ラートシカムイ
ラートシカムイは、アイヌ民話に伝わる巨大な蛸である[1][注釈 1]。日本海の海中に住んでいたとされる[3]。更科源蔵 (1971)『アイヌ伝説集』に見える[1]。
ラートシカムイは「尾がたくさんある神」の意である[1]。海で一番強い神であるとされ、陸で一番強い神であるフリカムイと争っていたとされる[1]。
伝承
[編集]アイヌ民話において、アイヌの人々は巨鳥フリカムイ[注釈 2]の棲み処に近づかず、穏やかな暮らしをしていた[3]。しかしあるとき、ひとりの女性が道に迷ってフリカムイの水飲み場を汚し、怒らせてしまった[3]。フリカムイが怒り狂って空や海上を飛び回った際、海底で眠っていたラートシカムイがあまりの騒音に目を覚まし[3]、怒って海面に出てフリカムイと戦った[4]。フリカムイはラートシカムイの腕を嘴で掴んで陸に引きずり上げようとする一方、ラートシカムイはフリカムイに墨を吐きかけたり、8本の足で海に引きずり込んだりした[1][4]。力は両者とも互角で、決着がつくことはなかったという[4]。
フリカムイが海中に引き込まれた際、尾羽(アイヌ語でイシ)を左右に動かして(アイヌ語でカリ)ふんばったため、その付近の海を石狩(いしかり)と呼ぶようになったともいう[4][1]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]参考文献
[編集]- 朝里樹『日本怪異妖怪事典 北海道』笠間書院、2021年6月25日。ISBN 978-4305709417。
- 松谷みよ子「巨鳥退治」『松谷みよ子の本 第9巻 伝説・神話』講談社、1995年10月25日、500–506頁。ISBN 978-4-06-251209-1。
- 更科源蔵『アイヌ伝説集』北書房、1971年。ASIN B000J94POY。