メリーベル・ポーツネル
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メリーベル・ポーツネル(1744年 - 1879年)は、1972年2月から1976年5月にかけて主に『別冊少女コミック』(小学館)に連載された漫画『ポーの一族』(萩尾望都)全編を通してのヒロイン。架空の人物。イギリス貴族エヴァンズ伯爵と、うら若き愛人メリーウェザーとの間に生まれた第2子。女性。
連載終了から40年ぶりに発表された「春の夢」(『月刊フラワーズ』2016年7月号、2017年3月 - 7月号)の回想シーンに登場する。
登場作品
[編集]- すきとおった銀の髪(『別冊少女コミック』1972年3月号)
- ポーの村(『別冊少女コミック』1972年7月号)
- ポーの一族(『別冊少女コミック』1972年9月 - 12月号)
- メリーベルと銀のばら(『別冊少女コミック』1973年1月 - 3月号)
- エヴァンズの遺書(『別冊少女コミック』1975年1月 - 2月号)
なお、以下の作品でエドガーとアランの回想の中に登場している(日記等の記録や名前だけの登場作品は除く)。
- 小鳥の巣(『別冊少女コミック』1973年4月 - 7月号)
- ペニー・レイン(『別冊少女コミック』1975年5月号)
- はるかな国の花や小鳥(『週刊少女コミック』1975年37号)
- エディス(『別冊少女コミック』1976年4月 - 6月号)
- 春の夢(『月刊フラワーズ』2016年7月号、2017年3月 - 7月号)
経歴
[編集]1744年に生誕し、4つ違いの兄のエドガーと共に森の中に捨てられるが、スコッティ村[1]の老ハンナ・ポーに拾われ彼女の館で育てられることになる。しかし、優しい老ハンナの正体はバンパネラ(吸血鬼)「ポーの一族」であり、1751年、メリーベルが7歳のとき、バンパネラの秘密の儀式を目撃して愛する妹を巻き添えにすることを恐れたエドガーの意向により、ロンドンのアート男爵家に養女に出される。ロンドンで兄エドガーと再会する日を待ちわびながら、6年の歳月が流れる。
1757年、13歳のとき、エヴァンズ伯爵家の長男オズワルドと次男ユーシスに出会い、やがてユーシスと恋し合うようになる。ところが、エヴァンズ伯爵が実はエドガーとメリーベルの実の父親で、オズワルドは2人の母親違いの兄、さらにユーシスはオズワルドの父親違いの弟であった。エドガーとメリーベルがかつて森の中に捨てられたのは、エヴァンズ伯爵の愛人であった母メリーウェザーの死後、伯爵が2人を正式に引き取ろうとしたため、本妻である伯爵夫人の逆鱗(げきりん)に触れ、彼女の召使いの手によって森の中に置き去りにされたものであった。
メリーベルと、憎き愛人そっくりの娘に最愛の息子を奪われることを恐れた母との板挟みにあったユーシスは、どちらをも選ぶことができず自ら命を絶つ。その後メリーベルはエヴァンズ伯爵家の養女となるが、彼女の前に姿を現したエドガーがバンパネラであることを承知の上で、自らエドガーについて行くことを選ぶ。そうしてポーの一族であるポーツネル男爵夫妻の養女となったメリーベルは、以後、少女の姿のまま男爵夫妻とエドガーと共に4人で100年以上の時を過ごすことになる(「メリーベルと銀のばら」)。
1879年、ポーツネル男爵一家は新しい仲間を求めて市(シティ)[2]に行き、そこでメリーベルはアラン・トワイライトと出会う。亡き婚約者ロゼッティ・エンライトにうりふたつのメリーベルはアランから恋され、やがてプロポーズされる。そして1度はその申し出を断りはするものの、それでも好きだというアランに「わたしたちといっしょに、ときをこえて遠くへいく?」と誘いかける。
しかし、その後ジャン・クリフォード医師にバンパネラであることを見破られて銀の弾丸を撃ち込まれ、消滅する(「ポーの一族」)。
人物
[編集]濃い茶色の瞳[3]に銀色の巻き毛[4]を肩より長く伸ばした13歳の少女。その銀髪を象徴するかのように、彼女の登場シーンではしばしば“すきとおった銀の髪”の少女の歌が歌われる。
明るく純真、可憐(かれん)な永遠の少女。愛らしくかつ弱々しい吸血鬼として描かれており、人間の生き血を吸う吸血鬼でありながら吸血行為を忌避している様子も見られる[5]。その愛らしさゆえに年齢を問わず彼女に想いを寄せた男性は数多い[6]。
ただし、弱々しくはかなげなイメージは、誤って銃で撃たれて瀕死(ひんし)の重傷を負った「ポーの村」と、彼女が消滅した「ポーの一族」の印象に負うところが大きい。 人間であった頃や一族に加わった当初などは、森を駆け回り木登りをしたり[7]、スケートをしたりする[8]など活動的な面もあった。性格面でも同様で、人間であった頃は我が強く狂信するタイプであると評されている[9]。しかし、一族の血が合わなかったためか、徐々に身体が弱くなり、それにつれはかなさ、しとやかさが増していったようである。
バンパネラになって以降、エドガーのように人間に戻りたいような素振りはほとんど見られない。しかし、楽しそうに歌を歌ったり森や野原を駆け回ったりする姿や、アーネストやアランから告白された際に心から申し訳なく思っている姿から[10]、人間であった頃とほとんど変わらない心を持ち続けた様子がうかがえる。
彼女の心の大半は最愛の兄エドガーによって占められており[11]、それは人間であった頃から一族に加わってからも一貫して変わらず、唯一の例外は、「メリーベルと銀のばら」においてユーシスと恋し合っていたときだけである。
エドガーにとってもメリーベルがすべてであり[12]、彼女の消滅後もエドガーの向こう半分の心を占め続ける。
名前の由来
[編集]エドガーの名は、エドガー・アラン・ポーに由来することは作者自身により明らかにされているが[13]、メリーベルの名前についてはその由来を作者は明らかにしていなかった。そのため、エドガー・アラン・ポーに13歳で嫁いだ妻ヴァージニアのことをポーがつづった詩「アナベル・リー」が由来であるとする説[14]や、「ベッシー・ベルとメリー・グレー」というマザーグースが由来であるという説[15]など、諸説が存在していた。しかし、2018年4月、作者によって「「メリーベル」は「メリー××」にしたいと思ったから。「メリーベル」のベル (belle) には「美しい」という意味が含まれているので、自分でもぴったりとしたものがつけられたと思った。」と明らかにされた[16]。
他作品での引用
[編集]- 行方不明になった女子高生、今井厚子はロックバンド『ポーの一族』の主人公たち(栗本薫・石森信・加藤泰彦)のマスコットで、主人公たちはバンド名を『メリーベルとポーの一族』に変えて彼女をバンドに入れようと話し合っていた[17]。
- 『ハレーション・ゴースト』(笹本祐一)
- 『妖精作戦』シリーズの主人公の友人・沖田玲郎(同作では主人公)が出会った雪女について「相手は妖怪変化だぞ。いいもんもくそもあるか」と言ったところ、友人たちが口々に自身のお気に入りの妖怪変化の名を挙げる中、そのうちの1人が「メリーベルは吸血鬼だけどかーいーんだぞお」と言っている[18]。
- いつも沈丁花の陰にたたずんでいる聖ミカエル学園高等部1年生の沈丁花娘はメリーベルのパロディとして描かれており、髪が木の枝にからまったところを主人公の1人、斎木和音にほどいてもらうシーンを見た司城史緒と更科柚子が、「あのシーンは『ポーの一族』だぞ」と『ポーの一族』談義を始めている[19]。
- 「ヤングユーコミックス」5巻のカラー扉に、ヒロインの藤原百恵がメリーベルに扮装しているイラストが描かれている[20]。
- 登場人物の1人、メリーベル・ガジットの名前はメリーベル・ポーツネルから取られた[21]。
- 『ハチミツとクローバー』(羽海野チカ)
メリーベルを演じた声優・俳優
[編集]ラジオドラマ
[編集]ドラマCD
[編集]- いのくちゆか
- 「連続ラジオドラマ ポーの一族」放送終了後、各4話ずつ収録で全6巻が発売された「連続ラジオドラマ ポーの一族」ディレクターズカット版にて。
舞台
[編集]脚注
[編集]- ^ 「ポーの一族」構想メモ(『週刊少女コミック フラワー・デラックス』1976年8月28日号に掲載)には「イギリス、山間」と記されているのみで、それ以上の所在は明らかではない。なお、構想メモでは村の名称は「ロビン村」と記されている。
- ^ 作品の中では「市(シティ)」と呼ばれるだけで地名が明らかにされていないが、「ポーの一族」構想メモには「イギリス、ドーバー」と記されている。
- ^ フラワーコミックス第1巻・第2巻のカバーイラストや「エヴァンズの遺書」前編のカラー扉など、カラーイラストではすべて黒っぽい茶色の瞳で描かれている。
- ^ 「小鳥の巣」で「銀の髪の少女」、「ペニーレイン」で「ぼくの愛 銀の髪」と、それぞれエドガーが回想している。また、「エヴァンズの遺書」前編のカラー扉で(青っぽい色だが)銀色の髪のイメージで描かれている。ただし、フラワーコミックス第2巻のカバーイラストなどのように、金髪のイメージ(実際には黄色)で描かれたカラーイラストも存在する(萩尾望都原画展 物販催事情報 『Cher Marrybell』)。
- ^ 兄エドガーから血を分けてもらう以外にメリーベルの吸血シーンはなく、「ポーの一族」では「悪いわ……このところいつもだもの……」「ごめんなさい……血をくれたのね……わたし……いつもやっかいかけて……」と、エドガーから血を分けてもらうことにすら遠慮している。
- ^ 兄エドガーを別として、ユーシスとアラン以外にも彼女に思いを寄せた者に「すきとおった銀の髪」のチャールズ、「メリーベルと銀のばら」のオズワルド、「エヴァンズの遺書」のアーネストがおり、初めはメリーベルを警戒していた「エヴァンズの遺書」のロジャー・エヴァンズでさえ、最後には一緒にジンチョウゲの歌を歌った彼女の姿を思い起こしている。
- ^ 1757年、「メリーベルと銀のばら」の中で、オズワルドとその友人たちに「おてんば」と評されている。
- ^ 1820年、「エヴァンズの遺書」の中で、アーネストやリンダたちとスケートをしている。
- ^ 「メリーベルと銀のばら」の中で、マドンナが「弱そうに見えて、わたしなんかの百倍も我の強い子だわ」と評している。
- ^ 「エヴァンズの遺書」の中でアーネストから告白されたときには「あなたがいくらわたしを好きでも愛せない。ごめんなさい、ごめんなさい。」と心の中で謝り、「ポーの一族」の中でアランのプロポーズを断っている際には涙まで浮かべている。
- ^ 「エヴァンズの遺書」の中でアーネストから告白されたとき、「エドガーだけしかわたしの世界にいないのよ。恋なんてできない。」と独白している。
- ^ エドガーは、「ポーの村」の中でグレンスミスに「メリーベルのためにだけぼくは生きてるんだ」と激白し、「ポーの一族」においても「ぼくの愛、ぼくの命」と独白している。
- ^ 『別冊少女コミック』1976年8月号の「少年たちは今どこに!?」(作者と羽仁未央との対談)で次のやりとりがある。
- 未央「ところで『ポーの一族』のエドガーやアランという名まえは怪奇小説家のエドガー・アラン・ポーから取ったのですか?」
- 萩尾「そうです。ゴロ合わせみたいなもンですね。」
- ^ 『ふしぎの国の『ポーの一族』』(いとうまさひろ著 新風舎文庫 2007年 ISBN 9784289503544)より。
- ^ 『マザーグースと日本人』(鷲津名都江著 吉川弘文館 2001年 ISBN 4642055290)の「コミックスのマザーグース出典一覧」より。
- ^ “『ポーの一族の世界 漫画の魅力』の講演会 2018.4.22のレポート”. あしたの糧. 2018年5月4日閲覧。
- ^ 栗本薫『ぼくらの時代』(講談社文庫)参照。
- ^ 笹本祐一『ハレーション・ゴースト』(創元SF文庫)参照。
- ^ 川原泉『笑う大天使』(花とゆめコミックス1巻)参照。
- ^ 登場人物の1人高橋 薫扮するエドガーとともに描かれ、イラストの中で「メリーベルというよりピノコです。血色よくってすみません。」とつぶやいている(後ろに登場人物の1人織田圭二がブラック・ジャックに扮装して描かれている)。
- ^ 『∀ガンダム・フィルムブック』(角川書店)参照。
- ^ 萩尾望都対談集『マンガのあなた * SFのわたし』(河出書房新社)第8章 羽海野チカ「全部、萩尾作品から学びました」参照。
- ^ “モーニング娘。天気組オフィシャルブログ 「メリーベルに憧れる。小田さくら」”. モーニング娘。天気組オフィシャルブログ. 2016年3月19日閲覧。