飛行機―あるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったか
「飛行機―あるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったか」(ひこうき あるいはかれはいかにしてしをよむようにひとりごとをいったか)は、村上春樹の短編小説。
概要
[編集]初出 | 『NADIR』1987年秋号[1] |
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『ユリイカ臨時増刊 総特集村上春樹の世界』1989年6月号 【加筆】 | |
収録書籍 | 『TVピープル』(文藝春秋、1990年1月) |
『ユリイカ臨時増刊』掲載時の挿絵は宇野亜喜良。
英訳
[編集]タイトル | Aeroplane: Or, How He Talked to Himself as If Reciting Poetry[2] |
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翻訳 | ジェイ・ルービン |
初出 | 『ザ・ニューヨーカー』2002年7月1日号[3] |
収録書籍 | 『Blind Willow, Sleeping Woman』(クノップフ社、2006年7月) |
あらすじ
[編集]彼は二十歳になったばかりだった。当時女は彼より七つ歳上で、結婚していて、子供までいた。彼女の夫は旅行会社に勤めていて、月の半分近くは家を留守にしていた。夫はオペラが好きらしく、家にはヴェルディやらプッチーニやらドニゼッティやらリヒャルト・シュトラウスやらの三枚組、四枚組の分厚いレコードが、作曲家別に整理されて並んでいた。
五月の昼下がり、その日もやはり彼女は泣いていた。泣き終わったあと二人は交わい、彼は浴室に行って先にシャワーを浴びた。浴室から戻ると女は彼に訊ねた。「ねえ、あなた昔からひとりごとを言う癖があったの?」
彼は首を振り、ひとりごと言ってるなんて気づきもしなかったと答えた。女はメモ用紙を手に取り、ボールペンを使ってそこに何かを書き始めた。「私、ちゃんと全部そらで覚えているのよ。これが飛行機についてのひとりごと」
彼は声を出してそれを読んでみた。
その少しあとで彼女はまた泣いた。一日に彼女が二度泣くなんて、それが初めてだった。そしてそれが最後だった。
脚注
[編集]- ^ 『NADIR』(ナディール)は、1986年4月に創刊された『rag』を前身とするビジュアル雑誌。
- ^ 雑誌掲載時のタイトルは "Airplane"。
- ^ FICTION AIRPLANE BY HARUKI MURAKAMI. July 1, 2002The New Yorker