同伴行列
線型代数学におけるフロベニウスの同伴行列(どうはんぎょうれつ)あるいはコンパニオン行列(英: companion matrix)とは、n 次モニック多項式
に対して
と定義されるn 次行列を言う。慣例的に、基底 v1, …, vn は、C = C(p) が基底を巡回するようにとる。つまり、Cvi = Civ1 = vi+1 (i < n) かつ v1 は K[C]-加群として V を生成する。
文献によってはいま挙げた行列の転置(と双対巡回座標)を採用するものもある。これは線型漸化式に用いるなどの目的でより効果を発揮する。
特徴付け
[編集]モニック多項式 p から定まる同伴行列 C(p) の固有多項式と最小多項式は p と一致する[1]。このような意味でモニック多項式 p は正方行列 C(p) を〈同伴〉している。
行列 A が適当な体 K の元を成分にもつ n 次行列とすると、以下は同値:
- A はその固有多項式の同伴行列に K 上で相似である。
- A の固有多項式と最小多項式は一致する。
- A の最小多項式の次数は n である。
- Kn = spanK{v, Av, …, An−1v} となるベクトル v が存在する[注釈 1]。
- V = Kn は K[A]-加群として巡回的(かつ V = K[A]/(p(A)) である(このことを以って A は正常 (regular) であるという)。
一般には任意の正方行列 A が同伴行列に相似となるとは限らないが、いくつかの同伴行列 C(p1), …, C(pm) の直和
に相似となる。モニック多項式の列 p1, …, pm は後に続く多項式を割り切るように選ぶことができ、それらは A により一意的に決まる。このようにして得られた区分行列 R を A の有理標準形と呼ぶ(代数閉体上における行列のジョルダン標準形の類似)。
対角化可能性
[編集]n 次モニック多項式 p が n 個の相異なる根(つまり同伴行列 C(p) の固有値)λ1, …, λn を持つならば、同伴行列 C(p) は
と対角化できる。ただし V は λi たちに対応するヴァンデルモンド行列である。
線型漸化式
[編集]与えられた線型回帰数列の固有多項式が
であるとき、(転置)同伴行列
は、数列の項を一つ進めるという意味で、当該の数列を生成する。式で書けば
が成立する。
c0 = −1 かつ他の全ての i について ci = 0 のとき、即ち p(t) = tn − 1 のとき、行列はシルベスターの巡回時計ずらし行列 (cyclic clock shift matrix) になる。
ベクトル (1, t, t2, …, tn−1) は、t が上記固有多項式の根であるとき、固有値 t に属する固有ベクトルである。
注釈
[編集]出典
[編集]- ^ Horn & Johnson 2013, p. 195, Theorem 3.3.14.
- ^ Hoffman & Kunze 1971, p. 227.
参考文献
[編集]- Hoffman, K.; Kunze, R. (1971). Linear Algebra (Second ed.). Prentice-Hall. MR0276251. Zbl 0212.36601
- Horn, R. A.; Johnson, C. R. (2013). Matrix Analysis (Second ed.). Cambridge University Press. ISBN 978-0-521-83940-2. MR2978290. Zbl 1267.15001
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- Weisstein, Eric W. "Companion Matrix". mathworld.wolfram.com (英語).
- Hazewinkel, Michiel, ed. (2001), “Frobenius matrix”, Encyclopedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4