細菌学

細菌学(さいきんがく、英語:bacteriology)とは、

  1. 微生物全般の中で、特に病原性を持つ微生物に対して適用される学問(=病原微生物学[1][2][3]
  2. 細菌(真正細菌)と、かつて細菌の一部とされていた古細菌の2つを含む、原核生物を対象に研究する学問(=狭義の細菌学)
  3. 上記(2)のうち古細菌を除いた、細菌(真正細菌)を対象に研究する学問(真正細菌学)
  4. 細菌を含めた微生物全般(真菌ウイルスなどを含む)を扱う学問(=微生物学[4][5]
  5. 病原微生物のうち、特に細菌に対して適用される学問(=病原細菌学[6]

以上のような学問分野を意味するものとして扱われる。日本の専門学校や大学などでは、医学歯学薬学看護学栄養学調理科学農学理学生物学生命科学などの分野で専門教科の一つとして扱われることが多い。2005年現在、これらの専門教育の課程では、しばしば上記のうち、1(病原微生物学)または5(病原細菌学)を指すことが多いが、研究の場では2(狭義の細菌学)または3(真正細菌学)の意味で扱われることも多い。

概要

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細菌学という分野が指す領域が複数に亘っている理由は、その成立した過程による。

ロベルト・コッホによる炭疽菌の発見からはじまった、病原体としての細菌研究の黎明期から[7]、日本人はその研究に従事・貢献して北里柴三郎志賀潔などの細菌学者を輩出してきた[8]。この関係から、日本国内においては細菌学という学問が病原体を扱う分野として成長を遂げてきた。その後、細菌以外の病原体であるウイルスの発見や、分類学の発達によって細菌と真菌の違いや真正細菌と古細菌の違いが明確化されたことなどから、これらを「細菌学」に含めて、対象として扱うことには齟齬が生じたため、より適した名称として「微生物学」が用いることが主流になり、今日に至っている。しかしながら、古くから続いている学会(日本細菌学会)や、研究機関、書籍においては、未だに微生物学を表すもの(上記の4)として細菌学を用いているものも見られる。

口腔細菌学

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また、歯学分野では、口腔細菌学という口腔領域の研究分野が存在し、多くの歯科医師感染症専門医インフェクションコントロールドクター理学農学研究者が研究に従事している。

他分野との関連

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細菌や微生物については、その病原体としての重要性とヒトとの関わりの深さから医学領域からの研究がもっとも進んでいる。このため、ヒトに対して病原性のあるものについての研究が数多く、古細菌など非病原性のものについての研究は比較的少ない。このことから細菌学全般としても、細菌や微生物の病原性に関するテーマが扱われることが多く、上述の1や5の意味で用いられることが多い。この傾向は、特に医学関連の専門教育の分野で顕著である。また細菌学に関連する事象として、感染症学全般や免疫学遺伝学などについても触れられることがある。

しかしながら、細菌学には細菌や微生物を生態学的に扱う立場も含まれており、発酵や醸造など微生物の有効利用や、分子生物学的な研究・応用もまた、細菌学で扱うテーマの一つである。

関連用語

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脚注

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  1. ^ 病原微生物学―基礎と臨床、荒川宜親、柳雄介、神谷茂 (編)、 東京化学同人 (2014/12/1)
  2. ^ 病原微生物学、矢野郁也、熊沢義雄、内山竹彦 (編)、東京化学同人 (2002/11/25)
  3. ^ 基礎病原微生物学、檀原宏文、田口文章 (著)、広川書店 (2005/8/25)
  4. ^ シンプル微生物学(改訂第6版)、小熊惠二、堀田博、若宮伸隆 (編)、南江堂 (2018/2/27)
  5. ^ 標準微生物学 第14版、神谷茂 (監修)、錫谷達夫、松本哲哉 (編)、医学書院 (2021/3/22)
  6. ^ 病原細菌学〈1〉総論、小林英一 (著)、桜楓社 (1980/10/1)
  7. ^ Blevins, Steve M.; Bronze, Michael S. (2010). “Robert Koch and the 'golden age' of bacteriology”. International Journal of Infectious Diseases 14 (9): e744–751. doi:10.1016/j.ijid.2009.12.003. PMID 20413340. 
  8. ^ 上山明博北里柴三郎 感染症と闘いつづけた男青土社、2021年( ISBN 9784791774128

外部リンク

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