ヤチダモ
ヤチダモ | |||||||||||||||||||||
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ヤチダモ | |||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Fraxinus mandshurica Rupr. (1857)[1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ヤチダモ(谷地梻) | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Manchurian Ash |
ヤチダモ(谷地梻[5]、学名: Fraxinus mandshurica)は、モクセイ科トネリコ属の落葉広葉樹。単にタモともいう。「梻」は木偏に「佛」。トネリコやアオダモの近縁種。
名称
[編集]和名「ヤチダモ」の「ヤチ」は、谷地あるいは野地と書いて湿地を意味し、湿地に生じることに由来する[6]。「タモ」の意味はよくわかっていないが、植物学者の辻井達一はモクセイ科のヒトツバタゴにも使われている「タゴ」が「タモ」に転じたのではないだろうか、と考察している[6]。トネリコの別名でも、タゴ、アオタゴ、タンゴなどがある[6]。
英名のManchurian Ash(マンチュリアン・アッシュ)は「満州のトネリコ」の意味。厳密には本種のもとになったマンシュウトネリコ(F. mandshurica)を指す。
分布と生育環境
[編集]日本では北海道と本州の岐阜県以北に分布する[5]。特に北海道に多く産し、植林も盛んに行われている[5]。湿潤に強く、雪の多いところに生え、山地の湿地などに生える[5]。本州では山間の沢沿いで見かける。根が冠水しても生きているため、たびたび水没するような人造湖の壁面にも生育する。シオジとは分布を分けている[5]。ハンノキが生えるほどの水位の高いところ、あるいは長期間水位が高い状態の立地には耐えることはできない[7]。ヤチダモは、湿潤ではあるが一年中水位が高いところでは育たず、時に適潤状態が続くような場所でよく育つ[7]。
形態・生態
[編集]落葉広葉樹の高木[5]。高さは30メートル (m) 近くになり、幹径は1 mに達する[6]。幹は真っ直ぐに伸びて枝を出す[5]。枝は少なくて、上部にまばらに太いものが出て、枝先まで棒状に突き出しているのが特徴的である[8]。樹皮は灰白色で縦に裂ける[5]。若木の樹皮は白っぽくてやや滑らかであるが、生長するにつれて濃くなり、縦に深い亀裂が増えてくる[8]。一年枝は太く、淡灰褐色で皮目がある[5]。短枝もよくできる[5]。
葉は長い葉柄が付いた奇数羽状複葉で、小葉は3 - 6対つく[9]。小葉は長さ5 - 15センチメートル (cm) 、幅3 - 6 cmで、葉先は尖る[9]。春の芽吹きはかなり遅いほうであるが、これは寒冷な立地環境で気温が完全に高くなるまで芽を出すのを控え、晩霜の害を受ける危険を避けるための生存戦略のひとつである[9]。
花期は4 - 5月[5]。葉が芽吹いて展開する前に花が咲く[9]。枝の先に近いところの葉のつけ根から、総状花序を出す[9]。花は黄色で小さく、花弁はなく、たくさん集まってつく[9]。果実は長さ4 cmほどで、かたまって着くので目立つ[9]。年によって果実のなり具合は異なり、あまり実が着かない年もある[9]。
冬芽は円錐型で、暗褐色や黒褐色をしていて、4枚の芽鱗に包まれている[5]。枝先の頂芽は大きく、頂生側芽を伴う[5]。側芽は枝に十字対生し、対生はずれたり輪生したりする[5]。葉痕は半円形や三日月形で、維管束痕が多数ある[5]。
- 葉が落ちた状態
(2009年4月、弟子屈町にて)
利用
[編集]材はアオダモと並んで、優良なものとして知られている[7]。家具や装飾材、日常器具の材料として利用されるほか、合板の材料にも用いられる。また硬質で弾力性に富むため、野球のバットの材として有名で[7]、テニスのラケットに使用される素材でもある。成長がよく、年輪幅が広いと重厚になり、成長が悪いと軽くなる。成長のよいものは運動用具材に。成長の悪いものは家具材として重宝される。しかし、現在では真っ直ぐに伸びた材の入手は困難で、建築材としては貴重になってしまっている[7]。
北海道では昔から鉄道防風林や防雪林、耕地防風林の樹種として広く使われてきている[7]。ヤチダモが水に強い性質を買われて、北海道の泥炭地を鉄道が通るところに用いられた[7]。
バットの原料としてのヤチダモ
[編集]第二次世界大戦後、野球熱とともにバットの需要が高まると北海道のヤチダモが注目され、各地の広葉樹伐採跡地や旧軍馬放牧地にまとまって成立していたヤチダモの二次林から大量供給されるようになった。バット需要が一巡するころにはヤチダモの一斉林は姿を消し[10]、既にまとまった量のヤチダモ林を求めることは難しくなっている。
その他
[編集]- 南神門
- 西神門
- 北神門
脚注
[編集]- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Fraxinus mandshurica Rupr. ヤチダモ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月16日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Fraxinus mandshurica Rupr. var. japonica Maxim. ヤチダモ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月16日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Fraxinus nigra Marshall subsp. mandshurica (Rupr.) S.S.Sun ヤチダモ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月16日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Fraxinus excelsissima Koidz. ヤチダモ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月16日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 51
- ^ a b c d 辻井達一 1995, p. 276.
- ^ a b c d e f g 辻井達一 1995, p. 279.
- ^ a b 辻井達一 1995, p. 277.
- ^ a b c d e f g h 辻井達一 1995, p. 278.
- ^ 岡田利夫 『戦中戦後20年 北海道木材・林業の変遷』 139-141頁 北海道林材新聞刊 全国書誌番号:90001781
- ^ “清水建設が“令和の大嘗宮”設営に着手、古代工法「黒木造り」で皮付き丸太110m3使用”. Built (2019年8月9日). 2019年12月3日閲覧。
参考文献
[編集]- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、51頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 辻井達一『日本の樹木』中央公論社〈中公新書〉、1995年4月25日、276 - 279頁。ISBN 4-12-101238-0。