少司命

傅抱石『九歌図』の少司命(中国美術館蔵)

少司命(しょうしめい)は、中国の祭祀詩『楚辞』「九歌」に登場する子供と新生を司る女神格。大司命と対を成す存在として、生命の誕生と幼子の守護を掌どるとされる。後世の道教では子授け神としての性格が付加され。

『九歌』における定位

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『九歌』「少司命」篇は巫女と神の情感的な交流を描く抒情的な詩節が特徴。洪興祖『楚辞補注』では「**夫人の子を庇う神**」と解釈され、以下の神的特性を持つ:

  • 「荷衣兮蕙帯(蓮の衣に蕙草の帯)」という清浄な装いで秋蘭を携えた美青年神の姿
  • 「悲莫悲兮生別離(悲しみは生別に過ぎず)」など人間的な情感を表出する擬人化表現
  • 子供を抱き「竦長剣兮擁幼艾(長剣を立て幼子を抱く)」という守護神的描写

詩的描写の分析

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神格の両義性

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  • 慈愛性湘夫人との類似性が指摘される母性的側面(三沢玲爾説)
  • 戦神性:青銅剣を携える武神的要素(長江文明の地母神信仰との関連)
  • 過渡性:天界と人間を往還する「**夕宿兮帝郊(夕べ帝の郊に宿る)**」の移動描写

大司命との対比構造

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特徴 少司命 大司命
**管掌領域** 誕生・幼児保護 寿命・死の管理
**性格描写** 情愛的・可憐 厳格・孤高
**祭祀対象** 部族の子孫繁栄 個人の寿命祈願
**象徴物** 秋蘭・青銅剣 扶桑樹・陰陽気

(竹治貞夫『楚辞研究』の分類法に基づく)

祭祀儀礼の再構

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  • 「**入不言兮出不辞(入りて言わず出でて辞さず**)」の描写から、神霊の不可視性と突然の降臨を表現
  • 巫女との情感的交歓は「迎神歌」と「送神歌」の構造を有する(青木正児の舞曲説)
  • 現代中国湖南省雩祭に「少司命舞」の名残とされる巫舞が伝承

神話的変遷

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日本における受容

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参考文献

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関連項目

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