | 15 |
2021年選挙 | 193,817 | 3.6% | 0 |
※1992年は左翼ブロックとしての得票および議席数である。
上院選挙
[編集]上院は2年毎に3分の1(27議席)を改選する。2014年の選挙以来、議席獲得からは遠ざかっている。
選挙 | 議席数 |
---|---|
1996年選挙 | 2 |
1998年選挙 | 2 |
2000年選挙 | 0 |
2002年選挙 | 1 |
2004年選挙 | 1 |
2006年選挙 | 0 |
2008年選挙 | 1 |
2010年選挙 | 0 |
2012年選挙 | 1 |
2014年選挙 | 0 |
2016年選挙 | 0 |
2018年選挙 | 0 |
2020年選挙 | 0 |
2022年選挙 | 0 |
欧州議会選挙
[編集]2004年6月、チェコにおける初めての欧州議会選挙で24議席中6議席を獲得し、第2党になった。2009年選挙では定員22のうち4議席(得票率14.18%)を獲得、第3党となった。3回目となる2014年選挙では中道右派系の新党であるANO2011やTOP09が躍進した影響を受け、定員21のうち3議席の獲得に留まり、第4党に後退した。
選挙 | 得票数 | 得票率 | 議席数 |
---|---|---|---|
2004年選挙 | 472,862 | 20.26% | 6 |
2009年選挙 | 334,577 | 14.18% | 4 |
2014年選挙 | 166,478 | 10.98% | 3 |
2019年選挙 | 164,624 | 6.9% | 1 |
2024年選挙 | 283,935 | 9.6% | 1 |
歴代党首
[編集]- イジー・マハリーク(1990年)
- イジー・スヴォボダ(1990年-1993年)
- ミロスラフ・グレベニーチェク(1993年-2005年)
- ヴォイチェフ・フィリプ(2005年-2021年)
- カテジナ・コネチュナー(2021年-)
国際交流
[編集]日本における共産主義政党である日本共産党の第22回(2000年)[19]、第23回(2004年)[20][21]、第24回(2006年)[22]大会に来賓として参加している。日本共産党も2002年下院選挙でKSCMが躍進した際に、中央委員会名でKSCM中央委員会に躍進したことを祝う祝電を送っている[23]。また、2004年5月に行われたKSČM第6回党大会に日本共産党代表として、西口光常任幹部会委員・国際局長と伊藤知代国際局員の2名が参加、日本共産党中央委員会名のメッセージを手渡している[10]。なお同大会では40余の国からの代表が参加している。
脚注
[編集]- ^ a b “チェコスロバキア共産党 チェコスロバキアきょうさんとう Strana Československych komunistu:SČK”. コトバンク. ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. 2019年10月13日閲覧。
- ^ “Komunistická strana Čech a Moravy , IČO 00496936 - data ze statistického úřadu” (チェコ語). Kurzy.cz. 2019年10月13日閲覧。 “ADRESA: Politických vězňů 1531/9, Nové Město (Praha 1), 110 00 Praha”
- ^ “Stranám prudce ubývají členové, brzy mohou mít existenční potíže”. iDNES.cz. (2015年4月5日) 2015年6月18日閲覧。
- ^ Seelinger, Lani (11 July 2014). “Why the Czech Communists are here to stay”. visegradrevue.eu. 12 August 2019閲覧。
- ^ “The Electoral Base of Left-Wing Post-Communist Political Parties in the Former Czechoslovakia”. Central European Political Studies Review. 12 August 2019閲覧。.
- ^ “Andrej Babiš et les sociaux-démocrates tchèques négocient leur alliance” (フランス語). Courrier d'Europe centrale (6 April 2018). 12 August 2019閲覧。.
- ^ “New dawn or swan song? Czech communists eye slice of power after decades”. Reuters (30 April 2018). 12 August 2019閲覧。
- ^ Wolfram Nordsieck (2017年). “CZECHIA” (英語). Parties and Elections in Europe. 2019年10月13日閲覧。
- ^ “チェコの政治関係”. 在チェコ日本大使館. 2013年4月7日閲覧。
- ^ a b “チェコ・モラビア共産党が大会 綱領的文書の採択へ”. しんぶん赤旗. (2004年5月16日)
- ^ 但し、共産主義をあくまで堅持するグループは、1992年に改めてKSSを結成している。
- ^ ポーランドやハンガリー、ブルガリアではかつての支配政党だった共産主義政党が中道左派・社会民主主義政党へ改組しているが、チェコでは前身が第二次世界大戦以前に存在したチェコ社会民主党がビロード革命後に復活しており、共産党は社民主義政党に改組しなかった。同じような例としては、やはりドイツ社会民主党が存在した旧東ドイツではドイツ社会主義統一党の後身(民主社会党→左翼党)は中道左派政党にならず、左翼政党のまま存続している。
- ^ 2003年時点における党員の平均年齢は68.1歳、40歳以下は1.9%、41-60歳以下が26.6%、61歳以上は71.5%と高齢者の比率が圧倒的に高くなっている。また党員の職種でも年金生活者が67.4%で、労働者13.6%、事務職6.1%となっている。坪井「現代チェコの政党政治におけるボヘミア・モラヴィア共産党」4頁
- ^ “南欧中心に革新政党が躍進 極右政政党台頭に懸念広がる欧州 日本共産党国際委員会副責任者森原公敏さんに聞く”. しんぶん赤旗(日曜版). (2014年6月29日号)
- ^ 前掲書3頁
- ^ “チェコ総選挙 共産党が躍進17増、41議席で第三党 第一党の社民党は4減”. しんぶん赤旗. (2002年6月17日)
- ^ “Vedení KSČM rezignovalo. Vstanou noví bojovníci, vzkázal Filip” (チェコ語). iDNES.cz (2021年10月9日). 2021年10月9日閲覧。
- ^ “Novou šéfkou KSČM se stala Konečná. Vyhrála s velkou převahou” (チェコ語). Novinky.cz (2021年10月23日). 2021年10月23日閲覧。
- ^ 「党大会に参加した外国来賓」、日本共産党理論雑誌『前衛 日本共産党第22回大会特集』2001年2月臨時増刊号312頁。
- ^ “外国来賓14カ国24氏、14大使館から15氏 緒方国際局長が紹介”. しんぶん赤旗. (2004年1月14日)
- ^ “外国の党・組織からの党大会へのメッセージ”. しんぶん赤旗. (2004年1月17日)
- ^ “党大会に参加 外国政党代表の紹介”. しんぶん赤旗. (2006年1月13日)
- ^ “下院選で躍進したチェコ・モラビア共産党に日本共産党が祝電”. しんぶん赤旗. (2002年6月18日)
参考文献
[編集]- ポスト社会主義諸国の政党・選挙データベース作成研究会 編『ポスト社会主義諸国 政党・選挙ハンドブックⅡ』 (PDF) 京都大学地域研究統合情報センター
- 坪井宏平, 「現代チェコの政党政治におけるボヘミア・モラヴィア共産党」『国際文化研究』 15号 p.239-251 2009年, NCID AN10469654, NAID 110007591537
- Volby.cz(チェコ統計局)