平安将棋(へいあんしょうぎ)は、日本の将棋類の一つであり、二人で行うボードゲーム(盤上遊戯)の一種である。
鎌倉時代初期に編纂したとされる習俗辞典二中歴(平安時代後期に成立した掌中歴および懐中歴の合本)において、平安大将棋とともに掲載されている将棋である。この中では単なる「将棋」という名前であるが、後の小将棋や現代の本将棋と区別してこう呼ばれる。
文献に載っている将棋の中では、最も古いものである。タイの将棋類であるマークルックと類似しているため、東南アジア伝来説が有力視されている。
『二中歴』の「第十三 博棊歴」には、以下のような将棋の記述がある[1]。
- 将棊 棊一作騎
- 玉将八方得自在 金将不行下二目 銀将不行左右下
- 桂馬前角超一目 香車先方任意行 歩兵一方不他行
- 入敵三目皆成金 敵玉一将則為勝
※ 文献にしか載っていないものであるため、当時の正確なルールであるとは限らない。
- 将棋盤の上で行う。将棋盤の大きさは縦横8マスずつ[2]、縦8マス・横9マス、縦横9マスずつの諸説があるが正確なことはわかっていない。
- 玉将(玉)・金将(金)・銀将(銀)・桂馬(桂)・香車(香)・歩兵(歩)の6種類の駒があり、それぞれ動きが決まっている。
- 文献にも載っていないが、おそらく玉将・金将以外の駒は、敵陣3段目までに入れば成れたと考えられる。
- 本将棋とは違い、捕獲した駒を自らの持ち駒にはできないと考えられている。
- 本将棋と同様に敵の玉将を詰めると勝ちになるが、敵を玉将だけにしても勝ちとされている。
以下のいずれかであったか、時代が下るとともに盤の大きさも変化していったと考えられる。
▽香車 | ▽桂馬 | ▽銀将 | ▽金将 | ▽玉将 | ▽銀将 | ▽桂馬 | ▽香車 |
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▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 |
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▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 |
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▲香車 | ▲桂馬 | ▲銀将 | ▲玉将 | ▲金将 | ▲銀将 | ▲桂馬 | ▲香車 |
▽香車 | ▽桂馬 | ▽銀将 | ▽金将 | ▽玉将 | ▽金将 | ▽銀将 | ▽桂馬 | ▽香車 |
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▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 |
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▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 |
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▲香車 | ▲桂馬 | ▲銀将 | ▲金将 | ▲玉将 | ▲金将 | ▲銀将 | ▲桂馬 | ▲香車 |
現代の本将棋から飛車と角行を除いたものである。
▽香車 | ▽桂馬 | ▽銀将 | ▽金将 | ▽玉将 | ▽金将 | ▽銀将 | ▽桂馬 | ▽香車 |
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▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 | ▽歩兵 |
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▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 | ▲歩兵 |
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▲香車 | ▲桂馬 | ▲銀将 | ▲金将 | ▲玉将 | ▲金将 | ▲銀将 | ▲桂馬 | ▲香車 |
現代の本将棋に同じ。ただし持ち駒再利用のルールが存在しないため成銀・成桂・成香・と金の区別はなく、すべて金将であったと考えて良い。
元の駒 | 動き | 成駒 | 動き |
玉将(ぎょくしょう) | | 全方向に1マス動ける。 | - | - | - |
金将(きんしょう) | | 縦横と斜め前に1マス動ける。 | - | - | - |
銀将(ぎんしょう) | | 前と斜めに1マス動ける。 | 金将(きんしょう) | | 縦横と斜め前に1マス動ける。 |
桂馬(けいま) | | 前へ2、横へ1の位置に移動できる。その際、駒を飛び越えることができる。 |
香車(きょうしゃ) | | 前方に何マスでも動ける。飛び越えては行けない。 |
歩兵(ふひょう) | | 前に1マス動ける |
- ^ 二中歴3 第十一~第十三(尊経閣善本影印集成)ISBN 4-8406-2316-3 P.118
- ^ 観戦記者・天狗太郎(山本亨介)は「8×8説、玉(王)が左、金将は右(チェス女王のように向かい合わず)、歩兵の初期配置は二段目で成りも二段目、行き処の無い歩香桂でない限り不成も可」説を採り(『将棋庶民史』ほか)、棋士・飯田弘之はノーマルな「8×8説」(本文2.2の[初期配置図・1縦横8マスずつと仮定した場合]、成りは三段目で不成も可)説を採る(『遊戯史研究』11号ほか)
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