メロゴニー

メロゴニー: merogony)は単細胞寄生生物の生殖相の1つで、無性生殖により細胞数を増やす過程。メロゴニーを行う細胞をメロント(meront)、メロゴニーの結果生じる娘細胞をメロゾイト(娘虫体、merozoite)という[1]。一般的に、生じたメロゾイトは再びメロゴニーを行うことができ、初代メロント、初代メロゾイト、第2代メロント、第2代メロゾイト、のように呼ぶ。かつての胞子虫について使われた用語であり、現在はアピコンプレックス門ミクソゾア微胞子虫などについて使われている。

アピコンプレックス門

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メロゴニーを行う際の具体的な分裂様式として、アピコンプレックス門ではシゾゴニー、内生二分裂、内生多分裂などが存在する[2][3]

内生二分裂(endodyogeny)
DNA複製、閉鎖型の有糸分裂、娘細胞形成が順次行われる。真核生物一般に見られる体細胞分裂との違いは、細胞質を2分割するのではなく、細胞質中に娘細胞を組み立て母細胞は破壊される点である。
内生多分裂(endopolygeny)
内生二分裂と同様に細胞質中に娘細胞を組み立てるが、同時に多くの娘細胞が生じる点が異なる。娘細胞形成に先だってDNA複製が複数回行われており、細胞核の分裂が起き多核体となる場合(トキソプラズマ)と細胞核が分裂せず多倍数性となる場合(肉胞子虫)がある。
シゾゴニー(schizogony)
DNA複製と閉鎖型の有糸分裂を複数回繰り返して多核体となったあと、同時に娘細胞形成が行われる。細胞質を共有しているにもかかわらず、それぞれの核は自律的非同期的に分裂を行う。そのため生じる娘細胞の数は2のべき乗とは限らない。娘細胞は母細胞の表層で組み立てられ出芽する。

このうちシゾゴニーが最も一般的であることから、メロゴニーと呼ぶべき所をシゾゴニーと呼び、したがってメロントに相当するものをシゾント(schizont)と呼ぶ場合がある。しかしメロゴニー以外にガメトゴニーやスポロゴニーでも分裂様式はシゾゴニーである場合があり、生殖相と分裂様式を混同すべきでない。

アピコンプレックス門の標準的な生活環では、オーシストまたはその中のスポロゾイトが宿主体内に入ると、スポロゾイトが細胞に侵入しメロゴニーを行って個体数を増やす。アイメリア科の場合は小腸上皮細胞が標的となり、その結果下痢などを引き起こす。マラリア原虫の場合はまず肝細胞でメロゴニーを行い、続いて赤血球が標的となり発熱貧血を引き起こすことになる。いずれの場合も、メロゴニーの結果として宿主細胞が破壊されることが直接の原因である。

参考文献

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  1. ^ Levine, N.D. (1971). “Uniform terminology for the protozoan subphylum Apicomplexa”. J. Protozool. 18 (2): 352-355. doi:10.1111/j.1550-7408.1971.tb03330.x. 
  2. ^ Striepen B, et al. (2007). “Building the perfect parasite: cell division in Apicomplexa.”. PLoS pathog. 3 (6): e78. doi:10.1371/journal.ppat.0030078. 
  3. ^ Ferguson, DJP, et al. (2007). “Enzymes of type II fatty acid synthesis and apicoplast differentiation and division in Eimeria tenella”. Int. J. Parasitol. 37 (1): 33-51. doi:10.1016/j.ijpara.2006.10.003. 

関連項目

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