曲率 (きょくりつ、英 : curvature )とは、曲線 や曲面 の曲がり具合を表す量である[ 1] 。
例えば、半径 r の円周の曲率は 1/r であり、曲がり具合がきついほど曲率は大きくなる。この概念はより抽象的な図形である多様体 においても用いられる。曲面上の曲線の曲率を最初に研究したのは、ホイヘンス とされ、ニュートン の貢献もさることながら、オイラーは曲率の研究に本格的に取り組んだ。その他モンジュ 、ベルヌーイ 、ムーニエ なども研究した[ 2] 。
ある任意の曲線において、線上の点 P 0 を基点とし、そこから曲線上の任意点 P (位置ベクトル r P で表されるとする)までの距離を s とする。(この場合の s は一般座標上の距離か曲線上の長さのいずれでもよい。)
このとき点 P の位置は、
r P = r ( s ) {\displaystyle \mathbf {r} _{P}=\mathbf {r} (s)} のように、変数 s の関数として表すことができる。(以下、特に断らない限り r P = r とする。)
このとき、点 P で接する方向の単位ベクトル (これを t P とする)は、
t P = t ( s ) = lim Δ s → 0 r ( s + Δ s ) − r ( s ) Δ s = d r d s {\displaystyle \mathbf {t} _{P}=\mathbf {t} (s)=\lim _{\Delta s\to 0}{\mathbf {r} (s+\Delta s)-\mathbf {r} (s) \over {\Delta s}}={d\mathbf {r} \over {ds}}} となる。(位置ベクトルの変位分 Δ r が十分小さいとき、|Δ r | = Δs であるから、これは単位ベクトルである。)
同様に、 r Q = r ( s + Δ s ) {\displaystyle \mathbf {r} _{Q}=\mathbf {r} (s+\Delta s)} と表される点 Q を考えるとき、点 Q 上の単位接線ベクトル t Q は、
t Q = t ( s + Δ s ) {\displaystyle \mathbf {t} _{Q}=\mathbf {t} (s+\Delta s)} であり、二つの単位接線ベクトル t P 、t Q のなす角度を Δθ とすると、
| t Q − t P | 2 = sin Δ θ 2 {\displaystyle {\left|\mathbf {t} _{Q}-\mathbf {t} _{P}\right| \over 2}=\sin {\Delta \theta \over 2}} である。
Δθ が十分小さい、すなわち Δ s が十分小さいとき、
Δ θ = sin Δ θ = | t Q − t P | {\displaystyle \Delta \theta =\sin \Delta \theta =\left|\mathbf {t} _{Q}-\mathbf {t} _{P}\right|} と見做せる。
従って、接線傾斜 Δθ の変動率である χ を以下のように定義できる。
χ ( s ) = d θ d s = lim Δ s → 0 Δ θ Δ s = lim Δ s → 0 | t ( s + Δ s ) − t ( s ) Δ s | = | d t d s | = | d 2 r d s 2 | = 1 R ( s ) {\displaystyle \chi (s)={d\mathbf {\theta } \over {ds}}=\lim _{\Delta s\to 0}{\Delta \theta \over {\Delta s}}=\lim _{\Delta s\to 0}\left|{\mathbf {t} (s+\Delta s)-\mathbf {t} (s) \over {\Delta s}}\right|=\left|{d\mathbf {t} \over {ds}}\right|=\left|{d^{2}\mathbf {r} \over {ds}^{2}}\right|={1 \over R(s)}} 一般に χ を曲率 、χ の逆数 R を曲率半径 と言う。
また、特に曲線が高次のとき、Δs → 0 の極限 で二つの接線によって決まる平面を、点 P における接触平面 と言う。
更に、t を s で微分すると、
d t d s = d 2 r d s 2 = n d θ d s = n R {\displaystyle {d\mathbf {t} \over {ds}}={d^{2}\mathbf {r} \over {ds^{2}}}=\mathbf {n} {d\theta \over {ds}}={\mathbf {n} \over R}} が得られる。ここで n が主法線方向の単位ベクトルであり、主法線と接線は直交している。これは d r /ds が単位ベクトルのため、
( d r d s ) 2 = | d r d s | 2 = 1 {\displaystyle \left({d\mathbf {r} \over {ds}}\right)^{2}=\left|{d\mathbf {r} \over {ds}}\right|^{2}=1} となり、これを s について微分すると、
d d s ( d r d s ) 2 = d 2 r d s 2 ⋅ d r d s + d r d s ⋅ d 2 r d s 2 = n R ⋅ t + t ⋅ n R = 0 {\displaystyle {d \over {ds}}\left({d\mathbf {r} \over {ds}}\right)^{2}={d^{2}\mathbf {r} \over {ds^{2}}}\cdot {d\mathbf {r} \over {ds}}+{d\mathbf {r} \over {ds}}\cdot {d^{2}\mathbf {r} \over {ds^{2}}}={\mathbf {n} \over R}\cdot \mathbf {t} +\mathbf {t} \cdot {\mathbf {n} \over R}=0} となるためである(ベクトル同士の内積 がゼロとなるので、当該ベクトル同士は直交している)。
ベクトル t と n の外積 、
t × n = b {\displaystyle \mathbf {t} \times \mathbf {n} =\mathbf {b} } で得られるベクトル b が陪法線方向の単位ベクトルとなる。陪法線は接触平面 に対する法線となっている。
^ 「曲率 」『百科事典マイペディア』。https://kotobank.jp/word/%E6%9B%B2%E7%8E%87 。コトバンク より2022年2月10日 閲覧 。 ^ 小林昭七『曲線と曲面の微分幾何』裳華房、1977年8月20日。ISBN 4785311193 。