探偵小説四十年
『探偵小説四十年』(たんていしょうせつよんじゅうねん)は、江戸川乱歩による、探偵小説作家としての自伝作品である。10年以上にわたり連載され、連載期間、ページ数ともに、乱歩最大の作品である。
連載中の1954年(昭和29年)11月に、『探偵小説三十年』として岩谷書店から出版された(著者還暦記念)。また、完結後の1961年(昭和36年)7月に、『探偵小説四十年』として桃源社から出版された(菊判三段組562ページ、定価1300円、初版は限定)。現在では、光文社より、江戸川乱歩全集第28、29巻『探偵小説四十年(上)』、『探偵小説四十年(下)』として刊行されている。
執筆時期
[編集]連載
[編集]- 『新青年』での連載 - 『探偵小説思ひ出話』(森下雨村)の後を、昭和24年10月号から昭和25年7月号(この号で廃刊)まで連載。連載時のタイトルは『探偵小説三十年』。
- 『宝石』での連載 - 『幻影城通信』の後を、昭和26年3月号から昭和35年6月号まで連載。連載時のタイトルは『探偵小説三十年』、昭和31年4月号からは『探偵小説三十五年』。
休載
[編集]- 1956年(昭和31年)1月 - 3月(『貼雑年譜』(後述)の資料整理のため)
光文社文庫版目次
[編集]- 自序
- 処女作発表まで
- 余技時代(大正十二・三年度)
- 探偵作家専業となる(大正十四年度)
- 東京に転宅(大正十五(昭和元年)度)
- 放浪の年(昭和二年度)
- 「陰獣」を書く(昭和三年度)
- 生きるとは妥協すること(昭和四年度)
- 虚名大いにあがる(昭和五年度)
- 最初の江戸川乱歩全集(昭和六年度)
- 二回目の休筆宣言(昭和七年度)
- 精神分析研究会(昭和八年度)
- 小栗、木々の登場(昭和九・十年度)
- 甲賀・木々論争(昭和十一・十二年度)
- 隠栖を決意す(昭和十三・四・五年度)
- 末端の協力(昭和十六・十七年度)
- 愈々協力に励む(昭和十八・九年度)
- 戦災記(昭和二十年度)
- 探偵小説復活の昂奮(昭和二十一年度)
- 探偵作家クラブ結成(昭和二十二年度)
- 探偵小説第三の山(昭和二十三・四年度)
- 「幻影城」出版と文士劇(昭和二十五・二十六・二十七年度)
- 涙香祭と還暦祝い(昭和二十八・二十九年度)
- 小説を書いた一年(昭和三十年度)
- 英訳短編集の出版(昭和三十一年度)
- 追記(昭和三十二年度)
付録
[編集]- 作品と著者 - 年度別に執筆作品(小説・随筆・評論)と著書、講演、放送(ラジオ/テレビ)、映画などをまとめたもの
- 江戸川乱歩既刊随筆評論集目録
- 写真人名索引
- 人名索引
「探偵小説40年」出版記念会
[編集]日時 1961年(昭和36年)7月1日
場所 日活國際會館シルヴァールーム
発起人のうち主な人物
など豪華な面々だった。
貼雑年譜(はりまぜねんぷ)
[編集]乱歩が自らに関する資料(新聞記事、雑誌の切り抜きなど)を集め、コメント等を付したスクラップブック。全9巻。1、2冊目が戦前で、3冊目が戦中、それ以降が戦後である。戦前のものは、戦争中の暇な時間を活用して作られたもので、丁寧なコメントが書き添えられている。3冊目以降は、『探偵小説四十年』の執筆に併せて作られたもの。なお、この時『探偵小説三十年』は一時休載し、整理後、『探偵小説三十五年』として執筆が再開された。
戦前分の第1・2巻は、次の形で公刊されたことがある。
- 『貼雑年譜 『江戸川乱歩推理文庫』特別補巻』(講談社、1989年7月) ISBN 4-06-195266-8 - 抄録。
- 『貼雑年譜 完全復刻版』上・下(東京創元社、2001年3月) ISBN 4-488-02366-5 - 限定200部。