Line Mode Browser
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作者 | ティム・バーナーズ=リー ヘンリク・F・ニールセン ニコラ・ペロー |
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開発元 | W3C / CERN |
初版 | 0.7, 1991年5月14日[1] |
最新版 | 5.4.1[2] / 2005年10月21日 |
プログラミング 言語 | C言語[3] |
対応OS | クロスプラットフォーム、libwwwと同じ |
種別 | ウェブブラウザ |
ライセンス | W3C Software Notice and License |
公式サイト | www.w3.org/LineMode/ |
Line Mode Browser(ラインモードブラウザ、LMB[4]、www[5])は、2番目に開発されたウェブブラウザ[6]。複数のオペレーティングシステムに移植された最初のブラウザである[7][8]。単純なコマンドラインインタフェースを使用するため、様々なコンピュータや端末からインターネットにアクセスできる。1990年に開発が始まり、その後 World Wide Web Consortium (W3C) がlibwwwライブラリの使用例および評価用コードとして保守してきた[9]。
歴史
[編集]CERNでの "World Wide Web" プロジェクトの基本的コンセプトのひとつとして「誰でも読めること」があった[10]。1990年、ティム・バーナーズ=リーは既に世界初のブラウザ WorldWideWeb を書いていたが、このプログラムはNeXT製コンピュータ上でしか動作せず、NeXTのマシンはあまり普及していなかった[7]。WYSIWYGエディタ機能も備えたWorldWideWeb をより一般的だがチームが不慣れな X Window System 向けに移植することは困難だった[11]。チームはCERNでインターンとして働いていた数学科の学生ニコラ・ペローを新メンバーとし[12]、ウェブページの編集機能を省いた基本的なブラウザを書かせ、当時の多くのコンピュータで使えるものにしようと考えた[7]。Line Mode Browser という名称は、テレタイプ端末などの初期のコンピュータ端末でも使えるよう、文字だけを表示し、文字だけを入力するようにしたことに由来する[11][13]。
開発は1990年11月に始まり、1990年12月には動作しはじめている[14]。開発には、PRIAM (PRojet Interdivisionnaire d'Assistance aux Microprocesseurs) というCERN内のマイクロプロセッサ開発を標準化するプロジェクトの機材を使った[15]。開発期間が短かったことの要因として、C言語を単純化した方言を使っていた点が挙げられる。当時、標準規格である ANSI C はまだ全プラットフォームで利用可能という状態ではなかった[11]。1991年3月、VAX、RS/6000、Sun-4というシステム向けのバージョンが一部にリリースされた[16]。一般公開バージョンをリリースする前に、素粒子物理学界でよく使われている CERN Program Library (CERNLIB) に組み込まれている[8][17]。最初のベータ版が1991年4月8日にリリースとなった[18]。1991年6月にはバーナーズ=リーがネットニュースの alt.hypertext にてこのブラウザを紹介している[19][20]。インターネット経由で(世界初のウェブサーバでもある) info.cern.ch というマシンにtelnetでログインし、誰でもこのブラウザを使うことが可能だった。いわばこれは最初のウェブアプリケーションとも言える。
1991年は World Wide Web のニュースが世界中に広まっていった年であり、CERNでのプロジェクトやドイツのDESYといった研究所に世界中の注目が集まるようになった[7][21][22]。
最初の安定版であるバージョン1.1は、1992年1月にリリースされた[16]。1992年10月にリリースされたバージョン1.21から、共通コードをライブラリ化したものを使用するようになった(このライブラリが後のlibwwwである)[1]。主要開発者であるペローはMacWWWプロジェクトに関与するようになり、2つのブラウザは一部ソースコードが共通化されるようになった[23]。1993年5月の World Wide Web Newsletter で、バーナーズ=リーはこのブラウザをパブリックドメインとし、新規クライアントサポート作業を減らすことを発表[24]。1995年3月21日、バージョン3.0のリリースをもってCERNは Line Mode Browser 保守の全責任をW3Cに移管した[1]。Line Mode Browser と libwww は密接に結び付けられ、ブラウザ単体のリリースは1995年を最後とし、その後はlibwwwの一部とされるようになった[25]。
電子メールでウェブページをフェッチして閲覧するAgoraは、Line Mode Browser をベースとしている[26]。Line Mode Browser は各種OSで動作する唯一のウェブブラウザだったため、ウェブ黎明期には広く使われた。統計によれば、1994年1月からMosaicがウェブブラウザの状況を一変させ、Line Mode Browser を使って World Wide Web にアクセスするユーザーは2%にまで減った[27]。テキストのみのウェブブラウザとしては、より柔軟性のあるLynxが登場し、Line Mode Browser はほぼ役目を終えた[28]。その後はlibwwwの評価用アプリケーションとなっている。
操作モード
[編集]Line Mode Browser は単純であり、いくつかの制限がある。任意のOS上で動作するよう設計されており、いわゆるダム端末でも使える。ユーザインタフェースは可能な限り単純化されている。コマンドラインインタフェースで Uniform Resource Locator (URL) を指定して起動する。すると要求したウェブページがテレタイプ端末のように1行ずつ画面に表示される。HTMLの最初のバージョンを使ってウェブページを表示する。表示の体裁は、大文字の使用、字下げ、改行で対応している。ヘッダ要素は大文字で表示され、行の中央に字下げされ、通常のテキストとは空行を挟んで表示する[29]。
ナビゲーションはマウスや矢印キー (arrow keys) などのポインティングデバイスを使用せず、テキストコマンドを入力することで対応している[30]。テキスト内の各リンクには括弧で囲まれた番号が表示されており、リンクをたどるにはその番号を入力する。そのため、あるジャーナリストは「ウェブとは、番号をタイプすることで情報を探す手段である」と記事に書いていた[6]。空コマンド(キャリッジ・リターン)を入力するとページが下にスクロールされ、"u
" というコマンドで上にスクロールできる。"b
" というコマンドを入力すると閲覧履歴上の前のページに戻ることができ、新たなページを閲覧したい場合は "g http://...
" のようにURLを入力する[31]。
このブラウザはウェブページ編集機能を持たず、単に閲覧するだけである。開発者の1人ロバート・カイリューはこれを問題とし、次のように述べている。
「プロジェクト全体の最大の誤りは Line Mode Browser を一般公開したことだったと今にして思う。それによってインターネット・ハッカーたちが素早くアクセスできたが、編集機能のない受動的なブラウザの観点しか提供しなかった」[11]
機能と特徴
[編集]Line Mode Browser はクロスプラットフォームとなるよう設計された。公式に移植されたプラットフォームとしては、Apollo/Domain[32]、IBM RS/6000[32]、DECstation/Ultrix[32]、VAX/VMS[32]、VAX/Ultrix[32]、MS-DOS[13]、UNIX[13][33]、Windows[33]、Mac OS[33]、Linux[33]、MVS[34]、VM/CMS[34]、FreeBSD[35]、Solaris[35]、Mac OS X[35]がある。File Transfer Protocol (FTP)、Gopher、Hypertext Transfer Protocol (HTTP)、Network News Transfer Protocol (NNTP)、Wide Area Information Server (WAIS) といった各種プロトコルをサポートしている[1][17][36]。
また、rlogin[17]、telnet[17]、ハイパーリンク、キリル文字サポート(1994年11月25日のバージョン2.15で追加)[1]、プロキシクライアントとしての設定[37]といった機能もある。バックグラウンドプロセスとして起動してファイルのダウンロードを行うこともできる[28]。Line Mode Browser は、文字実体参照の解釈、複数の空白を詰めない、テーブルとフレームのサポートなどの問題がある[38]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e Berners-Lee, Tim (23 April 1998). “Change History of Line Mode Browser”. World Wide Web Consortium. 2010年6月2日閲覧。
- ^ Kahan, Jose (2005年10月21日). “Release Notes for Libwww”. World Wide Web Consortium. 2016年6月8日閲覧。
- ^ Pellow, Nicola (1991年2月). “LM_Availability -- /Talk_Feb-91”. World Wide Web Consortium. 2010年8月10日閲覧。
- ^ Nielsen, Henrik Frystyk (1995年4月). “How can I download a Document?”. World Wide Web Consortium. 2010年8月10日閲覧。
- ^ Bolso, Erik Inge (8 March 2005). “2005 Text Mode Browser Roundup”. Linux Journal. 2010年8月5日閲覧。
- ^ a b Berners-Lee, Tim. “Frequently asked questions - What were the first browsers?”. World Wide Web Consortium. 2011年7月26日閲覧。
- ^ a b c d “Ten Years Public Domain for the Original Web Software”. CERN (30 April 2003). 2005年7月21日閲覧。
- ^ a b “How the web began”. CERN (2008年). 2010年7月25日閲覧。
- ^ Nielsen, Henrik Frystyk (4 May 1998). “WWW - The Libwww Line Mode Browser”. World Wide Web Consortium. 2010年6月9日閲覧。
- ^ Berners-Lee, Tim. “W3 Concepts”. World Wide Web Consortium. 2005年7月20日閲覧。 “The W3 principle of universal readership is that once information is available, it should be accessible from any type of computer, in any country, and an (authorized) person should only have to use one simple program to access it.”
- ^ a b c d “Interview Robert Cailliau on the WWW Proposal: "How It Really Happened."”. Institute of Electrical and Electronics Engineers (November 1997). 2010年8月18日閲覧。[リンク切れ]
- ^ Berners-Lee, Tim; Fischetti, Mark (1999). Weaving the Web. p. 29. "[...] we needed help. Ben Segal [...] spotted a young intern named Nicola Pellow."
- ^ a b c Stewart, Bill. “Web Browser History”. Living Internet. 2010年6月2日閲覧。
- ^ Cailliau, Robert (1995年). “A Little History of the World Wide Web”. World Wide Web Consortium. 2010年8月7日閲覧。 “Technical Student Nicola Pellow (CN) joins and starts work on the line-mode browser.”
- ^ Eck, C. (December 1985). “PRIAM and VMEbus at CERN”. VMEbus in Physics Conference 2011年7月26日閲覧。.
- ^ a b Crémel, Nicole (5 April 2001). “A Little History of the World Wide Web”. CERN. 2010年6月2日閲覧。
- ^ Gillies, James; Cailliau, Robert (2000). How the Web Was Born. pp. 345. ISBN 0192862073
- ^ Stewart, Bill. “Tim Berners-Lee, Robert Cailliau, and the World Wide Web”. Living Internet. 2010年7月26日閲覧。
- ^ Berners-Lee, Tim (6 June 1991). “Re: Qualifiers on Hypertext links...”. 2010年7月28日閲覧。 “We have a prototype hypertext editor for the NeXT, and a browser for line mode terminals which runs on almost anything.”
- ^ Gillies, James; Cailliau, Robert (2000). How the Web Was Born. p. 205. ISBN 0192862073
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- ^ “Line Mode Browser”. World Wide Web Consortium (3 November 1992). 2010年7月21日閲覧。
- ^ Pellow, Nicola (1991年2月). “Features_of_LM -- /Talk_Feb-91”. World Wide Web Consortium. 2010年8月10日閲覧。
- ^ Berners-Lee, Tim (3 November 1992). “Commands”. CERN/World Wide Web Consortium. 2010年7月24日閲覧。
- ^ a b c d e Berners-Le, Tim. “Installation”. 2010年11月16日閲覧。 ログイン必要
- ^ a b c d Nielsen, Henrik Frystyk (1 April 1999). “List of Platforms for libwww”. World Wide Web Consortium. 2010年6月9日閲覧。
- ^ a b “WWW people”. World Wide Web Consortium. 2010年6月15日閲覧。
- ^ a b c “W3C libwww libraries”. PhysioNet. Cambridge, MA: University of São Paulo (19 March 2008). 2010年5月30日閲覧。
- ^ “Defining a News Server”. World Wide Web Consortium (9 December 1996). 2010年6月28日閲覧。
- ^ Nielsen, Henrik Frystyk (9 August 1997). “Libwww - the W3C Sample Code Library README”. World Wide Web Consortium. 2010年8月11日閲覧。
- ^ Tobias, Daniel R. (4 April 2010). “"Brand-X" Browsers -- Alphabetical List: A-G”. 2010年7月5日閲覧。
参考文献
[編集]- Gay, Martin (1 June 2000). Recent advances and issues in computers. Greenwood Publishing Group. p. 121. ISBN 9781573562270
- Gillies, James; Cailliau, Robert (15 January 2000). How the Web was Born: The Story of the World Wide Web. Oxford University Press. ISBN 0192862073
- December, John; Randall, Neil (1994). The World Wide Web unleashed. Sams Publishing. ISBN 1575210401
- Kantor, Andrew (1995). 60 minute guide to the Internet: including the World-Wide Web. IDG Books Worldwide. ISBN 1568843429