P-行列
数学の分野におけるP-行列(P-ぎょうれつ、英: P-matrix)とは、すべての主小行列式が0より大きい複素正方行列のことである。これに関連する概念として、すべての主小行列式が0以上である P0-行列がある。P0-行列の類はP-行列の類の閉包である。
固有値
[編集]ケロッグの定理によれば、P-行列および P0-行列の固有値は、以下に述べる意味で、負の実軸についての楔型の領域から離れている:
- をn次元P-行列の固有値としたとき、次が成立する。
- , , をn-次元 P0-行列の固有値としたとき、次が成立する。
注意
[編集]正則なM-行列の類は、P-行列の類の部分集合である。P-行列かつZ-行列であるような全ての行列は、正則なM-行列である。十分行列(sufficient matrix)の類は、P-行列の別の一般化である。[1]
ヤコビ行列式がP-行列であるような関数は、空間 Rn の任意の直交領域上で単射である。
特に安定性理論における関連概念としては、P(-)-行列(しばしば N−P-行列とも呼ばれる)が挙げられる。-A がP-行列となるような行列A のことを、P(-)-行列と呼ぶ(P0-行列についても同様)。スペクトル集合はσ(A )=-σ(-A ) であることより、それらの行列の固有値は正の実軸から離れている。
脚注
[編集]- ^ Csizmadia, Zsolt; Illés, Tibor (2006). “New criss-cross type algorithms for linear complementarity problems with sufficient matrices” (pdf). Optimization Methods and Software 21 (2): 247–266. doi:10.1080/10556780500095009. MR2195759 .
参考文献
[編集]- Csizmadia, Zsolt; Illés, Tibor (2006). “New criss-cross type algorithms for linear complementarity problems with sufficient matrices” (pdf). Optimization Methods and Software 21 (2): 247–266. doi:10.1080/10556780500095009. MR2195759 .
- David Gale and Hukukane Nikaido, “The Jacobian matrix and global univalence of mappings”, Math. Ann. 159:81-93 (1965) doi:10.1007/BF01360282
- Li Fang, “On the Spectra of P- and P0-Matrices”, Linear Algebra and its Applications 119:1-25 (1989)
- R. B. Kellogg, “On complex eigenvalues of M and P matrices”, Numer. Math. 19:170-175 (1972) doi:10.1007/BF01402527