日本国憲法第89条

(にほんこく(にっぽんこく)けんぽう だい89じょう)は、日本国憲法第7章にある条文であり、公の財産の支出又は利用の制限について規定している。

条文

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第八十九条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

沿革

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大日本帝国憲法

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なし

憲法改正要綱

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なし[1]

GHQ草案

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「GHQ草案」、国立国会図書館「日本国憲法の誕生」。

日本語

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第八十三条
公共ノ金銭又ハ財産ハ如何ナル宗教制度、宗教団体若ハ社団ノ使用、利益若ハ支持ノ為又ハ国家ノ管理ニ服ササル如何ナル慈善、教育若ハ博愛ノ為ニモ、充当セラルルコト無カルヘシ

英語

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Article LXXXIII.
No public money or property shall be appropriated for the use, benefit or support of any system of religion, or religious institution or association, or for any charitable, educational or benevolent purposes not under the control of the State.

憲法改正草案要綱

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「憲法改正草案要綱」、国立国会図書館「日本国憲法の誕生」。

第八十五
公金其ノ他ノ公ノ財産ハ宗教制度若ハ宗教団体ノ使用、便益若ハ維持ノ為又ハ国ノ管理ニ属セザル慈善、教育若ハ博愛ノ事業ニ対シ之ヲ出捐スルコトヲ得ザルコト

憲法改正草案

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「憲法改正草案」、国立国会図書館「日本国憲法の誕生」。

第八十五条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

解説

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政教分離の財政面での徹底、税金の濫費の防止などを目的とする規定である。

判例によれば、この条文でいう宗教団体とは、布教や具体的な宗教行為の実践を本来の目的とする団体に限られるとされる。換言すれば、特定の宗教に基づいて運営されているというだけでは、この条文でいう宗教団体には該当せず、献金や助成は合憲である。これは日本遺族会への献金の合憲性をめぐる訴訟で初めて判示されたものである。

これとは別に、私立学校振興助成法による私学助成や地方自治体が行う認可外保育施設への支出は憲法違反にあたるのではないかという指摘がある[2][3][4]。また、外国人学校の無償化に対しても、憲法違反にあたるのではないかという指摘がある。

脚注

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出典

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  1. ^ 「憲法改正要綱」、国立国会図書館「日本国憲法の誕生」。
  2. ^ 無認可保育所への助成 違憲論議で緊張 都議会『朝日新聞』1968年(昭和43年)3月3日朝刊 12版 15面
  3. ^ 東京都の石原慎太郎知事が、全国都道府県知事会議で 「私学助成という、どう考えても憲法違反の制度がとられている」などと発言(毎日新聞、1999年9月10日付)
  4. ^ 私学助成は憲法違反か? 日本共産党ホームページ

関連項目

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外部リンク

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