河神 (ギリシア神話)

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ギリシア神話における河神[1][2][3][4][5](かしん)は、ギリシア神話に登場する河川の神々である。オーケアノステーテュースの息子たちで、多数の神々を含んでおり、たとえばケブレーンペーネイオスなどがいる[6]。彼らの娘たちはみなナーイアスあるいはその一種ポタミス英語版であるとされる。

原語のポタモス[7][8][9]古希: Ποταμός, Potamos, 複数形: Ποταμοί, Potamoi)は、ギリシア語で単に「河川」を意味する言葉で、多くのギリシア神話の神の名と同様、普通名詞神格化に伴い固有名詞化したものである[9]。日本語では河神のほか、河の神[7][3]河川の神々[10][7]または単純に河川[11][12]諸河[6]などと翻訳される。

河神を描いた絵画には特徴があり、主に次の3種類の姿で描かれることが多い。すなわち、上半身はウシの頭を持った人間の男性でウエストより下の下半身はヘビのように細長いの姿、または、上半身は人間の頭を持った雄牛でウエストより下の下半身はヘビのように細長い魚の姿、または、が常に流れ出しているアンフォラの上に腕を乗せている姿の3通りである[13]

リスト

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ヘーシオドスは『神統記』337行から345行にかけて、オーケアノステーテュース女神の子として、河の名前、または河神の名前を多数挙げている[6][14]トローアス地方をはじめとする小アジアの河神および有名な大河の河神が多く、イーナコスアーソーポスといった神話の中でよく知られているギリシアの河神の名が挙げられているわけではないところが特徴的である。

登場順
名前
綴り(古希)
綴り(翻字)
地方
現在の川の名
順-01 ネイロス Νεῖλος Neilos エジプト ナイル川
順-02 アルペイオス Ἀλφειός Alpheios ギリシアエーリス地方 アルフェイオス川
順-03 エーリダノス Ἠριδανός Ēridanos イタリア ポー川
順-04 ストリューモーン Στρυμών Stȳmōn トラーキア ストルマ川
順-05 マイアンドロス Μαίανδρος Maiandros 小アジア, カーリア地方 メンデレス川
順-06 イストロス Ἴστρος Istros ドナウ川
順-07 パーシス Φᾶσις Phāsis コルキス リオニ川
順-08 レーソス Ῥῆσος Rhēsos 小アジア, トローアス地方
順-09 アケローオス Ἀχέλῷος Achelōos ギリシア, アカルナーニア地方 アヘロオス川
順-10 ネッソス Νέσσος Nessos
順-11 ロディオス Ῥόδιος Rhodios 小アジア, トローアス地方
順-12 ハリアクモーン Ἁλιάκμων Haliákmōn マケドニア アリアクモン川
順-13 ヘプタポロス Ἑπτάπορος Heptaporos 小アジア, トローアス地方
順-14 グレーニコス Γρανικὸς Grēnikos 小アジア, トローアス地方 ビガ川英語版
順-15 アイセーポス Αἴσηπος Aiisēpos 小アジア, トローアス地方[注釈 1]
順-16 シモエイス Σιμόεις Simoeis 小アジア, トローアス地方
順-17 ペーネイオス Πηνειός Pēneios ギリシア, テッサリアー地方 ピニオス川
順-18 ヘルモス Ἕρμος Hermos 小アジア, アイオリス地方 ゲディズ川英語版
順-19 カイーコス Καϊκός Kaīkos 小アジア, ミューシア地方
順-20 サンガリオス Σαγγάριος Sangarios 小アジア サカリヤ川
順-21 ラードーン Λάδων Lādōn ギリシア, アルカディア地方 ラドン川
順-22 パルテニオス Παρθένιος Parthenios 小アジア バルトゥン川英語版
順-23 エウエーノス Εὔηνος Euēnos ギリシア, アイトーリア地方 エヴィノス川英語版
順-24 アルデスコス Ἄρδησκος Ardeskos
順-25 スカマンドロス Σκάμανδρος Skamandoros 小アジア, トローアス地方 カラメンデレス川英語版

ギャラリー

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背景

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河川というものはギリシアに限らず神格化されがちである[7][8]。ギリシアの場合は、「河川」を意味する「ポタモス」が男性名詞であるため、河川の神々は男神とされた[7][8]

彼らはしばしば、土着の領主、都市の創立者等のようにみなされた[7]。例えば、アルゴス地方を流れるイーナコス河の神は、同地の王家の始祖とみなされた[7]

年毎に祭りが開かれ、ときには祭司や社殿が設けられる河もあった[7]

彼らがよく動物の姿で現れるのは、海神ネーレウスプローテウスなど、水神一般が変身を得意とするのに通じる[7]

脚注

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注釈

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  1. ^ あるいはミューシア地方。高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p.5a。

出典

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  1. ^ 高津 1960, p. 38.
  2. ^ 呉 1969, p. 236.
  3. ^ a b ダフネ』 - コトバンク
  4. ^ ジャン=クロード・ベルフィオール著、金光仁三郎ほか訳『ラルース ギリシア・ローマ神話大事典』大修館書店、2020年、p.696
  5. ^ 高橋宏幸ギリシア神話を学ぶ人のために』世界思想社、2006年、固有名詞索引 p.ii ほか
  6. ^ a b c ヘシオドス神統記廣川洋一訳、岩波書店岩波文庫〉、1984年、337-345行(pp.45-46)
  7. ^ a b c d e f g h i 呉 1969, p. 216f.
  8. ^ a b c 第十回歴史・風土に根ざした郷土の川懇談会 -日本文学に見る河川-”. www.mlit.go.jp. 国土交通省. 2024年9月18日閲覧。渡辺利雄の発言)
  9. ^ a b 山下正男魂と神についてのヨーロッパ的奇想」『京都大学人文科学研究所』第74巻、京都大学人文科学研究所、1994年、14頁、doi:10.14989/48420 
  10. ^ 高津 1960, p. 163.
  11. ^ 中務哲郎訳『ヘシオドス 全作品』京都大学学術出版会西洋古典叢書〉、2013年、p.113
  12. ^ 高津 1960, p. 82.
  13. ^ POTAMOI Theoi.com 2012年03月24日閲覧
  14. ^ (grc-en) Theogonia 337-370 ヘーシオドス『神統記』、Perseus tufts.

参考文献

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