イソギク
イソギク | |||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Chrysanthemum pacificum Nakai[1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
イソギク |
イソギク(磯菊、学名: Chrysanthemum pacificum Nakai[1])は、キク科キク属に分類される多年草の海浜植物の1種[5][6][7][8][9]。シノニムがChrysanthemum marginatum Matsum., excl. syn.[2]、Dendranthema pacificum (Nakai) Kitam.[3]、Ajania pacifica (Nakai) K.Bremer et Humphries[4]。属名:Chrysanthemumはラテン語のchrysos(金の)anthemon(花)を意味し[7]、種小名:pacificumは太平洋を意味する[8]。和名は磯にはえるキクであることに由来する[9]。古い和名が岩菊、泡菊[6]。古くから栽培され、花が小さいので菊人形の着物によく使われている[5]。観賞植物として多く栽培されている[10]。
特徴
[編集]細長い地下茎を伸ばして[6]、四方に広がる[5]。草丈は高さ30-40 cm、茎は群れて生え[7]、曲がって斜上し、上部に銀白色の毛があり[7]、上部まで密に葉をつける[6]。葉は厚く、長さ4-8 cm、幅1.5-2.5 cmの倒披針形-倒卵形で、上半部はやや浅く裂けるかまたは切れ込みがなく[7]、基部はくさび形[5]。表面はほとんど無毛[8]、緑色で腺点があり、縁は白く、裏面は丁字状毛が密生し銀白色[5]。頭花は黄色で密集して多数散房状につき[7]、黄色の筒状花だけからなり、直径約5 mm[5]。縁の雄花の花冠は長さ3 mm、先は3-4歯があり、中の両性花の長さは3.5 mm、先は5歯がある[6]。総苞は半球形で、総苞片は3列に並ぶ[5]。外片は卵形で内片より短く、白い毛がある[5]。開花時期は10-12月[5][9]。果実はそう果で、長さ1.5 mm、5肋がある[6]。
- 葉は厚く、倒披針形-倒卵形
- 頭花は黄色で密集して多数散房状につく
染色体数は2n=90で[6]、日本産のキク属の中で最も多くの染色体を持つ[10]。花にフラボノイド、精油の成分があり、解熱、解毒、鎮痛、消炎(風邪、胃腸炎、高血圧、湿疹)などの効用がある[11]。自殖能が小で、栄養生殖能が大の特性をもっている[12]。地下茎の発達が特に盛んで、1個体で数 m2の地上部を構成することが多い[12]。発芽能のある多数のそう果が主として他家受粉で作られ、この軽い果実が遠隔の地に分散される[12]。栽培のキクとよく交配して雑種が自然にあり、それが昔から栽培されていた[6]。イエギクとの雑種で白い舌状花を混生するものはハナイソギクと呼ばれている[7][9]。御蔵島では、本種に寄生するキクヒメタマバエの虫えいであるイソギクハイボフシとヨモギタマバエ属の1種(Rhopalomyia sp.)の虫えいであるイソギクメナガツボブシが確認されている[13]。
分布と生育環境
[編集]日本の紀伊半島の固有種で、千葉県犬吠埼から、東京都、神奈川県、静岡県御前崎まで[5][6]と愛知県渥美半島[14]の太平洋側岸、伊豆諸島、京都府丹後地方、島根県、山口県の日本海側[15]に分布する。日本海側の分布については、人為的なもの(逸出)とされる[6]ことがあるがその根拠は不明[15]。鳥島が南限[12]。千葉県の鋸山(標高329.4 m)では、海岸から山頂まで本種が断続的に分布している[16]。
近縁種との識別ポイント
[編集]そっくりの姿で、花がやや大きいシオギク (D. shiwogiku (Kitam.) Kitam.) は四国の徳島県から高知県の海岸に産する。キノクニシオギク(キイシオギク、Chrysanthemum kinokuniense (Shimot. et Kitam.) H.Ohashi et Yonek.)は、両者の中くらいの大きさで紀伊半島南側の海岸線に分布する。
種の保全状況評価
[編集]日本では環境省による国レベルのレッドリストの指定を受けていないが[17]、以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている。富士箱根伊豆国立公園で指定植物のひとつに選定されている[18]。
脚注
[編集]- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “イソギク”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年8月17日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “イソギク”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年8月17日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “イソギク”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年8月17日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “イソギク”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年8月17日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 門田 (2013)、524頁
- ^ a b c d e f g h i j 佐竹 (1981)、165頁
- ^ a b c d e f g h 林 (2009)、70頁
- ^ a b c 牧野 (1982)、576頁
- ^ a b c d 高村 (2005)、324頁
- ^ a b “イソギク”. 筑波実験植物園. 2021年8月17日閲覧。
- ^ “イソギク”. 武庫川女子大学薬用植物園. 2021年8月17日閲覧。
- ^ a b c d 永海 (1953)、51頁
- ^ 徳田 (2012)、80頁
- ^ a b “レッドデータブックあいち2020、イソギク” (PDF). 愛知県. pp. 182. 2021年8月17日閲覧。
- ^ a b c “京都府レッドデータブック2015、イソギク”. 京都府. 2021年8月17日閲覧。
- ^ 永海 (1953)、55頁
- ^ “環境省レッドリスト2019の公表について”. 環境省. 2021年8月17日閲覧。
- ^ “イソギク”. 八丈植物公園・八丈ビジターセンター. 2021年8月17日閲覧。
- ^ “茨城県版レッドデータブック<植物編>2012年改訂版” (PDF). 茨城県. pp. 245. 2021年8月17日閲覧。
参考文献
[編集]- 門田裕一、畔上能力、平野隆久『野に咲く花』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2013年3月30日。ISBN 978-4635070195。
- 下斗米直昌、安達貞夫、益森静生「キノクニシオギク(Chrysanthemum shiwogiku var.kinokuniense)に関する細胞学的・形態学的および地理学的研究」『植物学雑誌』第81巻第964号、日本植物学会、1968年、498-505頁、doi:10.15281/jplantres1887.81.4981、NAID 130004213116。
- 高村忠彦『季節の野草・山草図鑑―色・大きさ・開花順で引ける』日本文芸社〈実用BEST BOOKS〉、2005年5月。ISBN 4537203676。
- 徳田誠、松尾和典、湯川淳一「伊豆諸島の御蔵島と青ヶ島で発見された虫えい」『昆蟲.ニューシリーズ』第15巻第2号、日本昆虫学会、2012年、75-84頁、doi:10.20848/kontyu.15.2_75、NAID 110009865351。
- 永海秋三「イソギクChrysanthemum pacificum NAKAI(2n=90)の分布の生態遺伝学的研究」『横浜国立大学理科紀要 第二類 生物学・地学』第2号、横浜国立大学、1953年3月、50-58頁、NAID 110006150027。
- 佐竹義輔、大井次三郎、北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本Ⅲ合弁花類』平凡社、1981年10月。ISBN 4582535038。
- 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421。
- 牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑』北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZE。 NCID BN00811290。全国書誌番号:85032603 。
外部リンク
[編集]- イソギクの標本 国立科学博物館標本・資料統合データベース
- イソギクの標本(1954年11月1日に神奈川県葉山で採集) 島根大学生物資源科学部デジタル標本館
- イソギクの標本(2009年11月29日に千葉県館山市坂足で採集) 千葉県立中央博物館
- イソギクの標本 牧野標本館
- イソギクの標本(1957年11月10日に神奈川県真鶴で採集) 東京大学学術資産等アーカイブズポータル
- イソギク 筑波実験植物園
- Chrysanthemum pacificum Nakai (The Plant List)