シグマ型コルベット
シグマ型コルベット | |
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「スルターン・イスカンダル・ムダ」 | |
基本情報 | |
建造所 | ロイヤル・シェルデ造船所 |
運用者 | インドネシア海軍 モロッコ海軍 メキシコ海軍 |
就役期間 | 2005年 - 現在 |
建造数 | 10隻 |
要目 | |
#諸元表を参照 |
シグマ型コルベット (Sigma class corvette) は、オランダが開発したコルベット/軽フリゲート。21世紀初頭より輸出市場に投入され、既にインドネシア、モロッコおよびメキシコが導入している。
設計
[編集]シグマ型は、オランダのロイヤル・シェルデ 造船所が、主として中小国への輸出向けに開発したコルベット/軽フリゲートである。シグマ(SIGMA)とは、Ship Integrated Geometrical Modularity Approach(モジュラー構造統合式艦艇)の略とされているが、シグマという語はギリシャ文字のΣを意味しており、この文字も数学で「総和」を表す記号として使われている。その名の通り、高度なモジュラー化設計を導入しており、モジュールの組み合わせを変えることで相手(国)のニーズに応じて容易にサブタイプを派生させ、製造コストの低減と需要や汎用性の増大を図っている。また、造船所の呼称によるタイプ・ナンバーは、全長と全幅がそのまま使われており、例えば全長91メートル、全幅13メートルのディポネゴロ級は9113型と呼ばれている。
船体
[編集]船型としては長船首楼型を導入しており、艦首から艦尾まで長大なナックルを設けている。船体には高度なステルス化設計が導入されている。
機関としてはディーゼルエンジンが採用されており、煙突2本が並列に配置されている。また、船首楼後方の後甲板は飛行甲板となっており、大型の9813型では、船首楼後部に格納庫を設けている。一方、小型のディポネゴロ級 (9113型) は格納庫を持たないが、必要に応じて機材を露天係止して運用したり他艦艇・他基地の機体を受け入れたりできるよう、飛行甲板は確保されている。
装備
[編集]現在までに発注されたシグマ型は、いずれも、同国製のTACTICOSを中核として、双方向の戦術データ・リンクを備えた戦闘情報システムを構築している。
艦載砲として、イタリア製オート・メラーラ 76 mm 砲1門を艦首に搭載する。オート・メラーラ 76 mm 砲は世界各国の艦艇に採用された軽量速射砲であり、ステルス性の高い多角形の砲塔を採用しているケースもあるが、本型には旧来の丸みを帯びた砲塔を搭載している[1]。
武装に関しては、小型のディポネゴロ級 (9113型)は比較的軽装備であり、艦対艦ミサイルはエグゾセ MM40連装発射機2基[1]のみ、個艦防空ミサイルはマトラ・テトラル個人携行地対空ミサイルを艦載化した簡易型で、捜索レーダーも、低空警戒/対水上兼用のMW-08のみとなっている。エグゾセ MM40は当初ブロック2が搭載されていたが、2019年9月に実施された演習において、ブロック3の射撃が初めて確認された[2]。
一方、モロッコ海軍向けの9813型は排水量2,100トンと、より大型でフリゲート並みのキャパシティを持つことから重装備となっており、本格的な個艦防空ミサイルであるVL MICA NAVALのVLSと、中型の哨戒ヘリコプターを搭載することが計画されている。また、いずれの型も、自艦装備の対潜兵装として、タレス UMS4132 キングクリップ船底装備ソナーとB515 3連装短魚雷発射管を搭載しており、短魚雷としては、典型的な輸出用魚雷であるA.244/S、または新型のMU90 インパクトを使用する。このように、フランスないし大陸ヨーロッパ製兵器の運用を主眼としている。
諸元表
[編集]9113型 | 9813型 | 10513型 | 10514型 | |
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満載 排水量 | 1,719 t[1] | 2,075 t | 2,335 t | 2,400 t |
全長 | 90.7メートル (298 ft) | 97.91メートル (321.2 ft) | 105.11メートル (344.8 ft) | 105.14メートル (344.9 ft) |
全幅 | 13.02メートル (42.7 ft) | |||
吃水 | 3.6メートル (12 ft) | 3.75メートル (12.3 ft) | ||
機関 | SEMT ピルスティク 20PA6Bディーゼルエンジン×2基 (合計出力 22,000bhp) | |||
スクリュープロペラ×2軸 | ||||
最大速力 | 28ノット (52 km/h) | 30ノット (56 km/h) | ||
巡航速力 | 18ノット (33 km/h) | |||
航続距離 | 4,000海里 (7,400 km) / 18ノット (33 km/h) | |||
兵装 | 76mm 単装速射砲×1基 | |||
デネル・ベクターG12 20mm単装機銃×4基 | 20mm単装機銃×2基 | |||
マトラ・テトラル 4連装近SAM発射機×2基 | VL-MICA短SAM VLS×12セル | |||
エグゾセMM40ブロック2 SSM連装発射筒×2基 | ||||
B515 3連装短魚雷発射管×2基 | ||||
艦載機 | ヘリコプター甲板のみ | ヘリコプター×1機 | ||
C4I | TACTICOS戦術情報処理装置+リンク Y | |||
レーダー | MW-08 低空警戒/対水上 | SMART-S Mk.2 3次元 | ||
スペリー ブリッジマスターE 航法レーダー | ||||
ソナー | キングクリップ 船底装備式 | |||
電子戦 | タレスDR-3000 電波探知装置 | タレス・ヴィジル電波探知装置 | n/a | |
ラカル・スコーピオン 電波妨害装置 | ||||
DLT-12T デコイ発射機 | SKWS デコイ発射機 |
同型艦一覧
[編集]インドネシア
[編集]艦番号 | 艦名 | 建造所 | 起工 | 進水 | 就役 |
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9113型 | |||||
365 | ディポネゴロ KRI Diponegoro | ロイヤル・シェルデ造船所 | 2005年 3月24日 | 2006年 9月16日 | 2007年 7月5日 |
366 | スルターン・ハサヌディン KRI Sultan Hasanuddin | 2005年 3月24日 | 2006年 9月16日 | 2007年 11月24日 | |
367 | スルターン・イスカンダル・ムダ KRI Sultan Iskandar Muda | 2006年 5月8日 | 2007年 11月24日 | 2008年 10月18日 | |
368 | フランス・カイシエポ KRI Frans Kaisiepo | 2006年 5月8日 | 2008年 6月28日 | 2009年 3月7日 | |
10514型 | |||||
331 | KRI Raden Eddy Martadinata | ロイヤル・シェルデ造船所 PT PAL インドネシア造船所 | 2014年 4月16日 | 2016年 1月18日 | 2017年 4月7日 |
332 | KRI Gusti Ngurah Rai | 2016年 1月18日 | 2016年 9月29日 | 2018年 1月10日 |
モロッコ
[編集]艦番号 | 艦名 | 建造所 | 起工 | 進水 | 就役 |
---|---|---|---|---|---|
10513型 | |||||
613 | ターリク・ベン=ズィヤード Tarik Ben Ziyad | ロイヤル・シェルデ造船所 | 2009年 4月15日 | 2010年 7月12日 | 2011年 9月10日 |
9813型 | |||||
614 | スルターン・ムーラーイ・イスマーイール Sultan Moulay Ismail | ロイヤル・シェルデ造船所 | 2009年 3月 | 2011年 2月4日 | 2012年 3月10日 |
615 | アラル・ベン・アブダラー Allal Ben Abdellah | 2009年 9月 | 2011年 10月4日 | 2012年 9月8日 |
メキシコ
[編集]艦番号 | 艦名 | 建造所 | 起工 | 進水 | 就役 |
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10514型 | |||||
101 | レフォルマドール ARM Reformador → ベニート・フアレス ARM Benito Juárez | ロイヤル・シェルデ造船所 メキシコ第20海軍省造船所 | 2017年 8月17日 | 2018年 11月23日[3] | 2018年 11月23日 |
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c 写真:福島良治/MINDEF SINGAPORE「ディテール拝見! シンガポール国際観艦式参加の珍しいフネブネ」 『世界の艦船』通巻868号(2017年11月号) 海人社 P.62-63
- ^ Ridzwan Rahmat (2019年9月9日). “Indonesia conducts first firing of Exocet MM40 Block 3 from SIGMA corvette”. janes.com. 2024年10月23日閲覧。
- ^ https://navaltoday.com/2018/11/23/mexican-navy-launches-arm-reformador/
参考文献
[編集]- 岡部いさく「再び甦るコルベット 見直される存在意義」『世界の艦船』第698集、海人社、2008年11月、76-81頁。
- 編集部「新型コルベットの技術」『世界の艦船』第698集、海人社、2008年11月、82-87頁。
- 福好昌治「コルベット輸出市場を概観する」『世界の艦船』第698集、海人社、2008年11月、88-91頁。
- Royal Schelde (2004年). “Schelde Naval Patrol Series” (JPG) (英語). 2009年9月3日閲覧。
- Joris Janssen Lok/Defense Technology International (2009年). “Schelde Sees Bright Future for Sigma Modular Ship” (HTML) (英語). 2009年9月3日閲覧。
関連項目
[編集]- ドイツのブローム・ウント・フォスが設計した輸出用フリゲート。艦体にもいくつかの派生形があるほか、兵装がユニット化されている。
- ドイツのブローム・ウント・フォスとホヴァルツヴェルケが設計した輸出用軽フリゲート/コルベット。モジュール設計を導入しており、本型とほぼ同大である。