自衛官候補生

自衛官候補生(じえいかんこうほせい、略称「自候生」)とは、陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊において、入隊後すぐに、自衛官となるために必要な基礎教育訓練が行われる課程の自衛隊員のことである。

概ね3ヶ月程度の「自衛官候補生」としての教育の後に、それぞれ「二等陸海空士」に任官される。

身分は、特別職国家公務員である防衛省の職員であり自衛隊員であるが、防衛省職員の定員外であり[1]、自衛官ではない[2]

自衛隊」の基幹「下士官」たる「曹」への昇進を目指せる「一般曹候補生」とは、各「二等陸海空士」「一等陸海空士」「陸海空士長」にあるものである。

地位

[編集]
自衛官候補生(120教育大隊)迷彩服3型が貸与されている

以前は陸自の新隊員前期教育、空自の新隊員教育、海自の練習員期間中の隊員として、防衛大学校の学生や、陸上自衛隊高等工科学校の生徒と同じく階級を設けず、教育終了時をもって自衛官としての身分階級を付与するとしていたものを、2009年10月3日に公布された防衛省設置法等の一部を改正する法律に基づき、2010年7月1日より施行され、2011年34月入隊の隊員から開始された。

自衛隊法第41条の規定は、「隊員の採用はすべて条件附のものとし、その隊員がその職において6月を下らない期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに正式のものとなる。」と定められているが、これは自衛官候補生が、階級外であることとは直接関係しない。自衛官候補生の期間は、3か月であるから任用されてもなお、通算で6月が経過するまでは条件附であることは、変わらない。

応募

[編集]
  • 条件
採用予定月に18歳以上33歳未満の日本国籍を有する者。
  • 試験
筆記試験・口頭試験・適性試験・身体検査等が実施される。
応募試験は通年で行われており、概ね各都道府県ごとに設置されている自衛隊地方協力本部で実施される。
陸海空合計で年間平均計数万人の応募に対し計数千人の合格採用で推移している。

宣誓

[編集]
入隊式に臨む自衛官候補生

自衛官候補生は、自衛隊法第53条及び自衛隊法施行規則第39条の2に則り、入隊時に以下のような宣誓書に署名捺印をすることが義務付けられている。

私は、自衛官候補生たるの名誉と責任を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、知識をかん養し、政治的活動に関与せず、専心自衛官として必要な知識及び技能の修得に励むことを誓います。

期間

[編集]
戦闘訓練中の自衛官候補生
突撃の訓練をする自衛官候補生

自衛官候補生の期間は、3か月を基準として教育訓練に要する期間を勘案して防衛省令で定めることとされており、自衛官の定数外となる。候補生教育終了時に本人の希望と適性に基づき職種が決定され、その後、各部隊に臨時設置される教育隊(陸)、職種学校(陸)または術科学校(空)において専門教育を受けた後、それぞれの部隊に配属される。なお、航空自衛隊の場合、術科学校の定員等の関係で、先に部隊に配属されてから術科学校での教育を受ける場合もあり、直配と呼ばれる。海上自衛隊の場合、約3か月の自衛官候補生課程の修了後2等海士に任命され、約1カ月の練習員課程を修了してそれぞれの部隊に配属される。なお音楽隊員を希望する者は採用前に、各音楽隊で実施される部隊説明会に参加し、実技試験を受ける必要がある。海空の操縦士は航空学生防衛大学校・一般大学卒に限定しているが、陸自では陸曹航空操縦学生により自衛官候補生出身でも操縦士へコース変更が可能。

任期制自衛官として任官された隊員の初任期は自衛官候補生の期間を含め陸は2年、海・空自衛隊は3年(2任期目以降は現行任期制隊員と同じく陸海空いずれも2年)となる。

このほか、候補生教育の終了時に「任用一時金」(1任期目の任期満了手当の一部に相当)が支給されるが、自衛官に任官後1年3か月未満で退職した場合にはこれを償還しなければならない(旧来の任期制隊員にあっては退職手当の一部を「前払い」することや任期途中で依願退職した際の償還義務は設けられていなかった)。また、この任用一時金は「雑収入」に該当するため、年末調整の対象ではなく、その額が22万1千円(防衛省の職員の給与等に関する法律施行令第19条の2第1項)であり、雑所得について確定申告を要する額の20万円を超えているために、個人で確定申告を行い納税しなければならない。

自衛官候補生の間は階級章の代わりに「2士」と同サイズの台地に円で囲まれた桜章(このデザインは曹候補者き章(乙)に例あり)が縫い込まれたき章(自衛官候補生章)を、服務細則に基づく階級章と同様の位置に縫い付ける。

曹に昇任しないままでも、最長で7年程度勤務できる[3]

教育担任部隊

[編集]
武器授与式において、64式小銃を拝領する自衛官候補生

処遇等

[編集]
  • 自衛官候補生手当(146,000円/月:2023年6月現在[5]
    2012年2月29日に成立した「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律」第19条第6項の規定により、同年4月から2年間約4.77%減額されていた[6][7]。この減額割合は、国家公務員一般の減額率の9.77%より5%分少ない。
  • 任用一時金(221,000円): 自衛官候補生課程を修了し2士に任官する際に支給され、任官辞退した者(除隊)には支給されない。税制上は雑所得となる。従って年末調整の対象ではなく、その額が、雑所得について確定申告を要する額の20万円を超えているために、個人で確定申告を行い納税しなければならない。

また、任官から1年3か月未満で中途退職する場合は勤務期間に応じ以下の割合で償還しなければならない。

    • 任官から3か月未満: 全額
    • 3か月以上7か月未満: 支給額の75%
    • 7か月以上11か月未満: 支給額の50%
    • 11か月以上1年3か月未満: 支給額の25%

脚注

[編集]
  1. ^ 自衛隊法第36条第4項
  2. ^ 自衛隊法において、自衛官とは別個の存在として規定されている(第29条第1項・第33条)。
  3. ^ (株)扶桑社 出版 小笠原理恵 著 自衛隊員は基地のトイレットペーパーを自腹で買う
  4. ^ 自衛隊ニュース2017年5月1日”. 防衛ホーム新聞社. 2018年4月14日閲覧。
  5. ^ 防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和27年法律第266号)第24条の2 - e-Gov法令検索サイト
  6. ^ 国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律について - 総務省ホームページ
  7. ^ 国家公務員給与削減、特例法成立 - 朝雲新聞web

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]