あらせ
ジオスペース探査衛星「あらせ」 (ERG) | |
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軌道上でのERG衛星、想像図(c)ISAS/JAXA | |
所属 | 宇宙航空研究開発機構 |
主製造業者 | 日本電気 |
公式ページ | ジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG) |
国際標識番号 | 2016-080A |
カタログ番号 | 41896 |
状態 | 後期運用中 |
目的 | 宇宙嵐による高エネルギー電子の生成・消失過程、宇宙嵐の発達過程 |
観測対象 | ヴァン・アレン帯 |
計画の期間 | 定常運用開始以降1年以上[1] |
打上げ場所 | 内之浦宇宙空間観測所 |
打上げ機 | イプシロンロケット2号機 |
打上げ日時 | 2016年12月20日 20:00(JST) |
軌道投入日 | 2017年1月7日[2] |
物理的特長 | |
衛星バス | SPRINTバス |
本体寸法 | 伸展前:1.5×1.5×2.7m 伸展後:31×31×2.8m[1] 太陽電池パドル両端間 :X軸6.0m、Y軸5.2m[3] |
質量 | 365kg以下[1] |
発生電力 | 700 W以上 |
主な推進器 | 4Nスラスタ(ヒドラジン)×4[4] |
姿勢制御方式 | スピン安定方式(7.5rpm) |
軌道要素 | |
周回対象 | 地球 |
軌道 | 楕円軌道 |
近点高度 (hp) | 460 km[2] |
遠点高度 (ha) | 32,110 km[2] |
軌道傾斜角 (i) | 31度[2] |
軌道周期 (P) | 565分[2] |
搭載機器 | |
ワイヤーアンテナ | 15m×4本 |
伸展マスト | 5m×2本 |
あらせは、宇宙科学研究所が打ち上げたジオスペース探査衛星である[5]。計画名はERG(エルグ、英語: Exploration of energization and Radiation in Geospace)。地球近傍の放射線帯(ヴァン・アレン帯)における高エネルギー粒子の生成と消滅、磁気嵐の発達のメカニズムの解明のための観測を行う[6]。開発・製造は日本電気が担当した。
2015年に運用終了したあけぼのの観測を実質的に引き継いだ衛星である[7]。ひさき(SPRINT-A)に続く小型科学衛星シリーズの2機目で、2016年12月20日に内之浦宇宙空間観測所からイプシロンロケットで打ち上げられた。2018年12月に定常運用を終了し[1]、2024年11月現在は後期運用中。
概要
[編集]当初計画では2015年度に打ち上げ予定であったが、事前に予見し得なかった技術的課題の解決などを理由に、打ち上げ予定が2016年度に変更され[8]、2016年12月20日20時00分(日本標準時)に打ち上げられた[9]。
打ち上げ成功後、JAXAはERGの愛称をあらせに決定したと発表した[9]。ERGが荒々しい高エネルギー粒子に満ちたヴァン・アレン帯という宇宙の「荒瀬」に漕ぎ出していく衛星であること、肝付町の「荒瀬川」に鳥の美しい鳴き声に関する伝説がありコーラス(宇宙空間に存在する周波数が数kHzの可聴帯の電磁波)を観測する本衛星にふさわしいことに由来する[9]。
機体構成
[編集]衛星バスにはNECとJAXAが開発したSPRINTバスを採用する。機体重量は350kgである。コンピュータシステムのRTOSは、T-Kernel 2.0がベースの航空宇宙分野向け高信頼RTOS「T-Kernel 2.0 AeroSpace(T2AS)」である[10]。
観測機器
[編集]- 低エネルギー電子分析器(LEP-e)[3]
- 低エネルギーイオン質量分析器(LEP-i)[3]
- 中間エネルギー電子分析器(MEP-e)[3]
- 中間エネルギーイオン質量分析器(MEP-i)[3]
- 高エネルギー電子分析器(HEP)[3]
- 超高エネルギー電子分析器(XEP)[3]
- 磁場観測器(MGF)[3]
- プラズマ波動・電場観測機器(PWE)[3]
- ソフトウェア型波動粒子相互作用解析装置(S-WPIA)[3]
粒子系(電子・イオン)の観測、磁力計・伸展マストによる磁場の計測、ワイヤーアンテナによる電場の計測が行われる。電子は19eV - 2MeV、イオンは10eV - 180keVと極めて広いレンジを観測可能である[4]。
磁場観測器はベピ・コロンボのみお(MMO)のものと共通である[7]。
通信
[編集]運用
[編集]計画・開発段階
[編集]- 2007年度 - 戦略的開発研究経費により衛星系検討・基礎設計を実施
- 2008年度 - ミッション提案(採択されず)
- 2009年度 - ミッション再提案
- 2012年8月 - ジオスペース探査プロジェクトとしてプロジェクト化
- 2014年11月 - ミッション部総合試験開始
- 2015年
- 4月 - 一次噛合せ試験を実施(6月18日終了)
- 10月 - フライトモデル総合試験開始
打ち上げ・観測
[編集]ERGプロジェクト
[編集]あらせ(ERG)は宇宙空間で実測する衛星として活動するが、他に地上からの観測、シミュレーションといった3つのアプローチの様々な研究を密に連携させるERGプロジェクトという枠組みが組織されている。ISASと名古屋大学太陽地球環境研究所を中心に観測データの集約等を担うERGサイエンスセンターが設置され、30程度の大学・研究機関が参加している[14][15]。
その他
[編集]- 本機は衛星バスを共通化するSPRINTシリーズにあたり、SPRINT-A(ひさき)に続くSPRINT-Bと表記されることがある[16]が、カスタマイズ部が多く最終的にはSPRINTの名称はほとんど使われず、衛星名称にもSPRINTを冠さずERGとなっている[7]。
脚注
[編集]- ^ a b c d “ジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG) の科学成果等と後期運用計画について|宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 ジオスペース探査衛星(ERG) プロジェクトチーム 2019年1月30日”. JAXA. 2024年11月4日閲覧。
- ^ a b c d e f g “ジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG)の軌道変更運用(近地点高度上昇)の完了について”. JAXA (2017年1月13日). 2017年1月15日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l “ジオスペース探査衛星「ERG」プレスキット” (PDF). JAXA (2016年11月18日). 2017年1月11日閲覧。
- ^ a b c “NECにおける宇宙天気関連の取り組み|2022年2月18日 NEC宇宙システム事業部”. 総務省. 2024年11月10日閲覧。
- ^ “日本、固体燃料ロケット「イプシロン」2号機の打ち上げに成功”. 中央日報 (2016年12月21日). 2020年10月15日閲覧。
- ^ “ジオスペース探査衛星「ERG」パンフレット” (PDF). JAXA. 2017年2月6日閲覧。
- ^ a b c “「あけぼの」のバトンを受け継ぐ探査機「ERG」”. ファン!ファン!JAXA!. 2024年11月10日閲覧。
- ^ “第15回宇宙科学・探査部会 資料1「宇宙科学・探査プロジェクトの検討状況について」”. JAXA (2014年8月27日). 2015年1月8日閲覧。
- ^ a b c d e 『ジオスペース探査衛星(ERG)の太陽電池パドル展開及び衛星の愛称について』(プレスリリース)JAXA、2016年12月20日 。2017年1月11日閲覧。
- ^ “ワイヤーアンテナの伸展完了について”. JAXA (2017年1月22日). 2017年1月22日閲覧。
- ^ 『ジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG)のクリティカル運用期間の終了について』(プレスリリース)JAXA、2017年1月23日 。2017年1月24日閲覧。
- ^ “ジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG)の定常運用への移行について”. ISAS/JAXA (2017年3月29日). 2017年3月30日閲覧。
- ^ “ISAS | ジオスペース探査衛星 ERGプロジェクト / 宇宙科学の最前線”. www.isas.jaxa.jp. 2024年11月10日閲覧。
- ^ ERGサイエンスセンター. “ERG Science Center”. ERG Science Center. 2024年11月10日閲覧。
- ^ “ジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG) | 科学衛星・探査機”. 宇宙科学研究所. 2024年11月10日閲覧。
外部リンク
[編集]関連項目
[編集]- あけぼの(EXOS-D) - ISASが過去に打ち上げた磁気圏観測衛星。2015年4月23日の運用終了まで約26年運用された。