白保竿根田原洞穴遺跡
白保竿根田原洞穴遺跡(しらほさおねたばるどうけついせき)は、沖縄県石垣市(八重山列島石垣島)にある旧石器時代から16世紀頃までにかけての複合遺跡である[2]。全身骨格がほぼ残ったものとしては国内最古の約2万7千年前の人骨が発見されるとともに、国内で初めての旧石器時代の墓域が確認された。国の史跡に指定されている[3][4]。
概要
[編集]沖縄県石垣市東部の白保から盛山にかけて分布する洞穴内にある遺跡で、海岸から約800m、標高30-40mに位置している[2]。新石垣空港敷地内にあり[5]、空港建設中の2007年にNPO法人沖縄鍾乳洞協会が行った調査で洞穴内から人間の頭、脚、腕などの骨9点が発見された[6]。また、その後の調査で1,000点以上の人骨片が出土している[7]。
調査結果
[編集]2007年の調査で発見された人骨
[編集]2007年に発見された人骨のうち、状態のよい6点について同協会、沖縄県立埋蔵文化財センター、琉球大学、東京大学等の専門家チームが放射性炭素年代測定を行ったところ、2010年に、そのうちの1点の20代-30代の男性の頭骨片(左頭頂骨)が国内最古の約2万年前、他に2点も約1万8千年前及び約1万5千年前のものと確認された [8][9]。
2010年までの調査で発見された人骨
[編集]さらに国立科学博物館が、2010年までに出土した人骨10点の母系の祖先を知る手掛かりとなるミトコンドリアDNA分析した結果、国内最古の人骨(約2万-1万年前)とされた4点のうち2点はハプログループM7aと呼ばれる南方系由来のDNAタイプであることが明らかとなった[10]。
2012年度から2016年度の調査で発見された人骨
[編集]2012年度から2016年度にかけて沖縄県立埋蔵文化財センターが行った調査では19体分の人骨が発見され、2017年5月19日には最終調査結果として以下の点が発表された[7][11][12]。
- 発見された人骨は少なくとも19体分以上であり、旧石器時代の人骨発掘としては世界的にも最大級である。
- 人骨のうちの一体(4号人骨)は約2万7千年前(較正年代)のもので、全身骨格がほぼ残った人骨としては国内最古である。
- 4号人骨は、30代から40歳前後の男性のもので、身長は165.2cmと港川人(153cm)より高い。下顎と比較して上顎の歯の摩耗が顕著であり、特殊な歯の使い方をしていた可能性が指摘されている[13]。
- 4号人骨は、仰向けの姿勢で、膝を胸の前に折るとともに、両手が顔の近くになるように肘を曲げられ、地上の岩の間にあった。このため人為的に安置されたと考えられ、風葬の可能性がある。この人骨が発見された場所は、遺跡は日本国内で初めて確認された旧石器時代の墓域である。
対照として、これまでの直接測定による日本国内最古の人骨は、現在の静岡県浜松市浜名区の根堅洞窟で発見された浜北人の約1万4千年前であった。なお、人骨そのものではなく、周辺の炭化物などから測定した日本国内最古の人骨は沖縄県那覇市山下町第一洞穴で1968年に発見された山下洞人の約3万2千年前のものである[6]。
名称
[編集]「竿根田原」の読み方は、沖縄県立埋蔵文化財センターの公式発表や日本考古学協会・日本人類学会での報告では、「さおねたばる」とされている。これに対して、白保で用いられている「そねたばる」とすべきではないかとの指摘が石垣市議会でなされている[14]。なお、竿根田原は字白保の小字名であり、方音は「ソンタパリ」という[15]。
脚注
[編集]- ^ “平成28年度 白保竿根田原洞穴遺跡現地説明会”. 全国遺跡報告総覧. 奈良文化財研究所 (2016年7月2日). 2018年7月21日閲覧。
- ^ a b 白保竿根田原洞穴遺跡現地説明会資料 (PDF) 沖縄県立埋蔵文化財センター
- ^ “郡内から5件目 白保竿根田原洞穴遺跡”. 八重山毎日新聞. (2019年11月16日)
- ^ 令和2年3月10日文部科学省告示第17号。
- ^ “2万年前の人骨 石垣島で出土、直接測定で国内最古 : 週間ニュース : 九州発”. YOMIURI ONLINE(読売新聞). (2010年2月4日). オリジナルの2010年2月9日時点におけるアーカイブ。 2018年7月20日閲覧。
- ^ a b “日本最古・2万年前の人骨、石垣島に 放射性炭素で測定 - サイエンス”. asahi.com(朝日新聞社). (2010年2月4日). オリジナルの2010年2月5日時点におけるアーカイブ。 2018年7月20日閲覧。
- ^ a b “国内最古の全身人骨 石垣島の遺跡 2万7000年前”. 東京新聞. (2017年5月20日). オリジナルの2017年5月23日時点におけるアーカイブ。 2018年7月20日閲覧。
- ^ “人骨は国内最古の2万年前 石垣市白保”. 沖縄タイムス. (2010年2月4日). オリジナルの2010年2月7日時点におけるアーカイブ。 2018年7月20日閲覧。
- ^ 平成22年度石垣市立八重山博物館特別展 偉大な旅 -新人の拡散と八重山白保竿根田原の人骨は何を語るか- (PDF) 石垣市立八重山博物館
- ^ “『白保竿根田原洞穴:旧石器人骨からDNA…国内で最古』”. 毎日新聞. (2013年12月2日). オリジナルの2013年12月4日時点におけるアーカイブ。 2013年12月2日閲覧。
- ^ “旧石器時代 人骨19人分確認、世界最大級 沖縄・石垣島”. 毎日新聞. (2017年5月19日). オリジナルの2017年5月19日時点におけるアーカイブ。 2018年7月20日閲覧。
- ^ “世界最大の旧石器時代遺跡 石垣白保遺跡 墓としては国内初”. 琉球新報. (2017年5月19日). オリジナルの2017年5月19日時点におけるアーカイブ。 2018年7月20日閲覧。
- ^ “国内最古の人骨 里帰り”. 八重山毎日新聞. (2018年7月20日) 2018年7月20日閲覧。
- ^ 沖縄県石垣市の議事録 平成22年12月定例会(第8回)12月16日?05号
- ^ 『石垣市史 民俗(上)』など[要ページ番号]
座標: 北緯24度24分0.7秒 東経124度14分44.9秒 / 北緯24.400194度 東経124.245806度