齧歯目

齧歯目
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
下綱 : 有胎盤類 Placentalia
巨目 : 北方真獣類 Boreoeutheria
上目 : 真主齧類 Euarchontoglires
大目 : グリレス類 Glires
中目 : 単歯類 Simplicidentata
: 齧歯目 Rodentia
学名
Rodentia Bowdich, 1821[1]
和名
齧歯目[2]

齧歯目(げっしもく、Rodentia)は、哺乳綱に分類される。日本ではネズミ目とも呼ばれる[3]。現在のところ地球上で最も繁栄している哺乳類で、南極大陸を除く全ての大陸、およびほぼ全ての島に生息する。

特徴

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齧歯類の頭骨断面のスケッチ。切歯は一生伸び続ける。
齧歯類の頭骨断面。切歯と臼歯の間に歯隙がある。

齧歯類の動物は、物をかじるのに適した歯と顎を持ち、上顎・下顎の両方に伸び続ける2つの門歯があり、犬歯を持たないことが特徴である[4][5]。この門歯は物をかじることで次第に削れてゆき、長さを保っている。漢語名齧歯目、および学名「Rodentia」はラテン語で「かじる(齧る)」という意味のrodereから来ている。歯は木を削ったり堅果類の皮をかじったり身を守ったりするために使われる。齧歯目の動物の多くは、種子などの植物質を食料とするが、魚や昆虫を主食とする種もわずかに存在している。なお他の哺乳類とは異なり、齧歯目では嘔吐反射が見られない[6]

ねずみ算」という言葉を生んだほど非常に繁殖力が強い種が多く[4]南極大陸ニュージーランドを除く世界各地に自然分布している。2005年時点の分類で現生種は2277種(481属33科)で現生哺乳類の42%を占め、絶滅した化石種も含めると1200属以上、53科にもなる[7]オーストラリアを除く各地域では、種類数・個体数ともに多く、外形・習性変化も多様性に富んでいる。約2400種が知られており、全4千数百種程とされる哺乳類の種数の半分を占める最大のグループである。

概して小さいものが多く、なかでもアフリカンドワーフマウスは体長6cm、体重7g程度しかない。一方、大きいものでは、現生種最大のカピバラが45kg程度である。

化石種としては、1999年南米ベネズエラで全身化石が発見された第三紀後期のフォベロミス・パッテルソニ Phoberomys pattersoni が最大で、体高 1.3 m(尾まで含めた体長は3 m)、体重 700 kg程度あったと考えられている[8]

現生種最大の齧歯類 カピバラ

分類

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兎形目の姉妹群と考えられており、現生ではこの2目でグリレス類Glires)を構成する[9]。以前は兎形目を本目に含めることもあった[1]

伝統的にはリス形亜目・ネズミ形亜目・ヤマアラシ形亜目の3亜目とする分類や、咬筋の発達の仕方による原齧歯型・リス型・ヤマアラシ型・ネズミ型の4分類[10]、下顎の形態からリス顎亜目Sciurognathi(原齧歯形下目Protrogomorpha・リス形下目Sciuromorphaなどを含む)・ヤマアラシ顎亜目Hystricognathi(デバネズミ形下目Bathyergomorpha・テンジクネズミ形下目Caviomorphaなどを含む)の2亜目とする分類[11]もあったが、2005年に発表された分類体系では以下の5亜目とされた[1]。和名は、川田ほか (2018) に従う[2]

一方で2019年には、分子系統解析によりウロコオリス形亜目・ビーバー形亜目・ネズミ形亜目が単系統群とすることが支持されたことでこれらが下目相当とされ、Anomaluromorphi・Castorimorphi・Myomorphiの3下目を含める亜目としてSupramyomorphaが提唱された[12]。同年にはリス形亜目に相当する分類群に対してEusciuridaの学名が提唱された[13]。以下の分類は、Flynn et al. (2019) に従う[13]

  • 亜目 Eusciurida(以前のリス形亜目を含む)
  • 亜目 Supramyomorpha(以前のウロコオリス形亜目、ビーバー形亜目、ネズミ形亜目を含む)
  • ヤマアラシ形亜目 Hystricomorpha

下位系統

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系統はFabre et al. (2012)[14]、和名は注記がない限り川田ほか (2018)[2]

齧歯目
リス形亜目

ヤマネ科 Gliridae

リス下目[15]

ヤマビーバー科 Aplodontidae

リス科 Sciuridae

Sciurida
Sciuromorpha
ヤマアラシ形亜目
グンディ形下目

グンディ科 Ctenodactylidae

ディアトミス科[16] Diatomyidae

Ctenodactylomorpha
ヤマアラシ顎下目

ヤマアラシ科 Hystricidae

Bathyergomorpha

デバネズミ科 Bathyergidae

アフリカイワネズミ科 Petromuridae

ヨシネズミ科 Thryonomyidae

テンジクネズミ型類[16]
テンジクネズミ上科[11]

アメリカヤマアラシ科 Erethizontidae

パカ科 Cuniculidae

テンジクネズミ科 Caviidae

アグーチ科 Dasyproctidae

Cavioidea
チンチラ上科[11]

パラカナ科 Dinomyidae

チンチラ科 Chinchillidae

Chinchilloidea
デグー上科[11]

チンチラネズミ科 Abrocomidae

アメリカトゲネズミ科 Echimyidae

ツコツコ科 Ctenomyidae

デグー科 Octodontidae

Octodontoidea
Caviomorpha
Hystricognathi
Ctenohystrica
ビーバー形亜目
Castoroidea

ビーバー科 Castoridae

ホリネズミ上科[11]

ポケットマウス科 Heteromyidae

ホリネズミ科 Geomyidae

Geomyoidea
Castorimorpha
ウロコオリス形亜目

ウロコオリス科 Anomaluridae

トビウサギ科 Pedetidae

Anomaluromorpha
ネズミ形亜目
トビネズミ上科[11]

トビネズミ科 Dipodidae

Dipodoidea
ネズミ上科[11]

トゲヤマネ科 Platacanthomyidae

メクラネズミ科 Spalacidae

カンガルーハムスター科 Calomyscidae

アシナガマウス科 Nesomyidae

キヌゲネズミ科 Cricetidae

ネズミ科 Muridae

Muroidea
Myomorpha
Rodentia

齧歯類と伝染病

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齧歯類は、伝染病の生物学的な媒介者となることがある。ペストの例は、公衆衛生が発達した2000年代においても世界的に年間数千人規模の患者が発生し、時にはアウトブレイクも発生するなど病気の撲滅が達成されていないが、これは野生のネズミ目が広大な地域に分布し、対策が難しいためである[17]

脚注

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  1. ^ a b c Michael D. Carleton and Guy G. Musser, “Order Rodentia,” In Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.), Mammal Species of the World (3rd ed.), Volume 2, Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 745-752.
  2. ^ a b c 川田伸一郎他 「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  3. ^ 田隅本生 「哺乳類の日本語分類群名,特に目名の取扱いについて 文部省の“目安”にどう対応するか」『哺乳類科学』第40巻 1号、日本哺乳類学会、2000年、83-99頁。
  4. ^ a b 齧歯類とは”. コトバンク. 2020年12月27日閲覧。
  5. ^ 齧歯目とは”. コトバンク. 2020年12月27日閲覧。
  6. ^ Bininda-Emonds OR, Cardillo M, Jones KE, MacPhee RD, Beck RM, et al. (2007) The delayed rise of present-day mammals. Nature 446: 507–512. doi: 10.1038/nature05634
  7. ^ 冨田幸光『新版 絶滅哺乳類図鑑』伊藤丙雄・岡本泰子イラスト、丸善出版、2011年、120頁。
  8. ^ Sanchez-Villagra et al. (2003)
  9. ^ 西岡佑一郎・楠橋直・高井正成「哺乳類の化石記録と白亜紀/古第三紀境界前後における初期進化」『哺乳類科学』第60巻 2号、日本哺乳類学会、2020年、251-267頁。
  10. ^ 冨田幸光『新版 絶滅哺乳類図鑑』伊藤丙雄・岡本泰子イラスト、丸善出版、2011年、121-123頁。
  11. ^ a b c d e f g 遠藤秀紀・佐々木基樹「哺乳類分類における高次群の和名について」『日本野生動物医学会誌』第6巻 2号、日本野生動物医学会、2001年、45-53頁。
  12. ^ Guillermo D'Elía, Pierre-Henri Fabre & Enrique P. Lessa, Rodent systematics in an age of discovery: recent advances and prospects, Journal of Mammalogy, Volume 100, Issue 3, American Society of Mammalogists, 2019, Pages 852–871.
  13. ^ a b Lawrence J. Flynn, Louis L. Jacobs, Yuri Kimura & Everett H. Lindsay, “Rodent Suborders,” Fossil Imprint, Volume 75, Issue 3-4, National Museum, 2019, Pages 292–298.
  14. ^ Fabre (2012). “A glimpse on the pattern of rodent diversification: a phylogenetic approach”. BMC Evolutionary Biology 12: 88. doi:10.1186/1471-2148-12-88. PMC 3532383. PMID 22697210. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3532383/. 
  15. ^ 日本哺乳類学会 種名・標本検討委員会 目名問題検討作業部会「哺乳類の高次分類群および分類階級の日本語名称の提案について」『哺乳類科学』第43巻 2号、日本哺乳類学会、2003年、127-134頁。
  16. ^ a b 冨田幸光『新版 絶滅哺乳類図鑑』伊藤丙雄・岡本泰子イラスト、丸善出版、2011年、127頁
  17. ^ ペスト:地域別罹患率・死亡率の検討-2004年~2009年 CDC Travelers' Health, Outbreak Notice(2010年2月18日)2017年3月4日

参考文献

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  • Marcelo R. Sánchez-Villagra, Orangel Aguilera, Inés Horovitz (9 2003). “The Anatomy of the World's Largest Extinct Rodent”. Science 301 (5640): 1708-1710. doi:10.1126/science.1089332. 

関連項目

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