モーダスポネンス

モーダスポネンスラテン語: modus ponensMP)とは、論理学における妥当で単純な「論証」である。ラテン語で「肯定によって肯定する様式」の意。前件肯定(affirming the antecedent)または分離規則(the law of detachment)とも呼ぶ。

形式的記法

[編集]

推論の最も典型的な形式であり、一般に次のような形式である[1]

P ならば Q である。
P である。
従って、Q である。

論理演算の記法では次のようになる。

ここで、論理的帰結関係を表す。

モーダスポネンスを次のように表記する場合もある。

これらはいずれも前提条件が2つ存在する。第一の条件は条件文または論理包含演算であり、Q が P を包含することを示す。第二の条件は P であり、第一の条件の条件部分が真であることを主張している。これら2つの前提から論理的に Q が真であることが導かれる。

[編集]

以下にモーダスポネンス的な文章の例を示す。

今日が火曜日なら、私は働きに行く。
今日は火曜日だ。
だから、私は働きに行く。

この論述は正しい。しかしそのことは論述に含まれる命題の各々が正しいかどうか(真であるかどうか)とは無関係である。モーダスポネンスとして「健全」な論述は、その結論が真となるいかなる状況に於ても、全ての前提が真であるべきである。論述が正しくとも前提の一部が真でない場合には「不健全」となり得るのであり、論述が正しくかつ全ての前提が真の場合には「健全」である。

ほとんどの論理体系でモーダスポネンスが採用されている。

論証がモーダスポネンスで、その前提が真なら、その論証は健全である。
前提は真である。
従って、その論証は健全である。

応用

[編集]

命題論理では、モーダスポネンスが推論規則とされている。

メタ論理では、モーダスポネンスはカット規則である。カット除去定理によれば、シークエント計算のようなある種の論理計算ではカットは妥当な、許容される推論規則(admissible rule)である。

仮説演繹法はモーダスポネンスに基づいて定式化されている[1]

mmp

[編集]

モーダスポネンスの拡張として multiple modus ponensmmp)があり、以下のような形式である。

P ならば、Q である。
Q ならば、R である。
P である。
従って、R である。

論理演算の記法で表すと次のようになる。

P → Q
Q → R
P
├ R

関連項目

[編集]

脚注

[編集]

出典

[編集]

参考文献

[編集]
  • 前田なお『本当の声を求めて 野蛮な常識を疑え』青山ライフ出版〈SIBAA BOOKS〉、2024年10月29日。ISBN 978-4-434-34443-5 

外部リンク

[編集]