田んぼアート
田んぼアート(たんぼアート)は、田んぼをキャンバスに見立て色の異なる稲を使って、巨大な絵や文字を作り出すプロジェクト、またその作品。
概要
[編集]田んぼアートは田んぼをキャンバスに見立て、色の異なる稲を植えることで巨大な絵や文字を作る。大規模なものの多くは斜め上から見る前提で図案を設計し、これに基づいて遠近を考慮して植えられている。使用する稲は背景の緑部分には現代の食用に広く栽培されている品種、図柄の部分には古代米と呼ばれている在来種のうち葉色が濃い紫や黄色の稲、または公的機関で葉色や穂色が鮮やかなものを選抜して育成した観賞用品種の稲で、これらの葉や穂の色によって緑色、黄緑色、濃紫、黄色、白色、橙色、赤色といった色が作られる。
1993年(平成5年)に青森県南津軽郡田舎館村で村おこし(地域活性化事業の1つ)として田舎館村の村役場の裏手にある田んぼで田んぼアートが開始された。その後2010年以降になるとこれが日本全国に広まり、全国田んぼアートサミットも開催されている。
2020年代には、中華人民共和国でも行われるようになっている[1]。
田舎館村での取り組み
[編集]田舎館村の田んぼアートが行なわれる場所は、村役場の東側にある約1.5haの水田である。2012年からは、第2会場として道の駅いなかだて施設内の田んぼも設定された。使用されている稲は、当初、古代米2種類(黄稲、紫稲)と、この地方で栽培されているブランド米の「つがるロマン」の計3種類であったが、2006年には、新たに「紅染」「紅都」という赤色系の苗(生育した稲は白色などに見える)を加えた5種類、2011年には新色(オレンジ、深緑)を加えた7種類となり、2019年現在では「つがるロマン」及び「あさゆき」(緑色)、「紫大黒」(紫)、「黄大黒」(黄色)、「緑大黒」(濃緑色)、「ゆきあそび」(白)、「あかねあそび」(橙)、「べにあそび」(紅)、「紫穂波」(穂が紫)、「赤穂波」(穂が赤色)、「白穂波」[2](穂が白)の11種類7色となっている[3][4][5][6]。村役場、道の駅ともに展望室が開放され、作品を眺めることができる。毎年多くの人が訪れ、2007年度には24万人が訪れた。また田植えや稲刈りへの参加者も募集しており、多くの人が参加している。2013年は、第1会場で6月2日に田植え体験ツアー(8時半受付スタート、9時半開会式)が、第2会場では13日・14日に田植えを行った。
2008年には、運営費をまかなうための増収策として、「大黒様」の下部に日本航空(JAL)と東奥日報120周年のロゴを入れ、広告費として200万円を得ることとしたが、地権者で協議会のメンバーでもある前村長が、事前の連絡がなかったとして抗議し、「広告絵柄を抜き取らないと来年から水田を貸さない」と述べた。これを受け、「田舎館村むらおこし推進協議会」が僅差で抜取りを決め、村職員が広告部分の苗を抜き取った[7][8][9]。田植えに参加した住民などは、抜き取りに抗議した[10]。選挙戦で争った現村長との確執が背景にあるともされる。この抜き取りについて、東奥日報が、日本航空の広告部分を抜き取ったことで広告収入が入らなくなったとして、主催者の田舎館村に対し、241万円の損害賠償を求めた[11]。
2013年には、第2会場がある道の駅いなかだて付近に、弘南鉄道弘南線の田んぼアート駅(7月27日開業)が設置され、同時に役場前の第1会場と第2会場を結ぶシャトルワゴン車の運行が開始された[12]。
田んぼアートのRice Codeがカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルで2部門の金賞を獲得し、合わせて五つの賞を受賞した[13]。
田舎館村における作品テーマ
[編集]- 2003年 - レオナルド・ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』
- 2004年 - 棟方志功『釈迦十大弟子羅睺羅の柵』と『山神妃の柵』
- 2005年 - 東洲斎写楽『二代大谷鬼次の奴江戸兵衛』、喜多川歌麿『歌撰恋之部・深く忍恋』
- 2006年 - 俵屋宗達『風神雷神図屏風』
- 2007年 - 葛飾北斎『富嶽三十六景』の『神奈川沖浪裏』と『凱風快晴』
- 2008年 - 恵比寿様、大黒様
- 2009年 - 戦国武将、ナポレオン・ボナパルト
- 2010年 - 弁慶と牛若丸、『五条大橋での戦い』
- 2011年 - 『竹取物語』
- 2012年
- 2013年
- 2014年
- 2015年
- 第1会場(田舎館村役場庁舎東側の田んぼ):風と共に去りぬ
- 第2会場(道の駅いなかだて、弥生の里):スター・ウォーズ/フォースの覚醒
- 2016年
- 2017年
- 第1会場(田舎館村役場庁舎東側の田んぼ):ヤマタノオロチとスサノオノミコト
- 第2会場(道の駅いなかだて、弥生の里):桃太郎
- 2018年
- 2019年
- 第1会場(田舎館村役場庁舎東側の田んぼ):NHKの連続テレビ小説「おしん」
- 第2会場(道の駅いなかだて、弥生の里):「おかあさんといっしょ ガラピコぷ~」
- 2020年(中止)
- 第1会場(田舎館村役場庁舎東側の田んぼ):
- 第2会場(道の駅いなかだて、弥生の里):エヴァンゲリオン
- 2020年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、中止された[14]。
- 2021年
- 第1会場(田舎館村役場庁舎東側の田んぼ):使用せず
- 第2会場(道の駅いなかだて、弥生の里):いとみち
- 2022年
- 第1会場(田舎館村役場庁舎東側の田んぼ):"モナリザ"と"湖畔"
- 第2会場(道の駅いなかだて、弥生の里):"縄文から弥生へ"
- 2023年
- 第1会場(田舎館村役場庁舎東側の田んぼ):「門世の柵」と「真珠の耳飾りの少女」
- 第2会場(道の駅いなかだて、弥生の里):「ONE PIECE」
- 2024年
- 第1会場(田舎館村役場庁舎東側の田んぼ):「神奈川沖浪裏と北里柴三郎」
- 第2会場(道の駅いなかだて、弥生の里):「じいさんばあさん若返る」
行田市での取り組み
[編集]古代蓮の里にある古代蓮会館の展望室(高さ約50 m)から一望できる。約2.8 haと大きく、2015年に世界最大の田んぼアートとしてギネス世界記録(記録名:Largest rice field mosaic)の認定を受けた[15][16]。
日本各地の開催地
[編集]- 北海道旭川市東鷹栖
- 北海道上川郡鷹栖町[17]
- 青森県南津軽郡田舎館村 - 発祥の地[18]。
- 岩手県奥州市水沢区
- 秋田県秋田内陸縦貫鉄道沿線
- 秋田県八郎潟町
- 山形県米沢市[19]
- 福島県鏡石町[20]
- 2022年では「つるのおんがえし」をテーマとし、穂に色が付く「紫穂波」、「赤穂波」、「白穂波」を利用して鶴が浮かび上がる演出を行った[20]。
- 福島県相馬市[21]
- 新潟県新潟市北区(福島潟)
- 群馬県川場村[22]
- 茨城県つくばみらい市
- 埼玉県行田市
- 埼玉県越谷市[23]
- 東埼玉資源環境組合の「リユース展望台」(高さ約80 m)から一望できる。
- 福井県越前町
- 富山県砺波市
- 静岡県菊川市[1]
- 愛知県安城市、西尾市
- 滋賀県甲賀市水口町牛飼(信楽高原鐵道沿線。乗車しながら鑑賞する)[24][25]
- 滋賀県長浜市長野町(虎姫田んぼアート)[25][26]
- 京都府宇治市
- 京都府船井郡京丹波町
- 兵庫県姫路市夢前町
- 岡山県津山市
- 香川県善通寺市
- 熊本県上天草市
- 鹿児島県南九州市
ギャラリー
[編集]- 八郎潟町 2018年
- 行田市 2015年
- 奥州市 2013年
- 田舎館村 2012年
- 行田市 2012年
- 田舎館村 2011年
- 田舎館村 2009年
- 米沢市 2009年
脚注
[編集]- ^ “【写真特集】緑のキャンバスに大きく浮かぶデザイン、中国の田んぼアート”. AFP (2020年8月4日). 2020年8月5日閲覧。
- ^ “白穂波 | 地方独立行政法人 青森県産業技術センター”. www.aomori-itc.or.jp. 2022年10月14日閲覧。
- ^ a b “田舎館村田んぼアート過去の様子”. 田舎館村. (2015年10月8日)
- ^ “「青天の霹靂・あさゆき」青森へ”. 五ツ星お米マイスターの活動日誌. 2021年2月26日閲覧。
- ^ “広報いなかだて 平成30年度6月(第748号)”. 田舎館村. 2021年2月26日閲覧。
- ^ “『田舎館村の田んぼアート❗️2019』”. 青森から発信 私の好きな美味しいもの♪. 2022年10月14日閲覧。
- ^ “田んぼアート、広告いらない 地権者抗議で苗抜き取り”. asahi.com (朝日新聞社). (2008年7月4日). オリジナルの2008年7月7日時点におけるアーカイブ。
- ^ “田んぼアートの広告削除へ”. 東奥日報 (東奥日報社). (2008年7月4日). オリジナルの2008年7月7日時点におけるアーカイブ。
- ^ “田んぼアート もったいない? 企業広告絵柄を抜き取り”. 毎日jp (毎日新聞社). (2008年7月5日)[リンク切れ]
- ^ “苗抜き取りに騒然 田んぼアート”. asahi.com (朝日新聞社). (2008年7月5日)[リンク切れ]
- ^ “「田んぼアート」広告抜き取り、地元紙が主催者に賠償要求”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2008年10月15日). オリジナルの2008年10月18日時点におけるアーカイブ。
- ^ “新駅名は「田んぼアート駅」 弘南鉄道”. どうしんウェブ (北海道新聞社)[リンク切れ]
- ^ “田んぼアート題材、博報堂アプリが世界で高評価”. (2014年7月20日) 2014年11月2日閲覧。
- ^ 田舎館村「田んぼアート」を中止 - web東奥・2020年4月2日
- ^ 【ぐるっと首都圏】田んぼアート(埼玉県行田市)世界最大ギネス認定『日本経済新聞』朝刊2017年8月26日(首都圏経済面)
- ^ “行田市、世界一へ!!「世界最大の田んぼアート(Largest rice field mosaic)」|ギネス世界記録 町おこしスペシャル・インタビュー”. Guinness World Records (2016年2月16日). 2024年1月2日閲覧。
- ^ “田んぼアート”. JAたいせつ. (2015年8月18日)
- ^ “田舎館村田んぼアートサイト”. 田舎館村. (2015年8月18日)
- ^ “米沢市田んぼアート”. 田んぼアート米づくり体験事業推進協議会. (2015年8月18日)
- ^ a b “隠れキャラ“飛び立つツル”がお目見え 来年に向けて羽ばたく かがみいし田んぼアート | 阿武隈時報社” (2022年8月18日). 2022年10月14日閲覧。
- ^ “相馬田んぼアートプロジェクト”. 相馬田んぼアートプロジェクト. 2018年2月22日閲覧。相馬田んぼアートプロジェクト
- ^ “縁人-enjin-”. facebook. (2015年8月18日)
- ^ こしがや田んぼアート 越谷市公式ホームページ(2019年8月30日閲覧)
- ^ “うしかい田んぼアート | 滋賀県観光情報[公式観光サイト]滋賀・びわ湖のすべてがわかる!”. 滋賀観光. 2021年8月26日閲覧。
- ^ a b 純太郎, 青木; 哲平, 大谷; 拓司, 妹尾; 涼平, 山本; 富雄, 猪谷 (2019). “長浜市の虎姫田んぼアートの概要とイネ品種の葉色の推移”. 作物研究 (近畿作物・育種研究会) 64: 47–51. doi:10.18964/jcr.64.0_47. ISSN 1882-885X .
- ^ “滋賀)田んぼアート 疫病退散の角大師くっきり 長浜市:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年8月26日閲覧。
関連項目
[編集]- ミステリー・サークル
- クロップマーク
- ヒルフィギュア
- わらアート - 同じく稲を用いた屋外アート作品
- 田んぼアート駅
外部リンク
[編集]- 田んぼ団ホームページ - ツナガル株式会社(協力:全国田んぼアート連絡協議会)
- 田んぼアート米づくり体験事業推進協議会 - 山形県米沢市
- 田舎館村、1000人の力で田んぼに巨大なアートを創ろう
- ふれあい田んぼアート安城(愛知県安城市)
- 福島潟田んぼアート(新潟市北区)
- 田んぼアート/総合ホームページ[リンク切れ]
- 田んぼアート/JAたいせつ青年部(北海道旭川市東鷹栖)
- 田んぼアート/アグリ堀坂(岡山県津山市堀坂)[リンク切れ]