ムスダン (ミサイル)
ムスダン | |
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種類 | 中距離弾道ミサイル (潜水艦発射弾道ミサイル) |
原開発国 | 朝鮮民主主義人民共和国 |
運用史 | |
配備先 | 朝鮮民主主義人民共和国 イラン |
諸元 | |
重量 | 12,000 kg |
全長 | 12.5 m |
直径 | 1.5 m |
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射程 | 3,200–4,000 km |
精度 | CEP1,300 m |
弾頭 | 核弾頭 12-50 kt 生物弾頭 化学弾頭 |
炸薬量 | 650-1,200 kg |
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エンジン | 液体燃料ロケット |
推進剤 | 非対称ジメチルヒドラジン 赤煙硝酸 |
誘導方式 | 慣性航法装置 |
発射 プラットフォーム | 輸送起立発射機 (MAZ-7916) |
ムスダン(舞水端)は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)で開発された中距離弾道ミサイル (IRBM)。別名は「ノドンB」、「テポドンX」など[1]。
概要
[編集]ムスダン(舞水端)とはアメリカ合衆国が付けたコードネームであり、北朝鮮での呼び名は「火星(ファソン:화성)10号」[2]。 この弾道ミサイルは2007年4月25日に平壌で行われた朝鮮人民軍創設75周年記念パレードで初めてその姿がアメリカの偵察衛星により確認された。また、2010年10月10日に行われた朝鮮労働党創建65周年記念パレードで初めてその姿が世界中のメディアに公開された。パレードでは12輪の移動式発射台に搭載されたムスダン8基が登場し、この時の映像は世界中で報道された[3]。
2016年4月15日の故金日成(キム・イルソン)主席の生誕記念日「太陽節」を迎え、ムスダンの初の発射実験を実施したが、打ち上げに失敗したとの報道がなされた[4]。また4月28日に2回、5月31日に1回発射実験をしたが直後に墜落や爆発をして失敗、さらに6月22日に2回発射実験をしたが、1回目は150 km飛翔して空中爆発して失敗した。しかし同日の2回目(累計6回目)の発射は、高度1000 km以上、水平距離400 kmを飛翔して日本海に落下しており、韓国軍関係者は意図的に高い角度(ロフテッド軌道)で発射したとしてかなり高い技術レベルの発射で成功とみている。また北朝鮮の朝鮮中央通信も「大気圏再突入時の弾頭部の耐熱性や飛行安定性が検証された」として発射実験の成功を発表した[5][6][7][8]。
この発射実験には最高指導者の金正恩党委員長(国防委第一委員長・軍最高司令官)の他、李万建(リ・マンゴン)党中央委員会副委員長(軍需工業担当)や李炳鉄党中央委員会第一副部長、金洛兼(キム・ラクギョム)朝鮮人民軍戦略軍司令官らが立ち会った[9][10]。
開発経緯
[編集]1992年以降
[編集]- 旧ソ連のマカエフ記念設計所のロケット技術者を招聘し開発を開始。彼らはムスダンの原型となったR-27潜水艦発射弾道ミサイル(NATOコードネーム: SS-N-6)の技術一式を北朝鮮に持ち込んだとされる。
2003年
[編集]- R-27と同等の性能を持つムスダンのプロトタイプが試験配備されたと言われている。
2005年
[編集]- イランに18 - 19発のムスダンを輸出したとされる。
2006年
[編集]- 2006年1月頃、イランにて発射実験が行われたと言われている。
2016年
[編集]- 4月15日、北朝鮮で初の発射実験を実施するも打ち上げから数秒後に空中爆発して失敗したとされる[5][6]。
- 4月28日、午前と午後に分けて2回の発射事件を実施するも発射直後に失敗[5][6]。
- 5月31日、発射実験を実施するも発射直後に失敗[5][6]。
- 6月22日、午前に2回の発射実験を実施。1発目は150 km飛翔して失敗、2発目は高度1000 km以上、水平距離400 km飛翔して日本海に落下、韓国軍と北朝鮮は実験は成功とみている[5][6][7]。
- 10月15日、午後に発射実験を行うも発射直後に空中爆発して失敗[11]。一方、ジェームズ・マーティン不拡散研究センターのジェフリー・ルイスは、ムスダンではなくKN-08の発射実験であった可能性を指摘している[12]。
- 10月20日、午前に発射実験を行うも失敗[13]。一方、ジェームズ・マーティン不拡散研究センターのジェフリー・ルイスは、15日の発射と同じくムスダンではなくKN-08の発射実験であった可能性を指摘している[12]。
技術的特徴
[編集]ムスダンはR-27を改造し、陸上発射型にしたものと考えられている。 R-27は潜水艦発射弾道ミサイルであるため、小型化を最優先として設計されており、全長は9.7 m、直径は1.5 mに抑えられている一方で、内部構造は複雑なものとなっている。これに対してムスダンでは、全長が12.5 mへ延長されており、ベースとなったR-27よりも長くなっている。これは、燃料や酸化剤のタンクを延長して射程を伸ばしたものであると考えられている。これに伴い重量も変化し、19t程度であろうと推定されている。 推進機関はR-27と同様、1段式の液体燃料ロケットモータを採用しているとされ、長期の常温保存が可能なものである。ペイロードは650 - 1,200 kg程度と考えられ、推定射程は3,200 km以上4,000 km以下で、日本本土はもとよりグアムの米軍基地にも届く射程である[14]。 なお、CEPは1,300 m程度と考えられている。
ムスダンはTEL (Transporter-Erector-Launcher) を用いた道路移動型中距離弾道ミサイルであり、原型が潜水艦発射弾道ミサイルという事もあり即応性は高く、事前に破壊する事は困難とされる。なお、発射された場合、ロケットモータが燃焼した後、弾頭が切り離され、再突入体が目標へ自由落下していくと考えられている。
北朝鮮は2016年6月の発射実験により「大気圏再突入時の弾頭部の耐熱性や飛行安定性が検証された」として弾頭の再突入技術の検証に成功したことを発表している[8]。また弾頭はペイロードに合わせて高性能爆薬・核・生物・化学兵器が選択可能である。多弾頭のMIRV技術についてはムスダンの原型であるR-27の技術移転の際に獲得している可能性が高いが、単弾頭と比較してさらなる小型化が必須であり、強化原子爆弾か水素爆弾の技術が必要とされる。2013年現在ではまだ途上と考えられ、結果的にMIRVは選択できないとみられる。ただし、強化原子爆弾については、開発成功を示唆する分析も存在する事に注意が必要である[15]。
なお、元々が潜水艦発射弾道ミサイルであるため、オリジナルと同等の設計とすれば潜水艦での運用も可能であるが、配備国の北朝鮮やイラン共に運用可能な潜水艦を保有していない。しかし、偽装コンテナ船にムスダンを搭載して運用する事は可能とされる[要出典]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ “【解説】北朝鮮のミサイル開発計画 歴史と現状”. BBCニュース. (2017年3月13日)
- ^ “ムスダンの名称は「火星10」北朝鮮が初言及”. 朝鮮日報 (2016年6月23日). 2016年6月23日閲覧。
- ^ “北の新型弾道ミサイル「ムスダン」、射程3200キロ以上”. 朝鮮日報. 2007年5月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年5月19日閲覧。
- ^ “北朝鮮 初の「ムスダン」発射実験に失敗=韓国軍”. 聯合ニュース. 2016年4月15日閲覧。
- ^ a b c d e “北朝鮮22日にムスダンミサイル2発連続発射…今年に入って6回目”. 中央日報 (2016年6月22日). 2016年6月22日閲覧。
- ^ a b c d e “2発目は400キロ飛行か 1発目は150キロ推定”. 産経新聞 (2016年6月22日). 2016年6月22日閲覧。
- ^ a b “北が中距離弾道ミサイル発射成功、グアムの米軍基地も射程圏に”. 朝鮮日報 (2016年6月23日). 2016年6月23日閲覧。
- ^ a b “北朝鮮、ムスダン発射「成功」再突入検証と報道”. 東京新聞 (2016年6月23日). 2016年6月23日閲覧。
- ^ “中距離ミサイル発射成功 金正恩氏も見守る=北メディア”. 聯合ニュース (2016年6月23日). 2016年7月1日閲覧。
- ^ “ムスダン、頂点高度1413.6キロ・飛翔400キロ”. ハンギョレ (2016年6月23日). 2016年7月1日閲覧。
- ^ “北朝鮮がミサイル発射失敗 新型中距離「ムスダン」空中爆発”. 東京新聞. (2016年10月17日)
- ^ a b “N. Korea's failed missile tests could have involved KN-08: U.S. expert”. 聯合ニュース. (2016年10月27日)
- ^ 北朝鮮、ミサイル発射にまた失敗…韓国軍発表 読売新聞 2016年10月20日 - ウェイバックマシン(2017年7月30日アーカイブ分)
- ^ 北朝鮮が新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」公開か 産経新聞 2010年10月10日 - ウェイバックマシン(2010年10月12日アーカイブ分)
- ^ “北朝鮮の核威力は広島原子爆弾の3倍=独研究所”. 聯合ニュース. (2013年2月14日). オリジナルの2013年4月23日時点におけるアーカイブ。
関連項目
[編集]- 北朝鮮核問題
- (パキスタンの核実験 (1998年))北朝鮮の代理核実験とされる
- 北朝鮮の核実験 (2006年)
- 北朝鮮の核実験 (2009年)
- 北朝鮮の核実験 (2013年)
- ミサイル防衛 (MD)