奈良県立橿原考古学研究所
奈良県立橿原考古学研究所(ならけんりつかしはらこうこがくけんきゅうしょ)は、奈良県橿原市畝傍町に設置された県立の埋蔵文化財調査研究機関。奈良県に属する機関である。
現在まで存続している公的な埋蔵文化財研究機関としては最も古い歴史を持つ。橿考研(かしこうけん)と略されることもある。主に奈良県内の遺跡発掘調査を手がけ、初期の纒向遺跡をはじめ、ホケノ山古墳、黒塚古墳、桜井茶臼山古墳、メスリ山古墳、藤ノ木古墳、高松塚古墳などの学史に残る著名な古墳や、飛鳥京跡や東大寺、唐招提寺などの発掘で全国に名を知られる。附属博物館を併設するほか、宇陀市に室生埋蔵文化財整理収蔵センターを設置している。
沿革
- 1938年(昭和13年) - 「紀元二千六百年記念行事」の橿原神宮外苑整備事業として橿原遺跡の調査が行われ、京都大学の末永雅雄が9月13日より現地で調査指揮に当たった。この日が橿原考古学研究所の創立記念日とされる。
- 1951年(昭和26年) - 埋蔵文化財研究機関として末永雅雄を所長とする奈良県立橿原考古学研究所が設置された。
- 1972年(昭和47年) - 当研究所の発掘により高松塚古墳壁画を発見。
- 1974年(昭和49年) - 旧橿原公苑考古博物館を研究所附属施設とし、橿原考古学研究所附属考古博物館に改称(後に附属博物館と改称)。
- 1985年(昭和60年) - 藤ノ木古墳第1次調査。
- 1990年(平成2年) - 研究所本館など新施設が完成した。
- 1997年(平成9年) - 黒塚古墳調査。
- 2014年(平成26年) - 旧奈良県立室生高等学校跡に室生埋蔵文化財整理収蔵センターを設置。
- 2015年(平成27年) - 奈良県教育委員会から奈良県知事部局へ移管。
組織
- 所長の下に副所長と博物館長を置き、副所長は企画部と調査部、総務課を管轄する。企画部には企画課と資料課を置き、調査部は調査課を置く。
- 博物館長の下には副館長が置かれ、学芸課を管轄する。
附属博物館
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館 | |
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奈良県立橿原考古学研究所附属博物館 | |
施設情報 | |
正式名称 | 奈良県立橿原考古学研究所附属博物館 |
前身 | 大和国史館 |
専門分野 | 考古学・埋蔵文化財 |
所在地 | 奈良県橿原市畝傍町 |
アクセス | 近鉄橿原線・南大阪線・吉野線 橿原神宮前駅下車 徒歩15分 近鉄橿原線 畝傍御陵前駅下車 徒歩5分 |
外部リンク | 奈良県立橿原考古学研究所附属博物館 |
プロジェクト:GLAM |
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館には旧石器時代から室町時代までの計約3700点が展示されている[1]。
2018年12月24日から空調設備更新のため休館[2]。藤ノ木古墳から出土の重要文化財を収納している展示ケース内に、錆などを引き起こす有害物質が検出され、原因は合板に使用した接着剤が原因の可能性があるとして、休館中に対策を検討[3]。
2021年11月3日に公開を再開した[1]。
博物館沿革
- 附属博物館は1940年(昭和15年)に原田積善会により設立された大和国史館が前身。
- 1949年(昭和24年) - 大和歴史館に改称。
- 1968年(昭和43年) - 博物館法による博物館として登録。
- 1970年(昭和45年) - 橿原公苑考古博物館に改称。
- 1973年(昭和48年) - 奈良県立考古博物館に改称。
- 1974年(昭和49年) - 橿原考古学研究所附属考古博物館に改称。
- 1980年(昭和55年) - 現在名称の橿原考古学研究所附属博物館に改称。
歴代所長
交通
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利用情報
- 開館時間:午前9時から午後5時まで(入館受付は午後4時30分まで)。
- 休館日:毎週月曜日。月曜日が祝祭日の場合は開館し、その翌日を休館とする。 年末年始(12月28日から1月4日)。
料金
入り口付近の一部は無料展示がある。括弧内は20名以上の団体料金。
- 大人:400円(350円)
- 大学・高校生:300円(250円)
- 中小学生:200円(150円)
奈良県の減免取り扱い要領に基づき、外国人観光客は料金が無料となっている[4]。
文化財
(*)印の文化財は国(文化庁)所有、橿原考古学研究所附属博物館保管
国宝
- (*) 奈良県藤ノ木古墳出土品 - 生駒郡斑鳩町出土。1988年(昭和63年)6月6日に重要文化財に指定、2004年(平成16年)6月8日に国宝に指定。
- 金銅鞍金具前輪
- 金銅鞍金具後輪
- 棘葉形杏葉(きょくようがたぎょうよう)・歩揺付飾り金具
- 龍紋飾り金具・心葉形鏡板付轡(くつわ)・帯先金具
- 土器群
- 金銅製冠
- 金銅製履(くつ)
- 金銅製筒型品
重要文化財(国指定)
- 奈良県橿原遺跡出土品(考古資料) - 縄文時代晩期、畝傍山麓出土。2002年(平成14年)6月26日指定。
- 大和唐古遺跡出土品(考古資料) - 弥生時代、磯城郡田原本町出土。1967年(昭和42年)6月15日指定。
- 水注形土器(考古資料) - 弥生時代、橿原市一町出土。1967年(昭和42年)6月15日指定。
- 大和国高市郡牽牛子塚古墳出土品(考古資料) - 古墳時代、明日香村越出土。1953年(昭和28年)11月14日指定。
- 大和御坊山第三号墳出土品(考古資料) - 古墳時代、生駒郡斑鳩町出土。1981年(昭和56年)6月9日指定。
- (*) 奈良県島の山古墳出土品(考古資料) - 古墳時代、磯城郡川西町出土。1998年(平成10年)6月30日指定。
- (*) 奈良県黒塚古墳出土品(考古資料) - 古墳時代、天理市柳本出土。三角縁神獣鏡33面等を含む。2004年(平成16年)6月8日指定。
- 奈良県メスリ山古墳出土品(考古資料) - 古墳時代、桜井市高田出土。2005年(平成17年)6月9日指定。
- (*) 太安萬侶墓誌(附 真珠4顆)(考古資料) - 奈良時代、奈良市此瀬町出土。1981年(昭和56年)6月9日指定。
重要文化財指定物件の明細
- 牽牛子塚古墳出土品
- 七宝亀甲形金具 1箇
- 金銅製八花形座金 1箇
- 銅製金具 1箇
- 乾漆棺残片 一括
- 唐古遺跡出土品
- 壺形土器 28箇
- 甕形土器 3箇
- 鉢形土器 1箇
- 高坏形土器 1箇
- 水差形土器 4箇
- 器台形土器 2箇
- 蓋形土器 1箇
- 御坊山三号墳出土品
- 三彩有蓋円面硯 1面
- 管状ガラス製品 1本
- 琥珀枕残欠 1箇分
- 漆塗陶棺 1合
- 橿原遺跡出土品
- 土器・土製品 934点
- 石器・石製品 244点
- 骨角牙製品 46点
- 木製弓 1点
- メスリ山古墳出土品
- 銅鏡残欠 3面分(三角縁神獣鏡1、内行花文鏡2)
- 碧玉管玉 55点
- 石製品 38点(椅子形石製品、石釧、鍬形石など)
- 鉄刀・鉄剣残欠 一括
- 附石製品残欠 一括
(主室出土)
- 銅鏃 236点
- 碧玉管玉 16点
- 石製品 58点
- 鉄製品 372点(鉄弓、鉄矢など)
- 附 鉄製品残欠 一括
(副室出土)
- 大型埴輪 9点(円筒埴輪、高坏形埴輪など)
- 土師器 3点
- 附 埴輪・土師器残欠 一括
(墳丘出土)
- 島の山古墳出土品
- 獣形鏡 3面
- 玉類
- 碧玉大型管玉 5箇
- 碧玉管玉 52箇
- 碧玉細管玉 29箇
- 碧玉大形飾玉 1箇
- 碧玉丸玉 15箇
- 滑石玉類 一括
- 鉄小刀 6口
- 鉄刀子 4口
- 碧玉石釧 31箇
- 碧玉車輪石 81箇
- 碧玉鍬形石 21箇
- 碧玉合子 3合
- 琴柱形石製品 1箇
- 黒塚古墳出土品
- 銅鏡 34面(画文帯神獣鏡1、三角縁神獣鏡33)
- 鉄製品 210点(刀剣類、農耕具類など)
- 土師器 3点
- 附 木製品 1点
- 出典
- 『国宝・重要文化財大全 別巻』(所有者別総合目録・名称総索引・統計資料)、毎日新聞社、2000
- 『解説版 新指定重要文化財 10 考古資料』、毎日新聞社、1982
奈良県指定文化財
- 馬見二ノ谷遺跡 出土品
- 下池山古墳出土 割竹形木棺
脚注
- ^ a b “奈良の橿考研博物館リニューアル”. 共同通信. 2021年11月3日閲覧。
- ^ 「橿考研付属博物館、年末から休館 空調設備改修で1年半以上」(産経ニュース2018年4月17日)
- ^ 国宝展示ケースから有害ガス、博物館2年休館へ 読売新聞 2018年4月17日
- ^ 「なぜ?日本人は有料・外国人は無料 奈良県立美術館の観覧料は日本人差別か SNSで論議」『FNNプライムオンライン』2024年3月7日。2024年3月7日閲覧。
- ^ a b 奈良県指定文化財一覧 (PDF) (奈良県ホームページ)。
- ^ 指定文化財一覧表(橿原市ホームページ)。
関連項目
外部リンク
- 公式ウェブサイト
- 奈良県立橿原考古学研究所 (kashikoken) - Facebook