囲碁の精
囲碁の精(いごのせい)は、江戸時代の古書などに記述のある囲碁の精霊。妖怪研究家・多田克己の著書においては付喪神の一種とされ[1]、妖怪研究家・村上健司の推測によれば、囲碁の好きな者のもとに現れるものとされる[2]。
『玉箒木』の囲碁の精
[編集]江戸時代の怪談本『玉箒木』や、林元美『爛柯堂棋話』にある話。江戸の牛込に、囲碁の好きな清水昨庵という者がいた。
昨庵がある時に近くの柏木村円照寺(現・東京都新宿区)を散歩していると、色白と色黒の2人組が話しかけてきた。2人と馴染みとなった昨庵が名を尋ねると、色黒の者は山に住む「知玄(ちげん)」、色白の者は海辺に住む「知白(ちはく)」と名乗り、それきり姿を消してしまった。
昨庵はこの後囲碁の名人となり、江戸中に敵が無くなったとある[3]。昨庵の出会った2人は、実は碁石の精だったということである[4]。
『越佐の伝説』の囲碁の精
[編集]小川直嗣の著書『越佐の伝説』にある話。新潟の岩船郡関谷に住む庄屋が旅の途中、雪で足止めを食らい、とある町で宿をとることになった。
暇つぶしに好きな碁を楽しもうかと、同じ宿にいた老人と碁を打っていると、なぜか碁の腕前がめきめきと上達した。
この老人が碁老人という名の囲碁の精だったという[2]。
脚注
[編集]- ^ 多田克己『幻想世界の住人たち』 IV、新紀元社〈Truth In Fantasy〉、1990年、303頁。ISBN 978-4-915146-44-2。
- ^ a b 村上健司編著『妖怪事典』毎日新聞社、2000年、32頁。ISBN 978-4-620-31428-0。
- ^ 林元美 著、林裕校注 編『爛柯堂棋話 昔の碁打ちの物語』 2巻、平凡社〈東洋文庫〉、1978年(原著1914年)、48-56頁。ISBN 978-4-582-80334-1。
- ^ 江馬務『日本妖怪変化史』中央公論新社〈中公文庫〉、2004年(原著1923年)、110頁。ISBN 978-4-12-204384-8。