ランドマーク・ワールドワイド
設立 | 1991年1月16日 |
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種類 | 公開会社でない株式会社 LLC |
目的 | 自己啓発[1]、個人の成長と発展[要出典] |
所在地 | |
製品 | ランドマーク・フォーラム(ブレイクスルーテクノロジー)、関連する講座 |
重要人物 | ハリー・ローゼンバーグ: ディレクター, CEO;[2]} Mick Leavitt |
下部組織 | |
収入 | 7千7百万 ドル (2009)[5] |
従業員数 | 525人以上[5] |
ウェブサイト | landmarkworldwide |
ランドマーク・ワールドワイド(英: Landmark Worldwide、旧社名ランドマーク・エデュケーション)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置く国際的な教育会社である。個人と企業を対象に教育研修、自己啓発セミナー、「トランスフォーメーション(変容、人生の質の転換[6])教育」のプログラムを提供する[7]。通称はランドマークで、主力商品名のランドマーク・フォーラムの名で呼ばれることもある[1]。ランドマーク・フォーラムの日本での商品名はブレイクスルーテクノロジー。
概要
[編集]ワーナー・エアハード(本名:ジョン・ポール・ローゼンバーグ)が始めた教育研修セミナー会社の後続団体に当たり、エアハードのエアハード式セミナートレーニング(略称:est、エスト)をベースに作られたランドマーク・フォーラム等のセミナーを開催する[1]。エストとザ・フォーラム、ランドマーク・フォーラムというセミナーの内容、歴史、影響関係、評価等の情報は本記事では省き、詳細はランドマーク・フォーラムに譲ることとする。これは、ランドマーク・フォーラム(ザ・フォーラム)を開催した会社は、ランドマーク・ワールドワイド(ランドマーク・エデュケーション)だけではないためである。
社会学的には「大規模自己啓発セミナー[1]」(英: Large Group Awareness Training[8])というグループに分類される[1]。ニューエイジ運動におけるヒューマン・ポテンシャル・セミナー、トレーニング・セミナー等と呼ばれることもある[6]。
1991年にワーナー・エアハードは、巨額の脱税容疑と実の娘からのセクシャル・ハラスメントの訴えを起こされてスキャンダルになり、WE&A(ワーナー・エアハード&アソシエイツ)の資産、知的財産権のライセンスを、従業員の団体、のちのランドマーク・エデュケーションに売却し、アメリカを去った[9][10][11]。(エアハードの財務上の疑いはのちに晴れており[10]、娘からの告訴も取り下げられている[9]。)引き続きセミナーを行うため組織が作られ、講座を主宰し、従業員の多くを再雇用した[11][12]。1991年5月からLandmark Education Corporationとして営業し[13]、ワーナー・エアハードの弟ハリー・ローゼンバーグが最高責任者となった。しかし、彼らはエストの講座との間に何の連続性もないと主張している[1]。ランドマーク・エデュケーションの取締役会の最高顧問はエアハードの弁護士を務めたArt Schreiberで、エアハードの姉妹ジョウン・ローゼンバーグも取締役である[要出典]。
日本には、腎臓専門医の小南奈美子[14]がエストと出会って感銘を受け、1985年頃に持ち込んだ[6][15][16][17]。小南は、13年間日本唯一の正式なフォーラム・リーダーとして働き、約4万人の参加者をトレーニングしたという[6]。1999年、ランドマーク・エディケーションの代表取締役としてジェローム・ダウンズ(Jerome downs)というアメリカ人が就任し、その下で新たに日本人フォーラム・リーダーが現れるようになった[6]。ダウンズはアジア担当重役でもあり、東京を拠点にアジア14か国で普及活動をし、2009年に死去した[18]。
同社は、提供する講座は、人間の既存のものの見方や意思決定のパターンを変えることを目指すもので、参加者はそれまでの限界やパラダイムを超えたところで思考したり行動したりできるようになる、としている[19]。日本語版公式ウェブサイトでは、「トランスフォーメーション(変容)教育のパイオニア」であると述べている[7]。同社によると顧客の中心は30~40代の社会的に成功した人々であり、収益性の高いビジネスとして成功している[1]。収益は、1997年には4800万ドル、2004年時点で推定年間5000万ドルである[1]。
プログラムには同社の研究開発の成果が実践的な形で組み込まれているとされ[19]、英語版公式ページには「ランドマーク・フォーラムを対象とした独立した事例研究、調査」としていくつかの事例があげられている[20]。学者のElizabeth Puttickは、ランドマークの効果に関する主張には、同社自身による調査が引用されていると述べている[1]。
セミナーには、自己を強力にバックアップする自己啓発の手段としての評価、家族関係や人間関係が改善できる、仕事がより容易になるといった称賛もある。一方、勧誘が強引、受講者に勧誘させている、価格が高いという意見、ネガティブな影響がみられる場合があるなどの批判もある[1]。集団心理療法の代わりになるものではなく、医療機関の援助が必要な健康でない人には適さない[9]。
ランドマークやその前身組織の講座の背後には哲学的エートスも見られ、中心テーマには東洋哲学的な基調がある[1]。カルトや自己宗教、または広義の新宗教運動と見做されることもあるが、ランドマークは強く否定している。
ランドマーク・フォーラム(Landmark Forum)が入門講座としてあり、2018年時点で期間は3日間である[21]。個人と企業に対して講座を提供しており、レストランチェーンのパンダエクスプレスやヨガウェアブランドのルルレモン・アスレティカは、従業員に対しランドマーク・フォーラムを受けるよう推奨している[22][23]。一方、フランス政府(1991年)[24]とオーストリア政府(2005年)[25]が、ランドマークを財政と来歴を調査する可能性の高い組織のリストに加え注意を払っていたことがあり[26]、フランスやカナダでは活動が問題視され、非常に厳しい報道も行われている[27]。
出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k Puttick, 宮坂清訳 2009, pp. 569–570.
- ^ ランドマークのスタッフ (2002年). “Landmark Education Celebrates 11 Years of Business and Growth”. Landmark Education. San Francisco, California: Landmark Education. 27 September 2007時点のオリジナルよりアーカイブ。22 October 2008閲覧。
- ^ *Tennan, Michelle (22 October 2008). “Landmark Education Business Development, LEBD, Changes Name to Vanto Group” (English). Reuters 21 September 2014閲覧。
- ^ “GOSS-REID - Fifth Circuit Court of Appeals”. http://www.ca5.uscourts.gov. United States Court of Appeals for the Fifth Circuit(アメリカ合衆国第5巡回控訴裁判所) (2002年). 2017年4月12日閲覧。
- ^ a b ランドマークのスタッフ (2014年). “Landmark Fact Sheet”. Landmark Worldwide. San Francisco, California: Landmark Worldwide. 22 January 2015閲覧。
- ^ a b c d e 神谷 2011.
- ^ a b 日本語版公式サイト
- ^ 日本語の「自己啓発セミナー」と同意。
- ^ a b c 神谷 2008.
- ^ a b Graham, Ruth (2016年4月6日). “The Bizarre True Story of the Group That Seduces Philip in This Season of The Americans” (English). Slate 2018年1月29日閲覧。
- ^ a b Marshall, Jeannie (23–27 June 1997). “The est in the Business: That old seventies personal growth fad has been resurrected and retooled, and it's coming soon to a corporation near you”. National Post: Saturday Night (Toronto, Ontario)
- ^ Pressman 1993, pp. 245–246, 254–255.
- ^ ランドマークのスタッフ. “Landmark Company History”. Landmark Worldwide. 2018年9月25日閲覧。
- ^ 医師だが、精神面の専門家ではない。(小久保)
- ^ 塩谷 1997, pp. 116–118.
- ^ 塩谷 1997, pp. 154–155.
- ^ ロバート・キャロル; 小久保温 翻訳・コメント (2011年). “ランドマーク・フォーラム(Landmark Forum) /ランドマーク・エデュケーション株式会社(Landmark Education Corporation)”. The Skeptic's Dictionary 日本語版. 2018年9月11日閲覧。
- ^ 神谷光信 (2010年8月5日). “est研究(280)ジェローム・ダウンズについて”. 2018年9月9日閲覧。
- ^ a b ランドマークとは 日本語公式サイト
- ^ ランドマークのスタッフ. “Independent Research, Case Studies, and Surveys about The Landmark Forum”. Landmark Worldwide. 2018年9月25日閲覧。
- ^ The Landmark Forum 英語公式サイト
- ^ BusinessWeek staff (18 November 2010). “General Tso, Meet Steven Covey”. Bloomberg 2011年3月14日閲覧。
- ^ Sacks, Danielle (1 April 2009). “Lululemon’s Cult of Selling”. Fast Company 2011年3月14日閲覧。
- ^ “Rapport fait au nom de la Commission d'Enquête sur la situation financiere, patrimoniale et fiscale des sectes, ainsi que sur leurs activites economiques et leurs relations avec les milieux economiques et financiers”. フランス: Assemblée Nationale(国民議会 (フランス). 2018年11月19日閲覧。
- ^ “International Religious Freedom Report 2005' (onderwerp: Oostenrijk)”. US Department of State. 2012年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年11月19日閲覧。
- ^ 2018年時点でオーストリア政府のリストからランドマーク・エデュケーションの名前は削除されている。
- ^ Charles Rusnell, Jennie Russell (2014年). “Alberta Health Services staff pressured to attend controversial seminars”. カナダ: CBC News. 2018年8月15日閲覧。
参考文献
[編集]- 神谷光信「ワーナー・エアハードとエスト関連文献紹介」『キリスト教と文化』第7巻、関東学院大学キリスト教と文化研究所、2008年、127-135頁。
- 神谷光信 (2011年). “Werner Erhard and est ワーナー・エアハードとエスト”. 2018年9月10日閲覧。
- Elizabeth Puttick 執筆『現代世界宗教事典—現代の新宗教、セクト、代替スピリチュアリティ』クリストファー・パートリッジ 編、井上順孝 監訳、井上順孝・井上まどか・冨澤かな・宮坂清 訳、悠書館、2009年。
- 塩谷智美『マインド・レイプ 自己啓発セミナーの危険な素顔』三一書房、1997年。