モミジバフウ
モミジバフウ | ||||||||||||||||||||||||
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Liquidambar styraciflua(2010年10月18日) | ||||||||||||||||||||||||
保全状況評価 | ||||||||||||||||||||||||
LOWER RISK - Least Concern (IUCN Red List Ver.2.3 (1994)) | ||||||||||||||||||||||||
分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Liquidambar styraciflua L. (1753)[1] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
モミジバフウ(紅葉葉楓)、アメリカフウ、アメリカソゴウコウノキ | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
American Sweetgum | ||||||||||||||||||||||||
自然分布 |
モミジバフウ(紅葉葉楓[2]、学名: Liquidambar styraciflua)は、フウ科[注 1]フウ属の落葉高木。北米原産で、別名アメリカフウ[3]やアメリカソゴウコウノキ[4]ともよばれる。中国原産のフウのなかまで、葉がモミジのように5裂から7裂するのが特徴で、和名の由来にもなっている[5]。公園樹や街路樹にされる。
リンネの『植物の種』(1753年)で記載された植物の一つである[6]。
分布・生育地
[編集]北アメリカ中南部から東部、および中央アメリカの原産[3][2]。日本へは、大正時代に渡来し[3]、本州以南の暖地を中心に、街路や公園に植栽されている[7]。
立地条件は、肥沃で多湿な場所や水害の影響を受けるような場所に好んで生え、乾燥した場所は好まないという性質がある[8]。
特徴
[編集]落葉広葉樹の高木で、日本では高さ15 - 25メートル (m) ほどであるが、原産地では45 mの巨木になるものもある[3][7][2]。樹皮は灰色、淡紅褐色、黒褐色を帯びて、生長するに従いコルク層が発達して縦に裂けるようになる[2]。一年枝は無毛でつやがあり、二年枝以後の若枝には厚いコルク質の稜(りょう)が見られる[3][2]。
葉は互生して形はカエデに似ており[2]、5 - 7裂した掌状で光沢がある[3]。葉はふつう5裂するが、切れ込みの深さは多少変異があり、裂片がやや角張る葉もある[7]。葉縁には細かい鋸歯がある[7]。秋には美しく紅葉する[2]。紅葉の色づき方はさまざまで、黄色、橙色、紫褐色、赤色などがあるが、比較的暖かい地方でもこの多様な色づき方が見られる[5]。紅葉は赤色系が中心だが、日当たりが悪い部分は黄色や緑色が残るので、しばしば木全体がグラデーションになって美しい[7]。
花期は4月ごろ[3]。雌雄同株で、雄花と雌花が別々に頭状花序をつける。雄花は細長い穂状の花序、雌花は黄緑色を帯びた球形の花序となる[3]。
果期は秋[7]。果実は集合果で径3センチメートル (cm) でぶら下がってつく[4]。実は硬く[7]、フウよりも大きく全体に鋭いトゲがあり、葉が散った後も枝に残るので目立つ[5]。
冬芽は長さ7 - 11ミリメートル (mm) の卵形から長卵形で、赤褐色でつやがある芽鱗6 - 10枚に覆われている[2]。冬芽のわきにある葉痕は半円形から腎形で、維管束痕は3個ある[2]。
- 熟した果実
- Museum specimen
保全状況評価
[編集]- LOWER RISK - Least Concern (IUCN Red List Ver. 2.3 (1994))[9]
利用
[編集]葉が大きく紅葉も見応えがあり、公園樹や街路樹などによく植えられている[3][5]。暖地でも鮮やかに紅葉するので、暖かい都市部では街路樹として人気がある[7]。
樹脂は「アメリカ蘇合香」と呼ばれ香料となるが、香りは蘇合香に劣る[4]。果実はクリスマスのリースに使われる[5]。
近縁種
[編集]フウ属には葉の形からモミジバフウ(5 - 7裂)とサンカクバフウ(3裂)がある。前者はアメリカフウ(北米・中南米原産)、後者は単にフウ(中国・台湾原産)、タイワンフウとも呼ばれる。ともに日本で街路樹・公園木などとして普通に植栽され、秋の紅葉が特に美しい。
また、フウは「楓」と書かれるが、カエデはムクロジ目に属し翼果をつけるのに対し、フウ属は雌花の花序が球形で垂れ下がるので区別できる。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Liquidambar styraciflua L. モミジバフウ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年5月26日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 217.
- ^ a b c d e f g h i 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 118.
- ^ a b c 熱帯植物研究会 編 (1996).
- ^ a b c d e 亀田龍吉 2014, p. 54.
- ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 999
- ^ a b c d e f g h 林将之 2008, p. 30.
- ^ 辻井達一 1995, p. 178.
- ^ Americas Regional Workshop(Conservation & Sustainable Management of Trees, Costa Rica, November 1996) (1998). "Liquidambar styraciflua". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2.3. International Union for Conservation of Nature.
参考文献
[編集]- 亀田龍吉『落ち葉の呼び名事典』世界文化社、2014年10月5日、54–55頁。ISBN 978-4-418-14424-2。
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、217頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 辻井達一『日本の樹木』中央公論社〈中公新書〉、1995年4月25日、176 - 178頁。ISBN 4-12-101238-0。
- 熱帯植物研究会 編「アメリカソゴウコウノキ L. styraciflua L.」『熱帯植物要覧』(第4版)養賢堂、1996年、133頁。ISBN 4-924395-03-X。
- 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月27日。ISBN 978-4-8299-0187-8。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、118頁。ISBN 4-522-21557-6。
- 茂木透写真『樹に咲く花 離弁花2』高橋秀男・勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年、32-33頁。ISBN 4-635-07004-2。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- "Liquidambar styraciflua L." (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2011年11月27日閲覧。
- "Liquidambar styraciflua". National Center for Biotechnology Information(NCBI) (英語).
- "Liquidambar styraciflua" - Encyclopedia of Life
- 波田善夫. “モミジバフウ”. 植物雑学事典. 岡山理科大学. 2011年11月27日閲覧。