岡本薫明
岡本薫明 | |
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第15代 財務事務次官 | |
任期 2018年7月27日 – 2020年7月20日 | |
首相 | 安倍晋三 |
前任者 | 矢野康治 (事務代理) |
後任者 | 太田充 |
財務省主計局長 | |
任期 2017年7月5日 – 2018年7月27日 | |
首相 | 安倍晋三 |
前任者 | 福田淳一 |
後任者 | 太田充 |
財務省大臣官房長 | |
任期 2015年7月7日 – 2017年7月5日 | |
首相 | 安倍晋三 |
前任者 | 福田淳一 |
後任者 | 矢野康治 |
岡本 薫明(おかもと しげあき、1961年2月20日[1] - )は、日本の元財務官僚。第15代財務事務次官。日本たばこ産業(JT)取締役副会長。
経歴
[編集]愛媛県新居浜市出身[2]。1979年 愛光高等学校卒業。同級生に谷脇康彦総務審議官や安永竜夫三井物産社長がいる[3]。1983年 東京大学法学部第2類(公法コース)卒業[4]、旧大蔵省(現財務省)入省。1991年 近藤内閣官房副長官秘書官。1993年、内閣不信任決議に伴う衆議院解散後、大蔵省に復帰し主計局農林水産係主査に就任。米政策を担当し、食糧管理法廃止や伴う主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律制定について、農林水産省の大村秀章らと検討を進めた。1995年には阪神・淡路大震災に対応。その後、文部係、公共事業係の主査を務めた[5]。
イギリス王立国際問題研究所研究員等を歴任。2004年 財務省主計局調査課長。2006年 財務省主計局主計官。2009年から財務省大臣官房秘書課長となり、2012年8月に財務省主計局次長、2015年 財務省大臣官房長。この間、中央大学大学院法務研究科客員教授を兼務[5][6][7]。2017年 財務省主計局長[8]。2018年 森友学園問題に絡み文書厳重注意処分[9]。同年 財務事務次官就任。通常、財務次官ポストは1年で交代するが、2019年7月から異例の2年目に突入[10]。この間、相次ぐ不祥事を受けて設置された「財務省再生プロジェクト」の本部長などを務めた[11]。2020年7月20日 退任[12]。2020年11月1日、ドリームインキュベータ顧問[13]。2020年12月1日、アクセンチュア顧問[14]、日本生命保険特別顧問[14]。2021年12月、読売新聞大阪本社監査役[15]、読売新聞西部本社監査役[16]。2022年3月、日本たばこ産業(JT)取締役副会長[17]。戸田みらい基金理事[18]。
人物
[編集]高校ではソフトボール部[19]、大学時代は準硬式野球部に所属した。阪神タイガースファン[20]。
「謙虚で威張らず、敵をつくらない」とされ、「怒る相手の懐に飛び込んで、ケンカせずに説得して帰ってくる不思議な力がある」と評される[20]。予算編成を担当する主計局が長く、金融庁では金融危機対応室長として2003年に破綻寸前であったりそな銀行への公的資金注入(実質国有化)を担当するなど、修羅場をくぐった[21]。りそな銀行への対応については、「ハンドリングを誤れば日本経済はあすにも奈落の底に落ちるという恐怖感を味わった」と当時を振り返っている[20]。
2018年3月に女性記者へのセクハラ問題により福田淳一が財務次官を辞任[22]したため、財務省トップのポストが空席になるという事態が生じた。主計局長であった岡本はかねてより「(次官候補の)本命」とされていたが[23]、財務省が学校法人「森友学園」との土地取引を巡る決裁文書を改竄した(森友学園問題)当時、文書管理の責任者の官房長だったため、文書厳重注意処分とされており[9]、直後の次官就任には異論もあった[24]。そのため福田の後任次官を巡っては、朝日新聞が星野次彦[25]、日経新聞が浅川雅嗣[26]と報じるなど、大手メディアでも誤報が飛び交うという、異例の迷走状態となった。裏舞台では政官界での権力闘争があったとされる[27][28]。最終的には、麻生太郎財務大臣(当時)が「改ざん自体には関与していないという調査報告だった」「今後、財務省がやるべきとりまとめなどに関して、岡本氏の場合はそれを補って余りあるものがある」として、2018年7月に岡本を第15代財務事務次官に昇格させた[29]。このとき、「今回の人事はベストだという認識か」という記者の質問に対し、麻生財務相は「(ベストだと)思ったから私が任命した。人事権はあなたにあるんじゃない。俺にあるんだ」と答えた[30]。岡本自身は次官就任に際し、「決裁文書の改ざんという重大な問題を引き起こし、国民の信頼を大きく損ねた。全省的な問題ととらえている。近畿財務局の職員は反対したのに、なぜ止められなかったか」と述べ、組織の再建を抱負とし[31]、不祥事再発防止のために有識者会議を中心とした「財務省再生プロジェクト」を立ち上げ、自ら本部長を務めた[11]。
財務次官としての手堅い手腕が首相官邸に評価され、また「去年は本当に組織存亡の危機だった。岡本さんでなかったらここまで求心力は保てなかった」などの省内の声もあり[32]、財務次官ポストは通常1年で交代するにもかかわらず、2019年7月から異例の2年目に突入した[10]。財務省のトップである次官が留任となり2年目に突入するのは、旧民主党政権下の2012年に消費増税法を成立に導いた勝栄二郎以来[32]で、中央省庁再編以降では4人目(過去に武藤敏郎、細川興一、勝栄二郎)。これにより、平成最後かつ令和最初の財務次官となった。任期中は2019年10月の消費税率10%への引き上げを主導したほか、渋沢栄一らを肖像とする新紙幣の導入を立案した[33]。2020年7月退任[12]。
退任後は日本生命保険特別顧問[14]などを経て、2022年3月に日本たばこ産業(JT)取締役副会長[17]に就任。
略歴
[編集]- 国家公務員上級甲種(法律)試験合格
- 1983年4月:大蔵省入省(理財局国有財産総括課)[34]
- 1986年:主計局総務課調査主任[35]
- 1987年:主計局総務課企画係長[36]
- 1988年7月:相馬税務署長
- 1989年7月:国税庁長官官房人事課課長補佐(服務、給与一、二)[37]
- 1991年6月:大臣官房付兼内閣官房内閣内政審議室
- 1993年7月:主計局主計官補佐(農林水産第三係主査)
- 1995年6月:主計局主計官補佐(農林水産第四係主査)
- 1996年7月:主計局主計官補佐(文部第一、二係主査)
- 1997年7月:主計局主計官補佐(公共事業総括、第一、二係主査)
- 1998年6月:大臣官房調査企画課課長補佐
- 1999年7月:イギリス王立国際問題研究所客員研究員
- 2001年7月:金融庁総務企画局総務課管理室長
- 2002年7月:金融庁監督局総務課金融危機対応室長
- 2004年7月:主計局調査課長
- 2006年7月:主計局主計官兼主計局総務課
- 2009年7月:大臣官房秘書課長
- 2012年8月:主計局次長(末席)
- 2013年7月:主計局次長(次席)
- 2014年7月:主計局次長(筆頭)
- 2015年7月:大臣官房長
- 2017年7月:主計局長
- 2018年7月:財務事務次官
- 2018年12月:文部科学省日本ユネスコ国内委員会委員
- 2020年7月:退官[12]、財務省顧問
- 2020年10月1日:富士通フューチャースタディーズ・センター顧問[14]
- 2020年11月1日:ドリームインキュベータ特別顧問[14][38]
- 2020年12月1日:アクセンチュア顧問[14]、フューチャー顧問[39][14]、日本生命保険特別顧問[14]
- 2021年1月:新時代戦略研究所アドバイザー[40]
- 2021年5月:ベクトル特別顧問[41]
- 2021年6月:よみうりランド監査役[42]
- 2021年7月:ハウスドゥ経営諮問委員[43]
- 2021年12月:読売新聞大阪本社監査役[15]、読売新聞西部本社監査役[16]
- 2022年3月:日本たばこ産業取締役副会長[17]
- 2022年6月:読売新聞東京本社監査役[44]
同期
[編集]- 太田充(第16代財務事務次官、主計局長、理財局長、大臣官房総括審議官)
- 星野次彦(国税庁長官、主税局長、国税庁次長、大臣官房審議官〈主税局担当〉)
- 武内良樹(財務官、国際局長、近畿財務局長、国際局次長)
- 飯塚厚(関税局長、国税庁次長、東海財務局長、理財局次長)
- 氷見野良三(金融庁長官、金融国際審議官)
- 浅野僚也(関東財務局長、大臣官房政策評価審議官)
- 小野尚(関東財務局長、金融庁総務企画局総括審議官)
- 佐々木清隆(金融庁総合政策局長、金融庁総務企画局総括審議官)
- 三井秀範(預金保険機構理事長、金融庁企画市場局長、金融庁検査局長)
- 松村武人(国立印刷局理事長、東京税関長。作家・芦崎笙)
- 中川真(駐スロバキア大使)
- 石川紀(名古屋税関長、神戸税関長)
- 小野哲(参議院事務局総務委員会調査室長)
- 片山一夫(横浜税関長、国税不服審判所次長)
- 上斗米明(国税庁長官官房総務課長で辞職)
- 亀水晋(東海財務局長)
- 川上尚貴(関東信越国税局長、税務大学校長)
- 河上洋右(英国公使)
- 神崎康史(アジア開発銀行予算人事経営システム局長)
- 菊地和博(まち・ひと・しごと創生本部事務局次長)
- 高橋康文(内閣法制局第三部長)
- 仲浩史(世界銀行副総裁)
- 橋本元秀(国土交通省政策統括官)
- 藤田博一(東京国税局長、日本銀行監事)
- 柴田善雅(大東文化大学国際関係学部教授)など。
脚注
[編集]- ^ 『読売年鑑 2017年版』(読売新聞東京本社、2017年)p.220
- ^ 「(3)財務省主計局長 岡本薫明氏(新居浜出身) 社会保障の見直し必要」2017年9月12日(火)(愛媛新聞)
- ^ 毎日フォーラム・霞が関人物録愛媛県・上毎日新聞会員限定有料記事 2019年12月10日 09時48分
- ^ 『東大人名録,第1部』1986年発行、52ページ
- ^ a b 「毎日フォーラム・課長補佐時財務省官房長・岡本薫明(56)」毎日新聞2017年7月10日
- ^ 「岡本 薫明」中央大学
- ^ 「官僚たちの夏、次官・局長級人事まるっと早わかり」日刊工業新聞2017年07月08日
- ^ 「財務次官に福田氏」日本経済新聞2017/7/4
- ^ a b 「財務省が処分する20人」日本経済新聞2018年6月4日
- ^ a b INC, SANKEI DIGITAL (2019年6月16日). “岡本財務次官留任へ 異例の2年目”. 産経ニュース. 2020年7月23日閲覧。
- ^ a b “財務省、不祥事再発防止へ 有識者会議設置”. 日本経済新聞 (2019年6月21日). 2020年7月23日閲覧。
- ^ a b c “令和2年7月20日発令” (PDF). 財務省 (2020年7月20日). 2020年7月26日閲覧。
- ^ 【ドリームインキュベータ】前財務事務次官・岡本 薫明氏を特別顧問に招聘 PR TIMES 2020年10月29日
- ^ a b c d e f g h 国家公務員法第106条の25第1項等の規定に基づく国家公務員の再就職状況の報告(令和2年10月1日~同年12月31日分) 令和3年3月26日 内閣官房 内閣人事局
- ^ a b 人事 読売新聞大阪本社 社会 朝刊総合面 毎日新聞 2021/12/10
- ^ a b 国家公務員法第106条の25第1項等の規定に基づく国家公務員の再就職状況の報告(令和3年10月1日~同年12月31日分)令和4年3月 2 5 日 内 閣 官 房 内 閣 人 事 局
- ^ a b c JT副会長に岡本元財務次官時事通信2021年11月24日17時45分
- ^ 一般財団法人戸田みらい基金 役員等名簿
- ^ “毎日フォーラム・霞が関人物録:愛媛県・上”. 毎日新聞. 2022年7月23日閲覧。
- ^ a b c “財務次官に岡本氏 本命が背負う組織再建”. 日本経済新聞 (2018年7月27日). 2022年7月23日閲覧。
- ^ “安定重視の財務次官続投 「官邸追従」に若手不満も”. 日本経済新聞 (2019年7月2日). 2022年7月23日閲覧。
- ^ “政府:福田財務次官の辞任を閣議了承 セクハラ疑惑”. 毎日新聞. 2022年7月23日閲覧。
- ^ “財務次官、処分受けても本命昇格 残る森友問題”. 日本経済新聞 (2018年7月28日). 2022年7月23日閲覧。
- ^ “財務次官人事激震レポ 「外された灰色の本命候補」の復活”. NEWSポストセブン. 2022年7月23日閲覧。
- ^ “財務事務次官に星野主税局長 福田氏の後任、財務省調整:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2022年7月23日閲覧。
- ^ “財務次官に浅川財務官 財務相が方針”. 日本経済新聞 (2018年6月10日). 2022年7月23日閲覧。
- ^ “迷走3カ月で本命に戻った財務次官人事の裏 | 国内政治”. 東洋経済オンライン (2018年7月28日). 2022年7月23日閲覧。
- ^ “財務省“セクハラ次官”後任は 「最強官庁」トップ人事の内幕”. デイリー新潮. 2022年7月23日閲覧。
- ^ “麻生財務相「財務省再生が極めて重要」”. 日本経済新聞 (2018年7月27日). 2022年7月23日閲覧。
- ^ “麻生大臣「人事権は私に」財務次官に処分した岡本氏”. テレ朝news. 2022年7月23日閲覧。
- ^ “財務省再編は不要 岡本次官、文書改ざんで首相の忖度否定”. 日本経済新聞 (2018年8月23日). 2022年7月23日閲覧。
- ^ a b “安定重視の財務次官続投 「官邸追従」に若手不満も”. 日本経済新聞 (2019年7月2日). 2022年7月23日閲覧。
- ^ “新紙幣、異例の5年前公表 改元と相乗効果狙う”. 日本経済新聞 (2019年4月10日). 2022年7月23日閲覧。
- ^ 『[インサイド財務省]人材(3)志ある若者来たれ(連載)』読売新聞 東京朝刊 A経
- ^ 『職員録 第1部』大蔵省印刷局、1987年発行、496頁
- ^ 『官報 第18406〜18431号』1988年発行
- ^ 『財務省名鑑 2019年版』時評社、2019年1月9日発行、3頁
- ^ 【ドリームインキュベータ】前財務事務次官・岡本 薫明氏を特別顧問に招聘
- ^ 顧問の招聘に関するお知らせ
- ^ 国家公務員法第106条の25第1項等の規定に基づく国家公務員の再就職状況の報告(令和3年1月1日~同年3月31日分) 令和3年6月25日 内閣官房 内閣人事局
- ^ 役員紹介 Board Member 岡本 薫明 特別顧問 岡本 薫明 Shigeaki Okamotoベクトル
- ^ 国家公務員法第106条の25第1項等の規定に基づく国家公務員の再就職状況の報告(令和3年4月1日~同年6月30日分)国家公務員法第106条の25第1項等の規定に基づく国家公務員の再就職状況の報告(令和3年4月1日~同年6月30日分)
- ^ 国家公務員法第106条の25第1項等の規定に基づく国家公務員の再就職状況の報告(令和3年7月1日~同年9月30日分)令 和 3 年 12 月 21 日 内 閣 官 房 内 閣 人 事 局
- ^ 国家公務員法第106条の25第1項等の規定に基づく報告の概要(令和4年10月1日〜同年12月31日分) 人事院 令和5年3月24日(PDF)
官職 | ||
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先代 福田淳一 | 財務事務次官 2018年 - 2020年 | 次代 太田充 |
先代 福田淳一 | 財務省主計局長 2017年 - 2018年 | 次代 太田充 |
先代 福田淳一 | 財務省大臣官房長 2015年 - 2017年 | 次代 矢野康治 |