国際数学者会議
国際数学者会議(こくさいすうがくしゃかいぎ、英: International Congress of Mathematicians.、ICM)は、数学界最大の会合であり、4年に一度、国際数学連合の主催により行われる。万国数学者会議とも[1]。
歴史
[編集]第1回会議は1897年にスイスのチューリッヒで行われた。1900年の会議では、ヒルベルトが興味のある問題として23の未解決問題を発表したことが20世紀の数学界に影響を与えた。今日では、それらの問題はヒルベルトの23の問題と呼ばれる。
開会式では、フィールズ賞、IMUアバカス・メダル(2022年にネヴァンリンナ賞から改称)、ガウス賞、チャーン賞が授与される。会議ごとに、招待講演に基づく学術的な論文を含む議事録(プロシーディングス)が刊行される。
1966年のモスクワ会議で次回の開催地に日本を提議したがニースに決定、1990年京都開催を待つこととなる[1]。1998年の会議には3,346人が参加した。会議中には、会議の主催者により選ばれた著名な数学者による1時間の全体講演21件と、45分間の招待講演169件が行われた。さらに、参加者による各15分間の発表が行われた。アメリカ数学会は、2006年の会議の参加者は4,500人を超えたと発表した。
会議一覧
[編集]開催年 | 都市 | 国 |
---|---|---|
1897年 | チューリッヒ | スイス |
1900年 | パリ | フランス |
1904年 | ハイデルベルク | ドイツ帝国 |
1908年 | ローマ | イタリア |
1912年 | ケンブリッジ | イギリス |
1920年 | ストラスブール | フランス |
1924年 | トロント | カナダ |
1928年 | ボローニャ | イタリア |
1932年 | チューリッヒ | スイス |
1936年 | オスロ | ノルウェー |
1950年 | ケンブリッジ | アメリカ合衆国 |
1954年 | アムステルダム | オランダ |
1958年 | エディンバラ | イギリス |
1962年 | ストックホルム | スウェーデン |
1966年 | モスクワ | ソビエト連邦 |
1970年 | ニース | フランス |
1974年 | バンクーバー | カナダ |
1978年 | ヘルシンキ | フィンランド |
1982年(実際は1983年開催) | ワルシャワ | ポーランド |
1986年 | バークレー | アメリカ合衆国 |
1990年 | 京都 | 日本 |
1994年 | チューリッヒ | スイス |
1998年 | ベルリン | ドイツ |
2002年 | 北京 | 中国 |
2006年 | マドリード | スペイン |
2010年 | ハイデラバード | インド |
2014年 | ソウル | 韓国 |
2018年 | リオデジャネイロ | ブラジル |
2022年 | オンライン[注釈 1] | |
2026年 | フィラデルフィア | アメリカ合衆国 |
これまでの基調講演者、招待講演者
[編集]この記事はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点から説明されていない可能性があります。 (2022年8月) |
日本人または日本の研究所に在籍している数学者の全体講演者・招待講演者
[編集]1897年に国際数学者会議が始まって以来、日本人の全体講演者は、伊原康隆、角谷静夫、柏原正樹、加藤和也、加藤敏夫、佐藤幹夫、中島啓、三輪哲二、望月拓郎[3]、森重文、吉田耕作の11人である[4]。全体講演者ではないが、志村五郎は招待講演者として4度、荒木不二洋、岩澤健吉、倉西正武、広中平祐は招待講演者としてそれぞれ2度招聘されている[4]。一方、アメリカの大学の研究者で2014年の国際数学者会議に招聘された全体講演者は10人である[5]。プリンストン大学の2014年現在の数学科教授28人中26人(約93%)[6]、東京大学大学院数理科学研究科理学部数学科の同年の教授28人中9人(約35%)[7]が国際数学者会議の全体講演者または招待講演者であり、国際数学者会議の全体講演または招待講演は一流数学者の証と言え、全体講演者としての招待は「数学の殿堂入り」にも匹敵する[注釈 2]と表現される。
親子で招聘された講演者としては、1962年のストックホルムでの招待講演者の井草準一、その息子で1990年の京都での招待講演者の井草清(ブランダイス大学教授)がいる。
- 2022年(ヴァーチャル)[9]
- 2018年(リオデジャネイロ)[10]
- 2014年(ソウル)
- 2010年(ハイデラバード)
- 2006年(マドリード)
- 2002年(北京)
- 1998年(ベルリン)
- 1994年(チューリッヒ)
- 1990年(京都)
- 1986年(バークレー)
- 1983年(ワルシャワ)
- 1978年(ヘルシンキ)
- 1974年(バンクーバー)[注釈 3]
- 1970年(ニース)[注釈 4]
- 1966年(モスクワ)
- 1962年(ストックホルム)
- 1958年(エディンバラ)
- 1954年(アムステルダム)[注釈 5]
- 1950年(ケンブリッジ)[注釈 6]
第二次世界大戦以前
[編集]- 1924年(トロント)
- 出席者(0人) [39]- (日本からは0人)
- 1897年(チューリッヒ)
- 出席者(0人) [39]- (第1回は日本不参加)
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ ロシアのサンクトペテルブルクで開催予定だったが、ロシアのウクライナ侵攻の影響が考慮され、2022年2月26日にオンライン開催に変更された。[2]
- ^ 国際数学者会議の基調講演者に招かれるということは、「いわば〈殿堂入り〉を果たすほどの名誉」である[8]。
- ^ 100人超が日本から出席。日本はグループ5に昇格(フランスとも)[34]
- ^ 会議の席上、広中平祐にフィールズ賞が贈られる。16名の招待講演者が登壇[34]。
- ^ 会議の席上、小平邦彦がフィールズ賞を受賞[36]。
- ^ 1950年 (昭和25年) 8月、1940年開催予定だった会議が戦後再開 (開催地はハーバード大学)。日本の国際学界復帰のさきがけとなる。出席者は10数名、角谷静夫、岩沢健吉、中山正 (ママ) が招待講演を行う。この年、IMU (国際数学連合) がUNESCO下部機構として承認を受ける[36]。
出典
[編集]- ^ a b 日本数学会 1947, pp. 56–59.
- ^ “Decision of the Executive Committee of the IMU on the upcoming ICM 2022 and IMU General Assembly”. IMU. 2022年7月2日閲覧。
- ^ “望月京大教授、8月の世界数学者会議で基調講演”. 日本経済新聞 電子版 (2014年6月3日). 2019年5月7日閲覧。
- ^ a b “ICM Speakers Sorted by last name”. 国際数学連合. 2017年9月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年9月29日閲覧。
- ^ a b “Program > Scientific program”. SEOUL ICM 2014. 国際数学者連合. 2015年7月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年8月1日閲覧。
- ^ “Faculty and Researchers”. プリンストン大学数学学部. 2020年9月25日閲覧。
- ^ “教員一覧(50音順) | 東京大学大学院数理科学研究科理学部数学科・理学部数学科”. www.ms.u-tokyo.ac.jp. 2019年5月7日閲覧。
- ^ Castelvecchi, Davide (7 October 2015). “The biggest mystery in mathematics: Shinichi Mochizuki and the impenetrable proof”. Nature 526. doi:10.1038/526178a. PMID 26450038 .
- ^ “ICM 2022”. opade.digital. 2022年8月2日閲覧。
- ^ 日本評論社: “数学セミナー〈特集 国際数学者会議2018〉”. ndlonline.ndl.go.jp. 国立国会図書館 (2019年1月). 2019年5月8日閲覧。
- ^ Nature 2015, p. 178–181.
- ^ “Schedule of Invited Sessions”. International Congress of Mathematicians (February 25, 2014). 2015年7月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月22日閲覧。
- ^ icm2010 2010.
- ^ “Home > Scientific Program > Invited Speakers”. icm2010. 2019年4月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月1日閲覧。
- ^ “Plenary Lectures”. 2011年9月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年9月29日閲覧。
- ^ ICM2006 2006a, pp. 335–357.
- ^ Kazuya Kato, Iwasawa theory and generalizations [16].
- ^ “International Congress of Mathematicians. Madrid 2006. E-Program”. icm2006.org. 2019年5月7日閲覧。
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- ^ Kazuhiro Fujiwara, §3. Number theory: Galois deformations and arithmetic geometry of Shimura varieties, [19]
- ^ ICM2006 2006b, pp. 627–635.
- ^ Tomohide Terasoma, §4. Algebraic and complex geometry: Geometry of multiple zeta values, [21].
- ^ ICM2006 2006b, pp. 1061–1082.
- ^ Kaoru Ono, §6. Topology Development in symplectic Floer theory, [23].
- ^ ICM2006 2006b, pp. 1564–1580.
- ^ Narutaka Ozawa, Amenable actions and applications, [25].
- ^ “B.2 Plenary Lectures”. Chinese Mathematical Society. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月1日閲覧。
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- ^ a b “B.3 Invited Lectures”. 国際数学者連合. 2007年2月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月1日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l ICMdb 2010b.
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- ^ 『日本の数学100年史(下)』(1984年、岩波書店)、p204-208
- ^ a b c 日本数学会 1947, p. 59 (155).
- ^ 「日本数学会創立100周年記念特集 その3」『数学』1947年、138-157頁、doi:10.11429/sugaku1947.30.138。
- ^ a b c d e f 日本数学会 1947, p. 58 (154).
- ^ 松阪, 輝久 (1952-7). “On a Generating Curve of an Abelian Variety”. お茶の水女子大學自然科學報告 (3): 1–4. ISSN 0029-8190 .
- ^ a b 日本数学会 1947, p. 57 (153).
- ^ a b c d e f g 『日本の数学100年史(上)』(1983年、岩波書店)、p185
参考資料
[編集]- 日本数学会「年表 (日本数学会100周年記念特集)」(pdf)『数学』1947年、56-59頁、2019年5月7日閲覧。
- “ICM Plenary and Invited Speakers since 1897 (sorted by Congress year)”. 国際数学者連合. 2014年10月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月1日閲覧。
- “Proceedings of the International Congress of Mathematicians, Madrid, Spain, 2006” (英語). Madrid: Asociación International Congress of Mathematicians, ICM (2006年). 2014年7月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月28日閲覧。
- (英語)Plenary Lectures : Proceedings of the International Congress of Mathematicians, Madrid, Spain, 2006 (European Mathematical Society) 1. オリジナルの2014-07-16時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140709043805/http://www.icm2006.org/proceedings/vol1.html. 第I巻。参加者名簿、発表者索引付。
- (英語)Invited Lectures #1-#10: Proceedings of the International Congress of Mathematicians, Madrid, Spain, 2006 (European Mathematical Society) 2. オリジナルの2015-03-08時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150308045008/http://www.icm2006.org/proceedings/vol2.html. 第II巻。
- (英語)Invited Lectures#11-#20: Proceedings of the International Congress of Mathematicians, Madrid, Spain, 2006 (European Mathematical Society) 3. オリジナルの2015-03-07時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150307175915/http://www.icm2006.org/proceedings/vol3.html. 第III巻。
関連資料
[編集]- 出版年順
- 中村清二「日本数学物理学会創立五十周年記念大会における演説」『日本数学物理学会誌』第2巻、1928-1929。
- 「年表」『数学』第9巻2号 (創立80周年記念号)、1957年、7-10頁。
- 「年表」『数学』第18巻4号 (日本数学会20周年記念号)、1967年、14-15頁。
- 「年表, 1877–1957」『Butsuri』第32巻第10号、1977年、888-894頁。
外部リンク
[編集]日本数学会
- 年表 1893年–1977年 日本数学会創立100周年記念事業
国際数学連合 (ICM)
- 国際数学連合による公式ページ
- 歴代の招待講演者・全体講演者 - 姓のABC順・1897年第1回から2014年ソウル会議まで