やさしい悪魔

「やさしい悪魔」
キャンディーズシングル
初出アルバム『キャンディーズ1+12〜やさしい悪魔〜
B面 あなたのイエスタデイ
リリース
ジャンル アイドル歌謡曲
時間
レーベル CBSソニー
作詞・作曲 作詞:喜多條忠
作曲:吉田拓郎
チャート最高順位
  • 週間4位(オリコン
  • 1977年度年間27位(オリコン)
キャンディーズ シングル 年表
哀愁のシンフォニー
(1976年)
やさしい悪魔
(1977年)
暑中お見舞い申し上げます
(1977年)
収録アルバムキャンディーズ1+12〜やさしい悪魔〜
やさしい悪魔
(1)
20才の頃
(2)
テンプレートを表示

やさしい悪魔」(やさしいあくま)は、1977年3月1日に発売されたキャンディーズの13枚目のシングル。

解説

[編集]

「やさしい悪魔」は、それまでのキャンディーズの清楚なイメージを一新、アン・ルイスデザインによる大胆な衣装と“デビルサイン”を含めた斬新な振り付け、“大人化計画”に応えた詞曲も話題を呼んだ[1][2][3][4][5]喜多條忠の詞先で、作曲・吉田拓郎独特の“拓郎節”が展開される[2][4][5]。拓郎も、多くの楽曲提供の中でも特に「あぁ、俺すげー良い曲作った」と自身で評価する曲で、「文句なし。あの頃のキャンディーズにはない、その後の日本のポップス界にはない、60年代のアメリカンポップスのリズム&ブルースから来ているメロディライン」と解説している[6]。キャンディーズのベスト・ソングに挙げられる機会も多く[2][4][5][7]、キャンディーズファン・石破茂も「音楽的に完成度が一番高い名曲」と話し[8]、キャンディーズ自身も「私たちの代表曲」と話している[9]。発売の時点ではキャンディーズ最大のヒットを記録した[2][10]。解散コンサート時点でのシングル売上は累計52万枚(CBS・ソニー調べ)[11]

「やさしい悪魔」は音域の広い難曲で[2]、歌のうまいキャンディーズもレコーディングに苦戦し、「歌えません」と音を上げたと言われている[2][3]。これはキャンディーズファンだった作曲者の吉田拓郎が、レコーディングでキャンディーズに歌唱指導をしたいがために、わざと難しくしたと噂が出た[12]

レコードではサビとエンディングは3声和音、それ以外はソロ、ユニゾン、2声和音とバラエティに富む歌唱である。サビやスキャットで始まらないシングル曲としてはめずらしく、冒頭部付近に和音がある(この曲以外には、終始3声和音の「あなたに夢中」のみが該当する)。この和音は、歌番組などでは当初はレコードと同じように歌われたが、間もなくユニゾンに置き換えられた。

レコーディングでは、吉田拓郎がギター持参でキャンディーズと共にスタジオに入り、付きっ切りで歌唱指導[2]、自らも試行錯誤を重ねた[10]コーラスで参加した他、印象的な忍び寄る悪魔のようなイントロの靴音は[2]、拓郎が様々な靴の音を試し、スタジオに同席していたCBSソニーの若松宗雄が履いていたブーツで作り上げたものである[2][3][4][10]

本楽曲で『第28回NHK紅白歌合戦』へキャンディーズは3年連続3回目の出場を果たしたが、これが最後の紅白出演となった(但し、田中好子は14年後の1991年『第42回NHK紅白歌合戦』に特別審査員として、伊藤蘭は46年後の2023年『第74回NHK紅白歌合戦』にソロとして出演。

「やさしい悪魔」「あなたのイエスタデイ」ともに4月リリースのアルバム『キャンディーズ1+12〜やさしい悪魔〜』に収録された。

吉田拓郎が1977年4月25日に発表したカバーアルバムぷらいべえと』でも、拓郎自身が歌唱したものが収録されている。『ぷらいべえと』のジャケットの女の子の絵は、拓郎が「やさしい悪魔」のジャケット写真の伊藤蘭を書いたもの[2][13]

レア音源

[編集]

シングル盤の初回製造分は一般にCD化されている音源とは演奏のパーカッションが異なる通称「木魚バージョン」で発売されたが、すぐに差し替えられた[14]。サビにコツコツというヒールの靴音を模したウッドブロックの音が大きめに聞こえて、それが木魚をポクポク叩く音に似ていることから、ファンの間で長年そう呼ばれてきた[14]。この音はサビ以外にも、ギターソロやエンディング部まで入っている[15]。さらにジャケット裏で告知されているニューアルバムの発売日がセカンド・プレスでは「4月21日発売!」になっているが、初回製造分は「4月1日発売!」となっている[15]。初回製造分は永らくCD化されておらず、ファンの問い合わせに対し「マスターテープが見つからない」とソニーが回答していたが、2008年9月3日に発売された『キャンディーズ・タイムカプセル』の中の紙ジャケット復刻アルバムの一つである『キャンディーズ1+12〜やさしい悪魔〜』にボーナス・トラックとして、「初期プレス・ミックス・ヴァージョン」と銘打って収録された[16]

なお、『CANDIES PREMIUM~ALL SONGS CD BOX~』や『キャンディーズ・タイムカプセル』などに収録されているオリジナル・カラオケは「木魚バージョン」のカラオケである[17]

収録曲

[編集]
  1. やさしい悪魔(3分36秒)
  2. あなたのイエスタデイ(3分56秒)

カバー

[編集]
「やさしい悪魔」
「あなたのイエスタデイ」
  • 栗林みえ(シングル『春になったら』のc/wとして収録)。

その他

[編集]

ジャッカー電撃隊』(テレビ朝日系)9話「7ストレート!!地獄の必殺拳」で、ハートクインことカレン水木(ミッチー・ラブ)が、夜の都会で麻薬捜査をしているシーンに流された。

脚注

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ 1977年発行 キャンディーズ ファンクラブ会報 No.9
  2. ^ a b c d e f g h i j “(もういちど流行歌)「やさしい悪魔」キャンディーズ 解散宣言前、最も売れていた曲”. 朝日新聞 be on Saturday (朝日新聞デジタル): p. 2. (2016年4月16日). オリジナルの2016年4月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160416073240/http://www.asahi.com/articles/DA3S12309509.html 2017年2月28日閲覧。 
  3. ^ a b c 1977年3月1日、「キャンディーズ大人化計画」の第一弾「やさしい悪魔」がリリース
  4. ^ a b c d 鈴木啓之「特集 キャンディーズ / ディスコグラフィー オリジナル・シングル」『レコード・コレクターズ』、株式会社ミュージック・マガジン、2011年7月1日、36頁。 
  5. ^ a b c 馬飼野元宏「吉田拓郎WORKS」『日本の男性シンガー・ソングライター』シンコーミュージック・エンタテイメント〈ディスク・コレクション〉、2013年9月、12頁。ISBN 978-4-40163885-7 
  6. ^ 吉田拓郎「ラジオに育てられて、ラジオと共に青春したな」 自身のラジオと音楽の歴史を大いに語った最終回”. ニッポン放送 NEWS ONLINE. ニッポン放送 (2022年12月17日). 2022年12月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月27日閲覧。
  7. ^ 自動改札のアイドルPOP考 VOL.2 - プレイリストから新たな音楽を発見
  8. ^ 毎日新聞、2008年4月3日夕刊2面
  9. ^ 小室等の音楽夜話、FM東京、1977年8月12日
  10. ^ a b c 前園直樹「特集 キャンディーズ / 彼女たちのサウンドを支えた名スタッフたち」『レコード・コレクターズ』、株式会社ミュージック・マガジン、2011年7月1日、63頁。 
  11. ^ キャンディーズ シングル売上一覧日刊スポーツ新聞社、2011年4月21日23時0分。大本の出典は『日刊スポーツ』1978年4月5日付。
  12. ^ 小室等の音楽夜話、FM東京、1977年8月12日
    拓郎はランちゃんが苦戦したのは、その日が生理だったからとマネージャーに言われたと記している(吉田拓郎 1994, pp. 121–122)。
  13. ^ 宝泉薫『昭和歌謡 勝手にベストテン』彩流社、2009年、48-51頁。ISBN 978-4-7791-1044-3 
  14. ^ a b 高島幹雄「特集 キャンディーズ / レア音源/別ヴァージョン/別ミックス」『レコード・コレクターズ』、株式会社ミュージック・マガジン、2011年7月1日、58頁。 
  15. ^ a b 「特集 キャンディーズ / グラフィック・ステーション──キャンディーズのレア・レコード」『レコード・コレクターズ』、株式会社ミュージック・マガジン、2011年7月1日、40頁。 
  16. ^ マスターテープは発見できず、最後の手段として当該シングル盤の状態の良い現物より音を拾い直した、いわゆる「板起こし」による復刻である。
  17. ^ キャンディーズが歌入れの際に使用したのは「木魚バージョン」であり、差し替え後のバージョンは、完成後のマルチ・トラックよりリミックスしたものなので、歌入れ用のカラオケは存在しない。

関連項目

[編集]