台湾海峡トンネル
台湾海峡トンネル(たいわんかいきょうトンネル、台灣海峽隧道)は、中国大陸と台湾を結ぶ台湾海峡の海底トンネルの計画である。中華人民共和国(中国)側では関連する評価を完了しており、実際の計画を承認しているが、技術的・政治的な問題により、現在のところ実現の可能性は極めて低い。プロジェクトが完了したとしても、この地域で頻繁に発生する低気圧や地殻変動のため、非常に困難で費用のかかる保守と修理の問題に直面することになると見られている。
中国側での現在の計画によると、各トンネルの全長は約125 - 150キロメートルであり、人工島や海上橋なども併用する。一つのルートの推定コストは4,000 - 5,000億元であり[2]、トンネル完成後は高速道路(G3京台高速道路)や高速鉄道(京台高速鉄道)を通す計画である。
歴史
[編集]1940年代には、何人かの中国の学者が海峡に道路を通すことを提案していた[3]。1987年、張以誠、姜達権ら数人の学者が中華人民共和国政府に報告書を書いた。三峡ダムのプロジェクトの後、台湾海峡と瓊州海峡のトンネルについての論証が行われ、鄧小平の指示が得られた[4][5]。
1997年、清華大学の呉之明は、台湾海峡にトンネルを建設するというアイデアを提案した。1998年には、「台湾海峡トンネル学術論証検討会」が厦門で開催され、中国本土、台湾、米国の学者が参加した。その後、工学的議論が議題になった。2008年までに、論証会議は中国で6回開催され、シンガポールと米国でも開催されている[5]。
2013年6月に中華人民共和国国務院が承認した「国家公路網計画(2013年 - 2030年)」には、福建省平潭県と台湾北部の新竹市を結ぶ長さ122キロメートルの海底トンネルが含まれている[6]。
2016年3月5日、中華人民共和国国務院は第13次5か年規画の概要草案を公布し、その中には京台高速鉄道が含まれていた[7]。
2017年には、中国工程院がトンネルの設計を完了し、2019年に実現可能性評価を完了する予定である[8]。計画されている福清-平潭高速道路の海壇海峽トンネル部分は、台湾海峡トンネルプロジェクトの立ち上げの前置きであると考えられる[8][9]。
予定ルート
[編集]想定される予定ルートは三つある。これまで、北線のトンネル計画と、中線の海上橋が議論されてきた。北線は国務院の公式計画に納めるのが比較的簡単であり、平潭では海底トンネルの入口のための建設基地がすでに用意されている。中線の優先順位は北線ほど高くないが、地形的にかなりの利点があることから実現可能性研究のために提案されており、まだ技術的検証段階にある。
- 北線: 京台高速道路、平潭島東澳村 - 新竹市新竹漁港、全長約124 km(約68海里)。3つの予定ルートの中で最短である。水深が浅く、歴史的にレベル7を超えた地震が発生していないため、専門家の間では最初に建設すべき路線と認められている[10][11]。
- 中線:泉州市 - 彰化県(または南日鎮 - 苗栗県[12])。長さは北線とほぼ同じ約127 km。このルートは海上橋の計画になっている。 これは、中央山脈によって台風の直接の影響が回避されることや、海底の雲彰隆起が浅く、深さが30から50メートルで安定していて橋の架設に適しているためである。第2段階の道路網として選択されている。路線の途中には、人工島とインターチェンジを設置することとしている。
- 南線: G319国道、厦門市 - 嘉義県。烈嶼郷、金門県、澎湖県を通り、澎湖水道を海底トンネルで抜けて台湾に至る。長さは3ルート中最長の約174 kmで、途中には海底峡谷があり、トンネルを深くする必要がある。また、レベル5 - 6の地震が多く発生している[12]。これらの理由から、このルートは技術的な議論で基本的に排除された。
現状
[編集]中国側の積極的な姿勢と比較して、台湾側では安全保障上の懸念との政治的な対立のために、中華民国の中央政府や学界、メディアはトンネル計画にあまり興味を示していない。この計画は純粋に計画のみである[13]。 両岸関係が変わらない限り、台湾の現状において実現の可能性は極めて低い[14][15]。
また、膨大な費用、未解決の技術的問題のため、実行可能とは考えられていない。提案されたトンネルの延長は150km近くであり、英仏海峡トンネルや青函トンネルの3倍近くもある[16][17]。
2016年3月6日、台湾の海峡交流基金会の顧問である李孟洲は、両岸の政治問題により高速鉄道建設の可能性は非常に低いと述べた。台湾海峡トンネルの建設は双方の間の政治的相互信頼を含み、米国は同意していない[18]。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ 李学杰; 张以诚; 冯志强; 郭连生; 周昌范; 万荣胜 (2008-09-23). “台湾海峡地形地质特征及其通道工程选线” (中国語). 科技导报 26 (22): 80-87 2009年3月21日閲覧。.
- ^ “台湾海峡通道列入国家交通长期规划(附图)_新闻中心_新浪网”. news.sina.com.cn. 2018年5月30日閲覧。
- ^ 石谦; 蔡爱智 (2008-08-18). “闽中-台中古通道的地貌环境——兼议“东山陆桥”的通行条件” (中国語). 科技导报 26 (22): 75-79.
- ^ 张以诚; 姜达权 (1999年4月2日). “倡言台湾海峡隧道第一人” (中国語). 中国矿业报
- ^ a b 张以诚 (2008). “台湾海峡隧道工程的提出、论证及今后工作建议”. 水文地质工程 (1): 1-4. オリジナルの2013年10月23日時点におけるアーカイブ。 2009年3月21日閲覧。.
- ^ “内地规划建台海公路”. 南华早报. (2013年8月5日) 2013年8月19日閲覧。
- ^ “中國公布十三五計劃 想將高鐵延伸到台灣”. 自由時報. (2016年3月5日) 2016年3月5日閲覧。
- ^ a b Stephen Chen (2018年8月6日). “Beijing planning world’s longest rail tunnel to Taiwan” (英語). South China Morning Post 2018年8月7日閲覧。
- ^ 何珍 (2017年4月24日). “平潭至福清拟建设海底隧道 投资估算约120亿元”. 福州新闻网 2018年8月7日閲覧。
- ^ 中國評論通訊社 (2007年4月22日). “大陸在距台最近點立標誌碑 新竹市長揭碑” (中国語). 中國評論新聞網. オリジナルの2014年5月30日時点におけるアーカイブ。 2009年12月27日閲覧。
- ^ Li, Dapeng (8 November 2005). “Feasibility of cross-Straits tunnel discussed”. China Daily. 22 February 2012閲覧。
- ^ a b 新京报 (2007年4月22日). “台湾海峡隧道工程线路初定3个方案” (中国語). 新浪 2009年3月21日閲覧。
- ^ “Taipei says thanks but no to cross-strait tunnel plan”. Taipei Times (26 April 2007). 22 February 2012閲覧。
- ^ 徐琳舒 (2003年8月6日). “中國研挖海底隧道通台” (中国語). 蘋果日報 2011年9月26日閲覧。
- ^ 中央通訊社 (2010年3月12日). “大陸再提跨海峽隧道 台灣無此計劃” (中国語) 2014年12月29日閲覧。
- ^ “Large basalt reef may make Taiwan Strait Tunnel come true”. Whats On Xiamen (25 November 2009). 22 February 2012閲覧。
- ^ “China plans to build tunnel linking Taiwan: expert”. China Daily (13 May 2005). 22 February 2012閲覧。
- ^ “台湾回应京台高铁规划:不是说建就可以规划” (中国語). (2016年3月7日) 2016年3月7日閲覧。