石榴 (小説)
『石榴』(ざくろ)は、江戸川乱歩の著した中篇小説である。1934年(昭和9年)9月、『中央公論』に掲載された。
執筆まで
[編集]満州事変の勃発を機に、推理専門雑誌が続々と廃刊となり、推理作家の執筆依頼が減る中、乱歩だけは熱烈な支持を得て、大衆雑誌で活躍していた。しかし大衆雑誌で本格推理小説はなかなか発表できないジレンマに悩んでいる時、中央公論から何を書いてもかまわないという破格の依頼を受け、100ページ余りの本作品を発表した。当時、E・C・ベントリーの『トレント最後の事件』をようやく読んだばかりの乱歩は、この作品のトリックに刺激されて書くも、世間では非常に評判が悪かった。
内容
[編集]登場人物
[編集]- 私
- 主人公。刑事。ミステリ好きで、自らが担当した事件を記録するのが趣味。
- 猪俣
- 「私」が温泉旅館で出会ったミステリ好き。
あらすじ
[編集]この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
温泉旅行に出かけた私は、投宿した旅館で『トレント最後の事件』を読んでいる猪俣という男と出会う。初対面のはずなのに、いつかどこかで会ったような感じがする。ミステリ好きと聞いたせいだろうか。そんな猪俣に自分は刑事であり、趣味として今まで実際、遭遇してきた事件を記録していること、また記録する前には誰かにその事件を洗いざらい話したほうがスムーズに記録できると打ち明ける。ぜひ事件について話を聞きたいと言う猪俣に、私は10年前に担当して功績を得た硫酸殺人事件について語ることに決めた。硫酸を顔にかけられて、はぜた石榴のような遺体を発見したことから話は始まり……