1986年のナショナルリーグチャンピオンシップシリーズ

1986年ナショナルリーグ
チャンピオンシップシリーズ
チーム 勝数
ニューヨーク・メッツ 4
ヒューストン・アストロズ 2
シリーズ情報
試合日程 10月8日–15日
観客動員 6試合合計:29万9316人
1試合平均:04万9886人
MVP マイク・スコット(HOU)
殿堂表彰者 ゲイリー・カーター(NYM捕手)
ヨギ・ベラ(HOUコーチ[注 1]
ノーラン・ライアン(HOU投手)
ダグ・ハーヴェイ(審判員)
チーム情報
ニューヨーク・メッツ(NYM)
シリーズ出場 13年ぶり3回目
GM フランク・キャッシェン
監督 デービー・ジョンソン
シーズン成績 108勝54敗・勝率.667
東地区優勝

ヒューストン・アストロズ(HOU)
シリーズ出場 06年ぶり2回目
GM ディック・ワグナー
監督 ハル・ラニアー
シーズン成績 096勝66敗・勝率.593
西地区優勝

 < 1985
NLCS
1986

1987 > 

 < 1985
ALCS
1986

1987 > 
ワールドシリーズ

1986年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)ポストシーズンは10月7日に開幕した。ナショナルリーグの第18回リーグチャンピオンシップシリーズ(18th National League Championship Series、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、翌8日から15日にかけて計6試合が開催された。その結果、ニューヨーク・メッツ東地区)がヒューストン・アストロズ西地区)を4勝2敗で下し、13年ぶり3回目のリーグ優勝およびワールドシリーズ進出を果たした。

両球団がリーグ優勝決定戦で対戦するのはこれが初めて。この年のレギュラーシーズンでは両球団は12試合対戦し、メッツが7勝5敗と勝ち越していた[1]。今シリーズは第5戦・第6戦が2試合連続で延長戦となり、第5戦は12回裏にメッツがサヨナラ勝利、第6戦はメッツが16回表に3点を奪ったあと裏に2失点したものの逃げ切った。合計で延長イニング数は10にのぼり、延長戦なしで7試合を戦うより多くのイニングをこなしたことになる[2]。また、第6戦は1試合のイニング数でポストシーズン最長記録を更新した[注 2][3]シリーズMVPには、第1戦と第4戦でいずれも完投勝利を挙げ、18.0イニングで防御率0.50・19奪三振・1与四球という成績を残したアストロズのマイク・スコットが選出された。メッツは、ワールドシリーズでもアメリカンリーグ王者ボストン・レッドソックスを4勝3敗で下し、17年ぶり2度目の優勝を成し遂げた。

当時、リーグ優勝決定戦の第1・2・6・7戦を本拠地で開催できる "ホームフィールド・アドバンテージ" は所属地区の持ち回りで決まっており、この年は本来であればナショナルリーグ東地区とアメリカンリーグ西地区の優勝球団に与えられるはずだった。しかし実際には、ナショナルリーグ西地区とアメリカンリーグ東地区の優勝球団がアドバンテージを得た。これは、アストロズの本拠地球場アストロドームが野球専用球場ではなく、アメリカンフットボールでも使用されるからである。今シリーズ第4戦開催予定日の10月12日、アストロドームではNFLヒューストン・オイラーズが試合を行うことになっていたため、シリーズは第3~5戦の開催地をメッツの本拠地球場シェイ・スタジアムへ移さざるを得ず、アドバンテージ付与地区を入れ替えた[4]

試合結果

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1986年のナショナルリーグ優勝決定戦は10月8日に開幕し、途中に移動日と雨天順延を挟んで8日間で6試合が行われた。日程・結果は以下の通り。

日付 試合 ビジター球団(先攻) スコア ホーム球団(後攻) 開催球場
10月08日(水) 第1戦 ニューヨーク・メッツ 0-1 ヒューストン・アストロズ アストロドーム
10月09日(木) 第2戦 ニューヨーク・メッツ 5-1 ヒューストン・アストロズ
10月10日(金) 移動日
10月11日(土) 第3戦 ヒューストン・アストロズ 5-6x ニューヨーク・メッツ シェイ・スタジアム
10月12日(日) 第4戦 ヒューストン・アストロズ 3-1 ニューヨーク・メッツ
10月13日(月) 第5戦 雨天順延
10月14日(火) 第5戦 ヒューストン・アストロズ 1-2x ニューヨーク・メッツ
10月15日(水) 第6戦 ニューヨーク・メッツ 7-6 ヒューストン・アストロズ アストロドーム
優勝:ニューヨーク・メッツ(4勝2敗 / 13年ぶり3度目)

第1戦 10月8日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
2回裏、先頭打者グレン・デービスの本塁打でアストロズが先制(1分12秒)
3回表、メッツ先頭打者ラファエル・サンタナのライナー性の打球を二塁手ビル・ドーランがダイビングキャッチしアウトに(50秒)
アストロズ先発投手マイク・スコットが14奪三振で完封勝利を挙げる(1分58秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
ニューヨーク・メッツ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0
ヒューストン・アストロズ 0 1 0 0 0 0 0 0 X 1 7 1
  1. 勝利マイク・スコット(1勝)  
  2. 敗戦ドワイト・グッデン(1敗)  
  3. 本塁打
    HOU:グレン・デービス1号ソロ
  4. 審判
    [球審]ダグ・ハーヴェイ
    [塁審]一塁: リー・ウェイヤー、二塁: フランク・プーリ、三塁: ダッチ・レナート
    [外審]左翼: ジョー・ウェスト、右翼: フレッド・ブロックランダー
  5. 試合開始時刻: 中部夏時間UTC-5)午後7時30分 試合時間: 2時間56分 観客: 4万4131人
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
ニューヨーク・メッツ ヒューストン・アストロズ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 L・ダイクストラ 1 B・ハッチャー
2 W・バックマン 2 B・ドーラン
3 K・ヘルナンデス 3 D・ウォーリング
4 G・カーター 4 G・デービス
5 D・ストロベリー 5 K・バス
6 M・ウィルソン 6 J・クルーズ
7 R・ナイト 7 A・アシュビー
8 R・サンタナ 8 C・レイノルズ
9 D・グッデン 9 M・スコット
先発投手 投球 先発投手 投球
D・グッデン M・スコット

第2戦 10月9日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
9回裏、ボブ・オヘーダがビリー・ハッチャーを三ゴロに打ち取り試合終了、メッツが1勝1敗のタイとする(47秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
ニューヨーク・メッツ 0 0 0 2 3 0 0 0 0 5 10 0
ヒューストン・アストロズ 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 10 2
  1. 勝利ボブ・オヘーダ(1勝)  
  2. 敗戦ノーラン・ライアン(1敗)  
  3. 審判
    [球審]リー・ウェイヤー
    [塁審]一塁: フランク・プーリ、二塁: ダッチ・レナート、三塁: ジョー・ウェスト
    [外審]左翼: フレッド・ブロックランダー、右翼: ダグ・ハーヴェイ
  4. 試合開始時刻: 中部夏時間UTC-5)午後7時25分 試合時間: 2時間40分 観客: 4万4391人
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
ニューヨーク・メッツ ヒューストン・アストロズ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 L・ダイクストラ 1 B・ハッチャー
2 W・バックマン 2 B・ドーラン
3 K・ヘルナンデス 3 P・ガーナー
4 G・カーター 4 G・デービス
5 D・ストロベリー 5 K・バス
6 M・ウィルソン 6 J・クルーズ
7 R・ナイト 7 A・アシュビー
8 R・サンタナ 8 D・ソン
9 B・オヘーダ 9 N・ライアン
先発投手 投球 先発投手 投球
B・オヘーダ N・ライアン

第3戦 10月11日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
6回裏、ダリル・ストロベリーの3点本塁打でメッツが同点に追いつく(1分14秒)
9回裏、メッツ先頭打者ウォーリー・バックマンがセーフティーバントを決めて出塁(1分58秒)
そのあと一死二塁でレニー・ダイクストラが逆転サヨナラ本塁打、メッツが2勝目を挙げる(1分11秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
ヒューストン・アストロズ 2 2 0 0 0 0 1 0 0 5 8 1
ニューヨーク・メッツ 0 0 0 0 0 4 0 0 2x 6 10 1
  1. 勝利ジェシー・オロスコ(1勝)  
  2. 敗戦デーブ・スミス(1敗)  
  3. 本塁打
    HOU:ビル・ドーラン1号2ラン
    NYM:ダリル・ストロベリー1号3ラン、レニー・ダイクストラ1号2ラン
  4. 審判
    [球審]フランク・プーリ
    [塁審]一塁: ダッチ・レナート、二塁: ジョー・ウェスト、三塁: フレッド・ブロックランダー
    [外審]左翼: ダグ・ハーヴェイ、右翼: リー・ウェイヤー
  5. 試合開始時刻: 東部夏時間UTC-4)午後0時20分 試合時間: 2時間55分 観客: 5万5052人
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
ヒューストン・アストロズ ニューヨーク・メッツ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 B・ドーラン 1 M・ウィルソン
2 B・ハッチャー 2 K・ミッチェル
3 D・ウォーリング 3 K・ヘルナンデス
4 G・デービス 4 G・カーター
5 K・バス 5 D・ストロベリー
6 J・クルーズ 6 R・ナイト
7 A・アシュビー 7 T・タフェル
8 C・レイノルズ 8 R・サンタナ
9 B・ネッパー 9 R・ダーリング
先発投手 投球 先発投手 投球
B・ネッパー R・ダーリング

第4戦 10月12日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
アストロズ先発投手マイク・スコットの投球(59秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
ヒューストン・アストロズ 0 2 0 0 1 0 0 0 0 3 4 1
ニューヨーク・メッツ 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 3 0
  1. 勝利マイク・スコット(2勝)  
  2. 敗戦シド・フェルナンデス(1敗)  
  3. 本塁打
    HOU:アラン・アシュビー1号2ラン、ディッキー・ソン1号ソロ
  4. 審判
    [球審]ダッチ・レナート
    [塁審]一塁: ジョー・ウェスト、二塁: フレッド・ブロックランダー、三塁: ダグ・ハーヴェイ
    [外審]左翼: リー・ウェイヤー、右翼: フランク・プーリ
  5. 試合開始時刻: 東部夏時間UTC-4)午後8時20分 試合時間: 2時間23分 観客: 5万5038人
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
ヒューストン・アストロズ ニューヨーク・メッツ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 B・ドーラン 1 L・ダイクストラ
2 B・ハッチャー 2 W・バックマン
3 P・ガーナー 3 K・ヘルナンデス
4 G・デービス 4 G・カーター
5 K・バス 5 D・ストロベリー
6 J・クルーズ 6 M・ウィルソン
7 A・アシュビー 7 R・ナイト
8 D・ソン 8 R・サンタナ
9 M・スコット 9 S・フェルナンデス
先発投手 投球 先発投手 投球
M・スコット S・フェルナンデス

第5戦 10月14日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
アストロズ先発投手ノーラン・ライアンが9イニングで12三振を奪う(1分30秒)
2回表一死一・三塁、ドワイト・グッデンがクレイグ・レイノルズを二ゴロ併殺に片付けアストロズの先制を阻止(50秒)
5回裏、ダリル・ストロベリーがライアンからソロ本塁打を放ち、メッツが1-1の同点に(49秒)
8回表一死二塁、グッデンがデニー・ウォーリングを左直に打ち取る。二塁走者ビル・ドーランが飛び出しており、併殺でイニング終了(47秒)
延長10回表、グッデンがビリー・ハッチャーを右飛に打ち取り10イニングをひとりで投げきる(29秒)
12回裏一死一・二塁、ゲイリー・カーターの中前打でメッツがサヨナラ勝利、リーグ優勝に王手をかける(1分12秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 R H E
ヒューストン・アストロズ 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 9 1
ニューヨーク・メッツ 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1x 2 4 0
  1. 勝利ジェシー・オロスコ(2勝)  
  2. 敗戦チャーリー・カーフェルド(1敗)  
  3. 本塁打
    NYM:ダリル・ストロベリー2号ソロ
  4. 審判
    [球審]ジョー・ウェスト
    [塁審]一塁: フレッド・ブロックランダー、二塁: ダグ・ハーヴェイ、三塁: リー・ウェイヤー
    [外審]左翼: フランク・プーリ、右翼: ダッチ・レナート
  5. 試合開始時刻: 東部夏時間UTC-4)午後1時30分 試合時間: 3時間45分 観客: 5万4986人
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
ヒューストン・アストロズ ニューヨーク・メッツ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 B・ドーラン 1 L・ダイクストラ
2 B・ハッチャー 2 W・バックマン
3 D・ウォーリング 3 K・ヘルナンデス
4 G・デービス 4 G・カーター
5 K・バス 5 D・ストロベリー
6 J・クルーズ 6 M・ウィルソン
7 A・アシュビー 7 R・ナイト
8 C・レイノルズ 8 R・サンタナ
9 N・ライアン 9 D・グッデン
先発投手 投球 先発投手 投球
N・ライアン D・グッデン

第6戦 10月15日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
9回表、メッツ打線が3安打2四球と犠牲フライで3点差を追いつく(1分38秒)
延長14回裏、ビリー・ハッチャーのソロ本塁打でアストロズが4-4の同点に(50秒)
16回裏、ジェシー・オロスコがケビン・バスを空振り三振に仕留めて試合終了、メッツのリーグ優勝が決定(1分38秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 R H E
ニューヨーク・メッツ 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 1 0 3 7 11 0
ヒューストン・アストロズ 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 2 6 11 1
  1. 勝利ジェシー・オロスコ(3勝)  
  2. 敗戦アウレリオ・ロペス(1敗)  
  3. 本塁打
    HOU:ビリー・ハッチャー1号ソロ
  4. 審判
    [球審]フレッド・ブロックランダー
    [塁審]一塁: ダグ・ハーヴェイ、二塁: リー・ウェイヤー、三塁: フランク・プーリ
    [外審]左翼: ダッチ・レナート、右翼: ジョー・ウェスト
  5. 昼間試合 試合時間: 4時間42分 観客: 4万5718人
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
ニューヨーク・メッツ ヒューストン・アストロズ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 M・ウィルソン 1 B・ドーラン
2 K・ミッチェル 2 B・ハッチャー
3 K・ヘルナンデス 3 P・ガーナー
4 G・カーター 4 G・デービス
5 D・ストロベリー 5 K・バス
6 R・ナイト 6 J・クルーズ
7 T・タフェル 7 A・アシュビー
8 R・サンタナ 8 D・ソン
9 B・オヘーダ 9 B・ネッパー
先発投手 投球 先発投手 投球
B・オヘーダ B・ネッパー

評価

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ハードボール・タイムズ』のクリス・ジャフは2011年10月、歴代のポストシーズン各シリーズについて、面白さの数値化を試みた。「1点差試合は3ポイント、1-0の試合ならさらに1ポイント」「サヨナラゲームは10ポイント、サヨナラが本塁打によるものならさらに5ポイント」「7試合制のシリーズが最終戦までもつれれば15ポイント」などというように、試合経過やシリーズの展開が一定の条件を満たすのに応じてポイントを付与することで、主観的ではなく定量的な評価を行った。その結果、その年の両リーグ優勝決定戦まで全262シリーズの平均が45ポイントのところ、今シリーズは132ポイントを獲得した。これは全シリーズ中6位、リーグ優勝決定戦に限れば1999年ナショナルリーグ(147.3ポイント)に次いで2位の高得点だった[2]

脚注

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注釈

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  1. ^ 殿堂入りは指導者としてではなく、捕手としての功績が評価されてのもの。
  2. ^ それまでの最長記録は、1916年のワールドシリーズ第2戦で14イニング。この記録はのちに、2005年のナショナルリーグディビジョンシリーズ(アストロズ対アトランタ・ブレーブス)第4戦が18イニングに更新した。

出典

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  1. ^ "1986 New York Mets Schedule," Baseball-Reference.com. 2021年3月9日閲覧。
  2. ^ a b Chris Jaffe, "The top ten postseason series of all-time," The Hardball Times, October 24, 2011. 2021年3月9日閲覧。
  3. ^ David Adler, "Relive the longest postseason games ever," MLB.com, October 29, 2020. 2021年3月9日閲覧。
  4. ^ Jim Sarni, Broadcast Sports, "ABC CHANNELS EFFORTS INTO PLAYOFFS," Sun Sentinel, October 4, 1986. 2021年3月9日閲覧。

外部リンク

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