未来展望
未来展望 | |
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Anticipation ou l'amour en l'an 2000 Le Plus vieux métier du monde | |
ロケ地のオルリー空港 | |
監督 | ジャン=リュック・ゴダール |
脚本 | ジャン=リュック・ゴダール |
製作 | ジョゼフ・ベルショルツ ホルスト・ヴェントラント |
出演者 | アンナ・カリーナ |
音楽 | ミシェル・ルグラン |
撮影 | ピエール・ロム |
編集 | アニエス・ギユモ |
製作会社 | フランコリス レ・フィルム・ジベ リアルト・フィルム リッツォーリ・フィルム |
配給 | アトス・フィルム ヘラルド映画 / ザジフィルムズ |
公開 | 1967年4月7日 1967年4月21日 1967年7月19日 1971年12月11日 2002年7月13日 |
上映時間 | 20分(オムニバス119分) |
製作国 | フランス イタリア 西ドイツ |
言語 | フランス語 |
『未来展望』(みらいてんぼう、仏語原題Anticipation ou l'amour en l'an 2000、「予想、あるいは西暦2000年における恋愛」の意)は、1966年に撮影され1967年に公開されたフランス・イタリア・西ドイツ合作のオムニバス映画『愛すべき女・女たち』の一篇(第六話)、ジャン=リュック・ゴダールの監督作品である。女優アンナ・カリーナを主演にしたゴダール最後の作品として知られる。
概要
[編集]オムニバス映画全篇については、『愛すべき女・女たち』のページを参照。
『愛すべき女・女たち』の第六話は、『二〇〇一年愛の交換』の邦題でも知られているが、一般には『未来展望』とされている。ゴダール監督の長篇劇映画『アルファヴィル』(1965年)によく似ているが、これはもともとゴダールをインスパイアしたドキュメンタリー作家クリス・マルケル監督のフォトロマン『ラ・ジュテ』(1962年)という先行作品がある。本作は、『ラ・ジュテ』を撮影した、パリ郊外ヴァル=ド=マルヌ県オルリーにあるオルリー空港、それに隣接するホテルヒルトンでロケーション撮影が行われた。
撮影監督のピエール・ロムは、ゴダールの助監督を10年つとめた本作の助監督シャルル・L・ビッチが、このオムニバスにも参加しているフィリップ・ド・ブロカらとつくった短篇『三つのランデヴー Les Trois rendez-vous』(1953年)の撮影監督としてキャリアを始め、オランダのドキュメンタリー作家ヨリス・イヴェンス監督の『ル・ミストラル』(1965年)などを撮っている。今回ゴダールとは初顔合わせ。音楽はジャック・ドゥミ監督の『シェルブールの雨傘』(1964年)、ゴダール監督の『女と男のいる舗道』(1962年)のミシェル・ルグラン。美術のベルナール・エヴァンは、ドゥミ監督の短篇『Le Bel indifférent』(1957年)から始まり、ドゥミやクロード・シャブロルの初期作品を多く手がけた。L・ビッチのほか、『いちばんうまい歩き方』(1974年)のクロード・ミレール監督が本作の助監督についた。クレメンテ・フラカッシはフェデリコ・フェリーニ監督の『8 1/2』の製作主任であり、本作が遺作となった。アンドレ・キュルテは、ルイス・ブニュエル監督の『それを暁と呼ぶ』(1962年)の製作主任である。
相手役のジャック・シャリエは、ジャン=ピエール・モッキー監督の『今晩おひま?』(1959年)やアンドレ・カイヤット監督の『愛のためいき』(1963年)で主演している。ヴィットリオ・デ・シーカ監督の『あゝ結婚』(1964年)やフェリーニ監督の『魂のジュリエッタ』(1965年)にも出演しているマリル・トロはイタリア女優。ダニエル・バールは、ゴダール監督の『メイド・イン・USA』(1966年)にも出演している。のちに映画監督になるジャン=パトリック・ルベルはゴダール監督の『彼女について私が知っている二、三の事柄』(1966年)、および本作に出演後、ピエール・グランブラ監督の『スローガン』(1969年)に助監督としてついた。
ゴダールの長篇第二作『小さな兵隊』(1961年)に出演、そして結婚して以来、アンナ・カリーナはゴダールの数々の名作に主演してきた。1964年にはアンナの愛称を社名にした映画製作会社「アヌーシュカ・フィルム」を設立、『はなればなれに』(1964年)などを製作して来たが、1965年にふたりの結婚生活は破綻、本作がゴダール作品での最後の主演作となった。この映画のラストシーンは、ふたりの関係へのゴダールの最後の賭けのような気迫が感じられる渾身のシーンである。それでもふたりは別れてしまった。ふたたびゴダールの署名した映画のなかに、アンナ・カリーナが登場するのは、この20分の短篇映画から25年を待たなくてはならない。それが、10分の短篇映画『時間の闇の中で』(オムニバス映画『10ミニッツ・オールダー』の一篇、2002年)である。『女と男のいる舗道』でのもっともうつくしいシーンのアーカイヴ・フッテージからの引用であった。
あらすじ
[編集]34年も先、西暦2000年の近未来社会では、性的な娼婦と言語的な娼婦に分業化されている。宇宙船を乗り換えるために地球の空港に降り立ったソヴィエト=アメリカ軍の士官(ジャック・シャリエ)は、ホテルの部屋に呼んだ口をきかないフィジカル・ラヴの娼婦(マリル・トロ)はに満足できず、チェンジを所望。変わって現れた娼婦は、客の身体には触れず、聖書に書かれた愛のことばを語りかける。彼女は言語的な娼婦(アンナ・カリーナ)なのであった。ふたりはやがて最後に真実の愛に到達する。
作品データ
[編集]パートカラー作品(イーストマン・カラー)/ 上映時間20分(オムニバス119分) / 上映サイズ1:1.66 (ビスタサイズ)
スタッフ
[編集]- 監督 ジャン=リュック・ゴダール
- 脚本 ジャン=リュック・ゴダール
- 撮影 ピエール・ロム
- 音楽 ミシェル・ルグラン
- 美術 ベルナール・エヴァン
- 編集 アニエス・ギユモ
- 助監督 シャルル・L・ビッチ、クロード・ミレール
- 製作主任 クレメンテ・フラカッシ、アンドレ・キュルテ
- プロデューサー ジョゼフ・ベルショルツ、ホルスト・ヴェントラント
- 製作会社 フランコリス(パリ)、レ・フィルム・ジベ(同)、リアルト・フィルム(ベルリン)、リッツォーリ・フィルム(ローマ)
- 配給 アトス・フィルム(パリ)
キャスト
[編集]- アンナ・カリーナ(ナターシャ / エレノール・レモヴィッチ / ホステス703号)
- マリル・トロ(売春婦マレーヌ / マドモワゼル・フィジカル・ラヴ)
- ジャック・シャリエ(ニック / ジョン・デメトリオス)
- ダニエル・バール
- ジャン=パトリック・ルベル
- ジャン=ピエール・レオ(ベルボーイ)