福岡スナックママ連続保険金殺人事件

福岡スナックママ連続保険金殺人事件(ふくおかスナックママれんぞくほけんきんさつじんじけん)は、2004年平成16年)に発覚した連続保険金殺人事件である。

概要

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1994年10月22日、Aは長男の家庭教師だったBと共謀し、夫Cに睡眠薬入りの酒を飲ませて眠らせたところを、包丁で割腹自殺に見せかけて殺害[1]。Cは建設会社の社長だったが、9月に取引先の倒産で1600万円の焦げ付きが発生し、これが原因で1億3000万円の負債を抱えて倒産。Aは殺害現場に借用書をばらまくなどして偽装工作を行い、自殺とされて保険金2億1000万円を得た。会社の債務処理などもあり、実際に得たのは1億ほどとされる。

1995年9月、Aは福岡市博多区中洲にスナック店を開業。

1999年6月、スナック店の常連だったDと結婚。しかしAは派手な生活を続けていたためにすでに資金は底をついていた。

2000年1月、Dに対して2000万円の保険金をかける。10月にも8000万円と3000万円の保険をかける。11月12日、Dを風呂場で溺死に見せかけて殺害[1]。事故死として処理されるが、契約していた保険金約1億3000万円の内、保険の多重契約による告知義務違反により、保険金は2700万円しか支払われなかった[1]

2004年7月22日、複数の交際相手から1000万円以上の多額の現金を脅し取っていたとして、恐喝容疑などにより福岡県警によって逮捕[2]。また、過去に結婚していた夫2人が、高額の生命保険に加入した後、変死していたため、県警は保険加入の経緯などについても事情を聴取[2]。結果、過去2件の夫殺しも露見(以前から県警に疑われていたという)。

2004年9月16日、保険金目当ての殺人容疑で逮捕した[3]

裁判

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2004年12月13日福岡地裁(川口宰護裁判長)でAの初公判が開かれ、起訴内容を全面的に認めた[4][5]。罪状認否の際、弁護士が2件の殺人事件について「認否を留保したい」と述べた直後、Aは「正直に警察に話した。死刑になっても構わないので罪を償いたい。裁判をお願いします」と述べている[4]。しかし、次の公判からDの殺害を否定し、1人目のCに対する殺害も、共犯に問われたBが実行行為をしたと主張した。

2007年5月10日、検察側は「ぜいたくで派手な生活を続けたいという身勝手極まりない利欲目的で殺害した。極刑相当とも考えられるが、事件の経過にかんがみ、極刑は控える」として、Aに無期懲役を求刑した[1]

論告で検察側は「女王バチが働きバチに命がけの奉仕を求めるがごとく、2人が死ぬことは当然至極のこととして殺害した」と厳しく指摘した[1]

2007年7月19日、福岡地裁で判決公判が開かれ、Aに求刑通り無期懲役の判決が、共犯のBには殺人ほう助罪で懲役3年6月(求刑懲役12年)が下る。

2008年4月22日福岡高裁でBに対し「証拠がない」として逆転無罪の判決。上告せず確定(疑わしきは罰せずおよび保険金殺人#概要も参照の事)。

2008年12月18日、福岡高裁(陶山博生裁判長)は一審の無期懲役判決を支持、弁護側の控訴を棄却[6][7]

控訴審ではあらためてDの殺害を否定し、1人目のCに対する殺害も、共犯に問われたBが実行行為をしたと主張し、有期刑の判決を求めていたが、いずれも退けた[6]。その上で「金銭欲を満たすために自殺を迫って精神的に追いつめた末に殺害した動機に酌量の余地は全くない」と厳しく非難した。

判決理由の朗読後、裁判長は「もう一度、自分が何をしたのか、どんなに周りの人につらい思いをさせたか、夫に苦しい思いをさせたか考えてください」と説諭。Aは口に手を当てて嗚咽を漏らした[8]

2011年4月26日、最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)が上告を棄却、Aの無期懲役が確定した。

犯人像

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A子は福岡市近郊の糟屋郡志免町の裕福な靴製造販売会社社長の娘。ミッションスクール福岡女学院高校を経て武蔵野音楽大学ピアノ科を卒業した。子供の頃はピアノが上手でかわいかったため、白雪姫と呼ばれた[9][10]

大学時代に1歳年上の慶應大学生だったEと出会い[10]1979年に周囲の反対を押し切ってEと結婚して2児を生むが、Eの母と仲が悪くなって別居。さらにEもギャンブルによってサラ金に多額の借金を作り、1985年10月に離婚。しかもEの作った借金はA子の父親が肩代わりしたという。このことで男性不信となり、金銭に異常な執着心を抱くようになり、生活も派手になった。

関連書籍

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  • コアマガジン『実録戦後女性犯罪史。日本毒女たちの凶状録』

テレビ番組

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脚注

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  1. ^ a b c d e “福岡・中洲の保険金殺人、51歳元スナックママに無期求刑”. 読売新聞. (2007年5月10日). https://web.archive.org/web/20070514142336/http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070510i212.htm?from=main2 2007年5月14日閲覧。 
  2. ^ a b “客恐喝容疑のスナック女性経営者、前夫2人は変死”. 読売新聞. (2004年7月22日). https://web.archive.org/web/20040724054138/http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20040722i314.htm 2004年7月24日閲覧。 
  3. ^ “保険金目当てで元夫2人殺害容疑、48歳女を逮捕”. 読売新聞. (2004年9月16日). https://web.archive.org/web/20040916101906/http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20040915i415.htm 2004年9月16日閲覧。 
  4. ^ a b “元夫と再婚相手殺害認める”. 日刊スポーツ. (2004年12月13日). https://web.archive.org/web/20041214023232/http://www.nikkansports.com/ns/general/f-so-tp0-041213-0024.html 2004年12月14日閲覧。 
  5. ^ “「死刑でも構わない」と被告 福岡・連続保険金殺人初公判”. 朝日新聞. (2004年12月13日). https://web.archive.org/web/20041215031909/http://www.asahi.com/national/update/1213/006.html 2004年12月15日閲覧。 
  6. ^ a b “保険金目的殺人の“中洲ママ”2審も無期”. 日刊スポーツ. (2008年12月18日). https://web.archive.org/web/20081219112807/http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20081218-441429.html 2008年12月19日閲覧。 
  7. ^ “元“中洲ママ”2審も無期 福岡、夫2人の保険金殺人”. MSN産経ニュース. (2008年12月18日). https://web.archive.org/web/20090210124104/http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/081218/trl0812181518013-n1.htm 2009年2月10日閲覧。 
  8. ^ “保険金殺人“中洲ママ”を裁判長が非難”. 日刊スポーツ. (2008年12月18日). https://web.archive.org/web/20090102035717/http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20081218-441459.html 2009年1月2日閲覧。 
  9. ^ 小野一光 2019, p. 247.
  10. ^ a b 小野一光 2019, p. 260.
  11. ^ FBS_PRのツイート(1506088273646657541)

参考文献

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  • 小野一光『連続殺人犯』文春文庫、2019年。ISBN 978-4-16-791231-4 

関連項目

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