国鉄5830形蒸気機関車

日本鉄道 205(後の鉄道院 5830)

5830形は、かつて日本国有鉄道の前身である鉄道院・鉄道省に在籍したテンダ式蒸気機関車である。

概要

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元は、日本鉄道1898年(明治31年)にイギリスダブスから2両(製造番号3657, 3658)を輸入した、車軸配置4-4-0(2B)のテンダ機関車で、Dbt2/4形(205, 206)と称された。この車軸配置の機関車としては、非常に特異な構造を持ち、常磐炭田産の低質炭を燃料とするため、ウッテン式に近い広火室と燃焼室が採用され、ボイラーの伝熱面積と火格子面積の比が非常に小さい。この火室を避けるため、第1・第2動輪間距離はPbt2/4形(後の鉄道院5500形)と比べて203mm延長されている。同時期に導入された車軸配置4-6-2(2C1)のDb3/6形タンク機関車(後の鉄道院3800形)とは、系列設計である。

炭水車は、当時のイギリス製機関車としては珍しいダブルボギーの4軸形で、石炭の積載量は5.5t、水の積載量は13.6m3と非常に大きくとられている。これは、低質炭を燃料とすることから燃費が悪く、大量に積載する必要があったためである。

国有化後の1915年(大正4年)には、盛岡工場で火室の奥行と幅を小さくする改造が行われて、燃焼室も撤去された。同時にシリンダ径を小さくし、使用する蒸気圧力も増大された。全国で良質な瀝青炭が燃料として使用されることとなったため、本形式のような経済性の悪い機関車は必要なくなり、1922年(大正11年)7月に2両とも廃車解体された。配置は一貫して原ノ町であった。

主要諸元

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  • 全長:16,267mm
  • 全高:3,734mm
  • 全幅:2,413mm
  • 軌間:1,067mm
  • 車軸配置:4-4-0(2B)
  • 動輪直径:1,372mm
  • 弁装置:スチーブンソン式
  • シリンダー(直径×行程):432mm×584mm → 406mm×584mm
  • ボイラー圧力:11.2kg/cm2 → 12.7kg/cm2
  • 火格子面積:2.42m2 → 1.57m2
  • 全伝熱面積:88.1m2 → 94.6m2
    • 煙管蒸発伝熱面積:79.4m2 → 89.0m2
    • 火室蒸発伝熱面積:8.6m2 → 5.6m2
  • ボイラー水容量:3.1m3 → 3.5m3
  • 小煙管(直径×長サ×数):44.5mm×3,124mm×182本 → 50.8mm×36,80mm×150本
  • 機関車運転整備重量:39.73t → 40.06t
  • 機関車空車重量:36.27t
  • 機関車動輪上重量(運転整備時):26.33t → 26.65t
  • 機関車動輪軸重(第1動輪上):13.29t → 13.45t
  • 炭水車重量(運転整備):30.19t → 29.71t
  • 炭水車重量(空車):14.34t
  • 水タンク容量:13.64m3 → 13.61m3
  • 燃料積載量:5.49t
  • 機関車性能
    • シリンダ引張力:7,560kg → 7,440kg
  • ブレーキ装置:手ブレーキ真空ブレーキ

参考文献

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  • 臼井茂信「国鉄蒸気機関車小史」1956年、鉄道図書刊行会
  • 臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成」1969年、誠文堂新光社
  • 臼井茂信「機関車の系譜図 1」1972年、交友社
  • 金田茂裕「形式別 日本の蒸気機関車I」エリエイ出版部 プレス・アイゼンバーン刊
  • 金田茂裕「日本蒸気機関車史 私設鉄道編 I」エリエイ出版部 プレス・アイゼンバーン刊