雪楼集
『雪楼集』(せつろうしゅう)は、14世紀に成立した元代の程鉅夫(1249年-1318年)による文集。題名は程鉅夫が雪楼と号したことに拠る。
概要
[編集]程鉅夫は建昌軍南城県の出身で、叔父の知建昌軍の程飛卿がモンゴル軍に降服したため、以後モンゴル帝国(大元ウルス)に仕えるようになった人物であった[1]。本来は文海という名であるが、武宗クルク・カアンが即位した後、その本名「カイシャン」の漢字表記「海山」を避諱して字の「鉅夫」で知られるようになる[1]。
程鉅夫の文集は息子の程大本が編集した後、まず門人の掲傒斯が校正して45巻として完成したとされる[1]。その後、元末の1358年(至正18年)に掲傒斯の子の掲汯と程距夫の孫の程世京によって重訂され、30巻本の内10巻(うち玉堂類藁が9巻、奏議が1巻)がまず刊行された[1]。しかし元末明初の混乱の中で版木は消失し、1396年(洪武29年)に至って先に刊行された刊本(10巻)と残りの写本(うち巻11から25までが文で、巻26から30までが詩・楽府)をまとめ直した30巻本が刊行された[1]。
これ以後刊刻は途絶えていたが、1910年(宣統2年)に陽湖の陶湘が洪武刊本を用いて再刊し、1925年に『楚国文憲公雪楼程先生文集』公開した。この刊本が『元代珍本文集彙刊』に影印として収録され、現在でも用いられている[1]。
内容
[編集]巻目 | 巻題 | 節目 |
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巻1 | 玉堂類藁一(制詔・諭・冊文・祭文・齋意・青詞・祝文) | |
巻2 | 玉堂類藁二(制詞) | |
巻3 | 玉堂類藁三(制詞) | |
巻4 | 玉堂類藁四(制詞・表・牋・致語) | |
巻5 | 玉堂類藁五(勅賜碑) | 平雲南碑、拂菻忠献王神道碑、趙氏先廟碑、応昌路報恩寺碑、魏国趙氏先徳之碑、匡氏褒徳之碑、均州武当山万寿宮碑 |
巻6 | 玉堂類藁六(勅賜碑) | 大元国学先聖廟碑、林国武宣公神道碑、武都智敏王述徳之碑、海雲簡和尚塔碑、靳同知墓碑、雲国公楊氏世徳碑、袁州大仰山重建太平興国禅寺碑 |
巻7 | 玉堂類藁七(勅賜碑) | 南陽書院碑、武都忠簡王神道碑、陳氏先徳之碑、姚長者碑、涼国敏慧公神道碑、信都常忠懿王神道碑、袁州普庵禅師塔銘 |
巻8 | 玉堂類藁八(勅賜碑) | 梁国何文正公神道碑、秦国昭宣公神道碑、嵩山少林寺裕和尚碑、太原宋氏先徳之碑、秦国先墓碑 |
巻9 | 玉堂類藁九(勅賜碑・記・応制詩・賛) | 薛庸斎先生墓碑、秦国文靖公神道碑、大護国仁王寺恒産之碑、貞文先生掲君之碑、昌平県新治記、旃檀仏像記、応制詩賛、滕王閣、龍舟、金碧山水春堂宴浜図、蜻蜓、莎鶏蜥蜴、𪕔䑕食栗、題何澄界画三首、阿房宮、昆明池、李秋谷画像賛、孝経直解序〈奉教撰〉 |
巻10 | 奏議存藁 | 吏治五事、取会江南仕籍、通南北之選、置考功歴、置貪贓籍、給江南官吏俸銭、民間利病、議安南、学校、好人、公選、論時相、論行省、議災異、敬天、尊祖、清心、持体、更化、銅銭 |
巻11 | 記 | 遠斎記、諸公題詠附、遠斎銘閻復〈子静〉、張仲黙必葺軒記、冲虚通妙先生王君祠堂記、此君軒記、寧徳県重脩学記、漳州路重建学記、台州路学講堂記、建昌路重建太平橋記、道一堂記、福寧州学記、閩県学記、同文堂記、金谿県庁壁記、通真観記、高峯書院記、崇陽県社壇記、鄂州路新社壇記、武昌路記、重修南陽書院記、又題名記、靚淵堂記 |
巻12 | 記 | 岳州路三皇廟記、黄龍寺修造記、武昌路学修造記、忠武侯祠亭記、重建乖崖祠記、通城県社壇記、停雲軒記、南湖書院記、南城県重修学記、龔氏舎田記、主一書院記、松臺記、正中堂記、青田書院記、太一観記、本善堂記、歴山書院記、安仁県新公署記、万里窓記、禅智院記、鹿泉先生賈公祠堂記 |
巻13 | 記 | 漢川県学記、黄龍仏殿記、武昌路観音閣記、疎山白雲禅寺修造記、承慶堂記、昇平橋記、致楽堂記、遺音堂記、応州覚興寺長明燈記、永新州医学祭田記、虎林山大明慶寺重建仏殿記、太和州重修快閣記、古衛城崔府君廟里門記、婺源山万寿霊順五菩薩廟記、廬山重建広福観記、杏山薬室記、楊氏先塋記、魯斎書院記、東菴書院記、溥済廟記、宜遠楼記 |
巻14 | 序・引 | 王寅夫詩序、上賜特穆爾参政海青詩序、楊彦寛御史心遠堂詩序、送黄済川序、盧疎斎江東藁引、歳寒亭詩序、掲曼碩詩引、送陸如山帰青田創先祠序、双峯先生文集序、南陽智夫人劉氏貞節詩序、送向省吾序、送范晋教授江陵序、送僉憲郭安道遷部江西序、送虞徳常序、送朱芾序、送続好古赴監察御史序、送憲幕仇信卿赴臺掾序、大徳重判元豊類藁序、段郁文詩序、送曹仲堅主閩県簿序、送王謙道遠遊序、送王敬甫都事帰省詩序、解安卿父八十賀章後序、送楊彦寛謝事東帰序、送蕭従周序、謝伯琰親年八十詩引、送毛淵巨源知沔陽府序、送喬達之守東平序、宗鏡録詳節序 |
巻15 | 序・引 | 贈欧陽南陽序、送雲伯譲序、高大有積慶堂詩序、紹運詳節序、黎景高詩序〈安南人〉、贈彭斯立序、歴代帝王紀年纂要序、王氏孝節序、温国司馬文正公墓碑老杏図詩序、送布哷斉平章北還詩序、代白雲山人送李耀州帰白兆山建長庚書院序、用晦和尚語録序、龍虎山志序、欧陽南陽手藁序、送白雲平章序、続孟伸蒙子序、送李善甫知沁州序、厳元徳詩序、忍恕堂詩序、李氏忠節序、温州路達嚕噶斉拝特穆爾徳政序、李雪菴詩序、李仲淵御史行斎謾藁序、章徳元近藁序、贈王太医序、送艾庭梧序、胡彦承文藁序、送王克誠引、里氏慶源図引、送高伯椿大年尹京山序、送郭元坦序、王楚山詩序 |
巻16 | 碑銘 | 興化路重修夫子廟碑、南剣路総管府判官忠都君墓誌銘、済南公世徳碑、楊氏先塋碑、曾履祥墓誌銘、故建昌路儒学教授蔣君墓誌銘、忠烈廟碑、故将仕佐郎建昌路儒学教授呉君墓誌銘、何徳載墓誌銘、監察御史蕭則平墓誌銘、何子宏墓誌銘、張宗漢夫人葉氏墓誌銘 |
巻17 | 碑銘 | 翰林侍講学士張公墓誌銘、僉福建提刑按察司事曾公墓誌銘、故同知寧国路総管府事楊君墓誌銘、楊漢卿墓誌銘、故紹興路儒学教授蔣君墓誌銘、故徽政院中議田君墓誌銘、純徳郭先生墓碣、張氏宗会亭碑、冀国王忠穆公墓碑、楊隠君墓銘、集賢直学士同僉太医院事欧陽君墓誌銘、太平路儒学教授徐君墓誌銘、臨淮県尹蔣君墓銘、鄭真人碑、郭徳基阡表 |
巻18 | 碑銘 | 大元河東郡公布都公神道碑銘、故登仕郎呉君墓誌銘、黄伯雲墓誌、兪景隆墓誌銘、鄧徳光墓誌銘、県尹鄭君墓誌銘、勇遂侯碑、藁城王公墓誌銘、故登仕郎蔚州安定県主簿馮君墓碣、婁道輿墓誌銘、黄志尹墓誌銘、大慶寿寺大蔵経碑、徐真人道行碑、葉隠君墓表、処士聶君墓誌銘 |
巻19 | 碑銘 | 趙国公田府君神道碑銘、故綏寧令王君墓表、甯求己夫人章氏墓誌銘、謝元礼墓誌銘、大慈化禅寺大蔵経碑、魏郡伯申公神道碑、莘県楊氏先塋碑、彭城郡献穆侯劉府君神道碑銘、清州高氏先徳之碑、揚州重建玄妙観碑、洞陽万寿宮碑 |
巻20 | 碑銘 | 彭城郡劉文靖公神道碑銘、福州西禅寺用晦暉和尚塔銘、河東郡公布都公夫人李氏墓碑、故国子助教李性学墓碑、羅壮墓誌銘、元都水監羅府君神道碑銘、自観先生王君墓碣、静山処士陳君墓誌銘、海北海南道宣慰使馬府君神道碑、程某夫人斉氏墓誌銘、邠州大開元寺喜和尚塔銘、呉君載墓誌銘、周仲芳墓誌銘、故同知処州路総管府事袁府君神道碑銘、掲応強妻何氏墓誌銘、許幾先墓碣 |
巻21 | 碑銘 | |
巻22 | 碑銘 | 洛西書院碑、故翰林待制権君墓誌銘、河中郭氏新塋碑、趙儀可墓誌銘、故砲手軍総管克哷君碑銘、楚清先生墓表、呉隠君墓誌銘、濮州臨清県主簿武先生墓表、僉広西提刑按察司事胡公墓碣、王氏阡表、艾君哲阡表 |
巻23 | 銘・箴・賛・説・祭文・祝文・書・啓 | |
巻24 | 題跋 | |
巻25 | 題跋・雑著 | |
巻26 | 詩 | |
巻27 | 詩 | |
巻28 | 詩 | |
巻29 | 詩 | |
巻30 | 詩・楽府 |
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 植松正「雪楼集」『中国史籍解題辞典』燎原書店、1989年