土讃線

土讃線
吉野川沿いを走る1000形気動車 (2020年5月、三縄 - 祖谷口間)
吉野川沿いを走る1000形気動車
(2020年5月、三縄 - 祖谷口間)
基本情報
日本の旗 日本
所在地 香川県徳島県高知県
種類 普通鉄道在来線幹線
起点 多度津駅
終点 窪川駅
駅数 61駅
電報略号 トサホセ
路線記号 D(多度津駅 - 高知駅間)
K(高知駅 - 窪川駅間)
開業 1889年5月23日 (1889-05-23)
全通 1951年11月12日 (1951-11-12)
所有者 四国旅客鉄道
運営者 四国旅客鉄道
使用車両 使用車両を参照
路線諸元
路線距離 198.7 km
軌間 1,067 mm狭軌
線路数 全線単線
電化方式 直流1,500 V 架空電車線方式
(多度津駅 - 琴平駅間)
非電化(上記以外)
最大勾配 25
最小曲線半径 200 m
最高速度 120 km/h
路線図
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土讃線(どさんせん)は、香川県仲多度郡多度津町多度津駅から高知県高知市高知駅を経て、同県高岡郡四万十町窪川駅に至る四国旅客鉄道(JR四国)の鉄道路線幹線)である。日本国有鉄道(国鉄)時代は土讃本線(どさんほんせん)と呼ばれていたが、民営化後の1988年にJR四国は線路名称を土讃線に改称した。

讃岐山脈および吉野川上流に沿って四国山地を越えて多度津と高知を結び、さらに土佐湾沿いの内陸部を通り窪川を結んでいる。

広域輸送網としては、1988年(昭和63年)の瀬戸大橋線開通前まで本州四国を結ぶ宇高連絡船の接続駅であった予讃線高松駅を始発・終着とする特急列車が直通しているが、瀬戸大橋線開通後は山陽新幹線に接続する岡山駅を始発・終着とする特急列車を主体とするダイヤ編成となっている。地域輸送としては、高松方面と琴平駅間の快速列車・普通列車、高知駅を中心とする高知県内で完結する普通列車、高知県内では第三セクター鉄道土佐くろしお鉄道各線との直通列車、および経由地となる徳島県三好市付近の近距離ローカル列車(徳島線直通列車を含む)等が運行されている。

多度津 - 琴平間は国鉄末期に電化されており、高松方面からの電車列車が乗り入れている。しかしそれ以外の区間は電化されていないため、特急列車や徳島県・高知県内の普通列車には気動車が用いられている。

2020年(令和2年)3月14日には起点の多度津駅に加えて、新たに善通寺駅、琴平駅でIC乗車券ICOCA」が利用可能になった[1]

路線データ

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多度津駅 - 高知駅間は阿波池田駅、 高知駅 - 窪川駅間は高知駅でそれぞれ運行管理を行っている[2]

  • 管轄(事業種別):四国旅客鉄道(第一種鉄道事業者
  • 路線距離(営業キロ):198.7km
  • 軌間:1067mm
  • 駅数:61(起終点駅含む)
    • 土讃線所属駅に限定した場合、起点の多度津駅(予讃線所属[3])が除外され、60駅となる。
  • 複線区間:なし(全線単線
  • 電化区間:多度津駅 - 琴平駅間(直流1500V)
  • 閉塞方式[1]
    • 多度津駅 - 高知駅間:単線自動閉塞式
    • 高知駅 - 窪川駅間:特殊自動閉塞式(電子符号照査式)
      • CTC・PRC(高知駅に設置[2]
  • 最高速度
    • 120km/h(多度津駅 - 高知駅間、日下駅 - 土佐加茂駅間、吾桑駅 - 多ノ郷駅間、六反地駅 - 仁井田駅間)[4]
    • 110km/h(高知駅 - 日下駅間、土佐加茂駅 - 吾桑駅間、多ノ郷駅 - 六反地駅間、仁井田駅 - 窪川駅間)[4]
  • 最急勾配:25‰(讃岐財田駅 - 佃駅間、繁藤駅 - 土佐山田駅間、土佐久礼駅 - 影野駅間など)
  • 最小曲線半径:200m

利用状況

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平均通過人員

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各年度の平均通過人員(人/日)は以下のとおりである。

年度 平均通過人員(人/日) 出典
全線 多度津 - 琴平 琴平 - 高知 高知 - 須崎 須崎 - 窪川
1989年度(平成元年度) 5,199 9,331 4,818 7,093 2,447 [5]
2012年度(平成24年度) 2,928 5,300 2,738 4,056 1,183
2013年度(平成25年度) 2,978 5,39 2,781 4,126 1,211
2014年度(平成26年度) 2,869 5,257 2,691 3,958 1,130
2015年度(平成27年度) 3,010 5,531 2,845 4,102 1,162 [6]
2016年度(平成28年度) 3,012 5,544 2,870 4,045 1,153
2017年度(平成29年度) 3,044 5,693 2,928 3,985 1,173 [7]
2018年度(平成30年度) 2,993 5,614 2,886 3,889 1,159
2019年度(令和元年度) 2,803 5,322 2,657 3,734 1,108
2020年度(令和02年度) 1,855 3,657 1,563 2,934 783 [8]
2021年度(令和03年度) 1,917 3,734 1,684 2,873 786 [9]
2022年度(令和04年度) 2,381 4,556 2,259 3,188 898 [10]
2023年度(令和05年度) 2,484 4,919 2,441 3,149 797 [11]

収支・営業系数

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各年度の収支(営業収益、営業費、営業損益)、営業係数は以下のとおりである。営業係数は共通費を含んだ金額であり、2022年度(令和4年度)は営業費と営業損益についても、共通費を含んだ金額が開示されている。▲はマイナスを意味する。

多度津駅 - 琴平駅間
年度 収支(百万円) 営業
係数
(円)
出典
営業
収益
営業費 営業
損益
2019年度(令和元年度) 412 649 ▲238 158 [12]
2020年度(令和02年度) 240 665 ▲425 277 [13]
2021年度(令和03年度) 253 599 ▲345 236 [14]
2022年度(令和04年度) 335 641 ▲306 191 [15]
琴平駅 - 高知駅間
年度 収支(百万円) 営業
係数
(円)
出典
営業
収益
営業費 営業
損益
2019年度(令和元年度) 2,360 4,334 ▲1,974 184 [12]
2020年度(令和02年度) 1,257 4,182 ▲2,925 333 [13]
2021年度(令和03年度) 1,386 4,250 ▲2,865 307 [14]
2022年度(令和04年度) 1,949 4,776 ▲2,827 245 [15]
高知駅 - 須崎駅間
年度 収支(百万円) 営業
係数
(円)
出典
営業
収益
営業費 営業
損益
2019年度(令和元年度) 787 1,673 ▲886 213 [12]
2020年度(令和02年度) 573 1,760 ▲1,186 307 [13]
2021年度(令和03年度) 594 1,890 ▲1,296 318 [14]
2022年度(令和04年度) 677 1,906 ▲1,230 282 [15]
須崎駅 - 窪川駅間
年度 収支(百万円) 営業
係数
(円)
出典
営業
収益
営業費 営業
損益
2019年度(令和元年度) 224 722 ▲497 322 [12]
2020年度(令和02年度) 132 685 ▲553 519 [13]
2021年度(令和03年度) 144 762 ▲618 531 [14]
2022年度(令和04年度) 180 752 ▲572 418 [15]

沿線概況

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土讃線の起点駅は多度津。予讃線高松・宇多津方面から直通する列車は、多度津からは単線の土讃線に入る。善通寺は弘法大師空海が生まれた所、琴平は右の車窓に見える象頭山中腹にある金刀比羅宮(こんぴらさん)の門前町。讃岐山脈の主稜を猪鼻トンネル(長さ3,845 m)でくぐり抜け[16][17]、池田(三好市)の町を右手下方に眺めつつ東進し、中央構造線に沿って流れる吉野川(別名四国三郎)を571 mの吉野川橋梁で渡ると、今度は西に向きを変え、すぐに佃駅で徳島線と合流する[18]。池田は中央構造線上にある町で、土讃線の線路は阿波池田 - 三縄間にある丸山トンネルの中で断層地帯を突き抜けている。

阿波池田 - 大杉間は美しい渓谷沿いを走り、四季の車窓を楽しめる区間であるが、名うての台風常襲地帯である四国山地を横断する路線として、出水・土砂崩れにしばしば見舞われる場所でもある。山間部には最大25 の勾配区間や半径200 mのカーブが続く区間がある。大歩危小歩危は絶景ポイントとして全国的に有名。しかし、近年では大歩危トンネル(大歩危 - 土佐岩原間、長さ4,179 m)を始め危険箇所をトンネル化した部分が長くなり、吉野川の清流を楽しめる区間が減ってきている[19]。途中2か所(坪尻、新改)スイッチバック方式の駅があるが、特急列車と普通列車の一部はスイッチバックせず通過する。

阿波川口駅 - 小歩危駅間にある白川橋梁

JR四国全路線の最高所(標高347.4 m)にある繁藤駅から山を下り始め、土佐山田駅の直前で高知平野に降りる[20]。後免駅は南国市の中心駅、高知空港に近く、また土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の接続駅でもある。高知駅は高知県の鉄道交通の中心であると同時に、桂浜高知城、江戸時代から続く土佐の日曜市などへのアクセス拠点としても機能する南四国観光の玄関口。駅正面口はとさでん交通の電停にも直結する。駅舎は2008年2月26日に高架化が完成した。

高知 - 佐川間はおおむね国道33号と並行するコースをとる。途中の伊野(いの町)は土佐和紙の生産地、そして佐川町土佐鶴と並ぶ高知の地酒メーカー・司牡丹の酒蔵が建つ町である。佐川付近で針路を南に変えると間もなく低い峠を越え、天然の良港に面した須崎市に至る。吾桑駅は「雪割桜」で知られる桑田山の下車駅。須崎駅から先しばらくは土佐湾沿いに走るが、山が海まで迫っている地形のため、車窓は海と山とトンネルの繰り返しとなる。土佐久礼駅で海から分かれると、その先は延長9 km以上に及ぶ25‰勾配の連続区間。南国の海の陽光がはるか彼方に感じられ始めた頃、四道トンネル(長さ1,823 m)をくぐって標高約250 mの高南台地に出る[21]。終点の窪川駅は宿毛宇和島方面へと線路が連続しており、長大幹線の終着駅という印象は薄い。

運行形態

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優等列車

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山陽新幹線に接続する岡山駅 - 高知駅間の特急「南風」、高松駅 - 高知駅・中村駅・宿毛駅間の特急「しまんと」、高知駅 - 中村駅・宿毛駅間の特急「あしずり」が運転されている。「南風」では、「アンパンマン列車」として運行されるものもある。

特急「南風」は予讃線の特急「しおかぜ」とともに1972年3月15日に四国初の特急として運行を開始し[22]、2022年に運行開始50周年を迎える。

  • 特急「南風」:岡山駅 - 高知駅間
  • 特急「しまんと」:高松駅 - 高知駅・中村駅・宿毛駅間
  • 特急「あしずり」:高知駅 - 中村駅・宿毛駅間

過去の優等列車

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  • 特急「剣山」:牟岐駅・徳島駅 - 高知駅
  • 特急「ホームエクスプレス高知」「ウィークエンドエクスプレス高知」:高知駅 → 土佐山田駅・土佐山田駅 → 須崎駅間
  • 特急「I LOVE しまんと」:高知駅 - 宇和島駅・松山駅間
  • 急行「黒潮」:高松駅 - 窪川駅・土佐佐賀駅間
  • 急行「浦戸」:高松駅 - 高知駅間
  • 急行「南風」:高松駅 - 須崎駅・窪川駅・土佐佐賀駅間
  • 急行「あしずり(足摺)」:高松駅・土佐山田駅・高知駅 - 須崎駅・土佐佐賀駅・中村駅・宇和島駅間など
  • 急行「土佐」:高松駅 - 高知駅・須崎駅・窪川駅間など
  • 急行「南国」:高松駅 - 高知駅
  • 急行「阿佐」:小松島港駅・徳島駅 - 多度津・高知駅間
  • 急行「予土」:高知駅 - 松山駅間(多度津経由)
  • 急行「いしづち」:小松島港駅 - 松山駅間(阿波池田・多度津経由)

地域輸送

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おおむね琴平駅・阿波池田駅・高知駅で運転系統が分かれており、多度津駅 - 琴平駅間の電化区間には、高松方面との直通列車が運転されている。また、後免駅 - 高知駅間には土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の列車が乗り入れている。全線で電車も含めてほぼワンマン運転となっている。以前は、ほぼ全区間にわたってトイレを備えていない車両が充当されていたが、主力車両である1000形車両にトイレが設置されたため、この問題点は改善されている。

国鉄時代には高松駅 - 高知駅間直通の普通列車や高松駅 - 中村駅(中村線:現在の土佐くろしお鉄道中村線)間直通の夜行普通列車など長距離を走る普通列車が多数運転されていた。瀬戸大橋線開業後の1988年9月からは岡山駅 - 琴平駅間直通の普通列車も運転されていたが、2019年3月16日のダイヤ改正で廃止された[23]

多度津駅 - 琴平駅間

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日中は普通列車が1時間に1 - 2本運転されている。夕方以降は快速「サンポート」(土讃線内は各駅停車)も運転される。

この区間のみ電化されており、ほとんどの列車が電車で運転されるが、区間内の一部の列車と琴平駅以南の非電化区間に直通する多度津駅 - 阿波池田駅間の普通列車(下り3本・上り1本)は気動車で運転される。

普通列車・快速「サンポート」ともに基本的には高松駅に直通するが、一部に前述の多度津駅 - 阿波池田間のほか、多度津駅 - 琴平駅間のみの運転もある。

行楽期の土曜・休日は寝台特急サンライズ瀬戸」が高松駅 - 琴平駅間を延長運転することもあるため、平日の高松7:15発琴平行きは土曜・休日に限り多度津止まりとなり、多度津駅 - 琴平駅間はダイヤを変更のうえ気動車での運転となる[注釈 1][24]

琴平駅 - 阿波池田駅 - 土佐山田駅間

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讃岐山脈・四国山地を越え、香川県・徳島県・高知県の県境を挟むこの区間は、特急列車が1時間に1本運転されているのに対して普通列車の本数が少なく、琴平駅 - 阿波池田駅間は1日6往復、阿波池田駅 - 大歩危駅間は1日7.5往復、大歩危駅 - 土佐山田駅間は1日5往復の運転であり、5時間以上間隔が開く時間帯がある。特にスイッチバック構造になっている坪尻駅新改駅に関しては普通列車でも通過するものがあり、さらに新改駅に停車する土佐山田方面行きは1日2本のみとなっている。この区間の普通列車は阿波池田駅を境に系統分割されているが、琴平発大歩危行きが夜間に1本設定されている。

この区間の最終列車は下り・上りともに特急列車より早く運転が終了し、琴平発阿波池田行きが19時台、阿波池田発土佐山田行きが17時台(大歩危発18時台)、大歩危行きが19時、土佐山田発阿波池田行きが20時になっている。2013年3月15日までは琴平発5時台からと阿波池田発20時台まで、2014年3月14日までは阿波池田発土佐山田行きが19時台(大歩危発20時)、土佐山田発阿波池田行きが21時まで、2021年3月12日までは平日・土曜日に阿波池田発大歩危行きが20時台まであった。また、2010年3月12日までは土佐山田発阿波池田行きは22時まで設定されていた。

この区間は大雨になると運転見合わせになることがある。2011年3月のダイヤ改正で、この区間のホームの嵩上げが行われ[注釈 2]、徳島線からの乗り入れがある佃駅 - 阿波池田駅間以外の区間でも、一部列車が1000形・1200形1500形で営業運転が行われるようになり、2016年3月のダイヤ改正で、この区間の普通列車は1000形に統一された(徳島線系統を除く)。

土佐山田駅 - 高知駅 - 須崎駅間

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高知市の近郊区間として、日中でも1時間に1 - 2本程度運転されている。大部分の列車が高知駅で乗り換えになるが、土佐山田駅・後免駅 - 伊野駅間の直通列車も設定されている。一部の列車は平日のみの運行である。土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の乗り入れる後免駅 - 高知駅間は運転密度が高くなる(日中で1時間2本程度)が単線のため交換待ちが多く、特急に比して所要時間のかかる列車が多い。昼間の列車は後免駅でごめん・なはり線に接続する列車もある。2019年3月16日の改正時点では高知発須崎行き最終列車は23時台で須崎駅終着時刻が日付を跨いでいたが、2022年3月12日のダイヤ改正時点では高知発22時過ぎとなっている。

2012年3月17日のダイヤ改正で、須崎発高知行きの4時台の列車(新設)と、高知発土佐山田行きの23時台の列車(最終列車の時刻繰り下げによる)がそれぞれ設定された。なお、須崎発高知行きの4時台の列車は2020年3月14日のダイヤ改正で須崎駅 - 伊野駅間を廃止して伊野5時台後半発に変更したため、須崎始発時刻は5時台後半になった。高知発土佐山田行きの23時台の列車は2021年3月13日のダイヤ改正で廃止となった。

全列車が1000形で運行されているほか、土佐くろしお鉄道9640形がごめん・なはり線からの直通列車を中心に運行されている。キハ32形で運行される列車が高知駅 - 伊野駅間で朝に1往復あったが、2025年3月15日のダイヤ改正で運用が終了した[25]

須崎駅 - 窪川駅間

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夕方に運転される窪川発須崎行きの上り1本を除き高知方面から窪川間の直通運行となっているが、本数は下り5本・上り5本で、5時間以上運転されない時間帯がある。全列車が1000形で運行されている。

最終列車は下りが須崎発20時台であるが、上りは窪川発18時台と早い。2016年3月25日までは下りが須崎発22時台まであった。そして2013年3月15日までは須崎発下りは5時半から、窪川発上りは21時まであった。

トロッコ列車

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多度津駅 - 琴平駅間
瀬戸大橋線で運転されている「瀬戸大橋アンパンマントロッコ」の内1往復が琴平駅を発着している。
琴平駅 - 大歩危駅間
1997年より行楽シーズンに阿波池田駅 - 大歩危駅間でトロッコ列車「大歩危トロッコ」の運転を開始した[26]。その後、2015年にリニューアルを行い、3月21日より「絶景!土讃線秘境トロッコ」となった[27]。運転区間は琴平駅 - 大歩危駅間に変更され、途中坪尻駅・阿波池田駅に停車する[28]。使用車両はキハ185系キクハ32形2017年4月よりこの区間で新観光列車「四国まんなか千年ものがたり」の運転が開始されるのに伴い、「絶景!土讃線秘境トロッコ」の運転は2016年11月27日限りで終了した[26]
高知駅 - 窪川駅間
2017年に高知県で開催されている「志国高知 幕末維新博」に合わせ、9月23日より高知駅 - 窪川駅間でトロッコ列車「志国高知 幕末維新号」の運転を開始した。運転期間は主に春・秋の行楽シーズンの土日祝日。下り列車名は「龍馬立志の巻」、上り列車名は「日本の夜明けの巻」で、キハ185系とキクハ32形を、坂本龍馬中岡慎太郎などの偉人が描かれた幕末維新仕様に特別ラッピングして運行されていた[29]。下り「龍馬立志の巻」車内でのみ高知産食材を使用した弁当「龍馬のお弁当」「加尾の彩り御膳」が限定販売された(要予約)[30][注釈 3]。また、高知県立伊野商業高等学校キャリアビジネス科ツーリズムコース生徒や地元住民団体などによる沿線ガイド、車内販売が行われていた(特定日限定)。2018年および2019年には秋の運行開始に先立ち、高知駅 - 須崎駅間にて幕末維新号車両を使用しビールトロッコ列車も運転された[31]2020年春よりこの区間で新観光列車「志国土佐 時代(トキ)の夜明けのものがたり」の運転が開始されるのに伴い、「幕末維新号」の運転は2019年11月30日が最後となった。

観光列車

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四国まんなか千年ものがたり
2017年4月1日から、多度津駅・琴平駅 - 大歩危駅間で観光列車「四国まんなか千年ものがたり」が運行されている[32][33]伊予灘沿いの区間を走る予讃線(愛ある伊予灘線)の観光列車「伊予灘ものがたり」に対し、土讃線の観光列車はをテーマとしている[34]
キハ185系気動車の改造車3両編成を使用し、土休日を中心に年間120日程度運行している[35]。午前に運行する下り列車は「そらの郷紀行」、午後の上り列車は「しあわせの郷紀行」の愛称が付けられている[35]
「四国まんなか千年ものがたり」(2017年3月 大歩危駅)
志国土佐 時代(トキ)の夜明けのものがたり
JR四国は2019年2月、高知駅 - 窪川駅間で観光列車「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」を2020年春から運行する予定であると発表した。コンセプトは「志をつなぐ、明日への ものがたり ミライ夢ミシ水平ノカナタヘ」。キハ185系気動車の改造車2両編成を使用し、土休日を中心に1日1往復する予定[36]
当初は2020年4月中旬から運行開始予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で7月4日運行開始となった。
ラ・マルことひら
2017年10月より、岡山駅 - 琴平駅間でJR西日本の観光列車「 La Malle de Bois(ラ・マル・ド・ボァ)」が「ラ・マルことひら」として運転されている。運転日は土・日を除く祝日[37][38]
「ラ・マルことひら」(2020年8月 多度津駅)

使用車両

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特記以外はJR四国所有(1987年4月以前運用終了のものは特記なければ国鉄所有)、普通(快速含む)のみ運用のものは使用種別省略。

現在の使用車両

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電車

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  • 6000系(多度津 - 琴平)
  • 7000系(多度津 - 琴平)
  • 7200系(多度津 - 琴平)
  • 213系(多度津 - 琴平):JR西日本所有。「ラ・マルことひら」に使用される。
  • 285系(多度津 - 琴平):JR西日本・JR東海所有。琴平まで臨時に延長運転される寝台特急「サンライズ瀬戸」に使用される。

気動車

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「佃 - 阿波池田」とあるものは徳島線直通列車に使用。

  • 2000系(特急「あしずり」)
  • 2700系(特急):一部車両は土佐くろしお鉄道所有
  • 1000形(全線)
  • 1200形(佃 - 阿波池田)
  • 1500形(佃 - 阿波池田)
  • キハ185系(徳島線特急・特急「四国まんなか千年ものがたり」「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」)
  • キクハ32形(トロッコ列車)
  • 9640形(後免 - 高知):土佐くろしお鉄道所有

過去の使用車両

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蒸気機関車

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  • D51形:進駐軍の命令により1949年より高知機関区に配属[39]。四国唯一の導入路線。集煙装置・重油併燃装置付の重装備機。DF50形の配備により1960年代初頭までに他区へ転出。
  • C58形:土讃線蒸気機関車の主力であり、D51形と同じく集煙装置・重油併燃装置付の重装備機。客車時代の準急「南風」の牽引の任にもあたる。徳島線直通列車以外は1969年1月12日の高知機関区さよなら運転をもって運行終了。
  • 8620形:1969年で運行終了。高知機関区所属機は末期は入換機となる。

ディーゼル機関車

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  • DF50形:客車時代の準急「南風」「土佐」や、斗賀野駅 - 多ノ郷駅間の石灰石専用列車の牽引も行い、土讃線の主力ディーゼル機関車として多度津駅 - 須崎駅間で運用。1985年定期運行終了。
  • DF40形(DF91II):四国初の本線用ディーゼル機関車で、登場時は準急「南風」も牽引した。試作機ながら1975年まで運用された。
  • DE10形:臨時快速「ムーンライト高知」や斗賀野駅 - 多ノ郷駅間の石灰石専用列車の牽引にもあたる。2023年で運行終了。
  • DD50形:DF40形の入線試験結果が芳しくなくメーカーで修理を行うことになったため、敦賀機関区より4号機が代走の形で1956年の半年間程借り入れられた[40]

電車

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  • 115系(多度津 - 琴平):JR西日本所有。2019年で運行終了
  • 113系(多度津 - 琴平):2019年で運行終了
  • 111系(多度津 - 琴平):国鉄清算事業団が保有し車籍復活した車両も存在する。2001年春で運行終了

気動車

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  • キハ181系(特急):1972年の特急「南風」運転開始にあたり投入。1993年で運行終了
  • キハ58系(急行・準急・普通):1961年の製造開始より四国に配備。1972年10月までに全車冷房化[注釈 4]。末期残存車は全車JR化後に通勤改造を受けた車両であった。最末期は松山所属車が多度津駅 - 阿波池田駅間を、高知所属車が阿波池田駅 - 伊野駅間を運転していた。2008年秋で運行終了
  • キハ55系(急行・準急・普通):非冷房車ながら1980年頃までは繁忙期の急行列車の増結車として連結されていた。1985年度で定期運行終了
  • キハ52形(準急など):新製配置時に準急「土佐」への充当や、準急「阿佐」2号の多度津編成などで使用された。1963年春に運行終了
  • キハ65形(急行・普通):末期は松山所属車が多度津駅 - 阿波池田駅間で運行。2008年春で運行終了
  • キハ54形(普通):2016年春に松山へ転出
  • キハ45形(普通):1960年代後半の数年間、高知機関区に配置されていた。徳島線直通列車は1990年に運行終了
  • キハ40系(普通):徳島線直通列車以外は1990年頃に運転終了、徳島線直通列車は2018年で運行終了
  • キハ32形(普通):2025年春で運行終了[25]
  • キハ20形(普通):1990年秋で運行終了、一部は水島臨海鉄道へ譲渡
  • キハ10系(急行・普通):高知機関区にごく僅かの間キハ17が配置されていた。また、郵便・荷物改造車は急行列車にも連結されていた。1982年に運行終了
  • 機械式気動車(普通):高知機関区にキハ41000[注釈 5]キハ41600が配置されていた。郵便・荷物改造車も運用されていたが、液体式気動車と連結する時は総括制御ができず、トレーラー扱いで運用しなければいけなかったこともあり1966年で運用終了

客車

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歴史

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多度津駅 - 琴平駅間は1889年(明治22年)5月に讃岐鉄道により開業した[41]。その後、山陽鉄道を経て、1906年に国有化され讃岐線となった。多度津駅 - 阿波池田駅間は讃岐線の支線として建設された。讃岐線は後に讃予線、そして予讃線と改称される。阿波池田駅 - 三縄駅間は1931年に徳島 - 阿波池田間の徳島本線を延伸して開業した。

豊永駅 - 高知駅 - 須崎駅間は高知線として建設された。そして、三縄駅 - 豊永駅間が1935年に開業したことにより、多度津駅 - 須崎駅間が土讃線となった。

その後、須崎駅から順次延伸され、中村線としての建設区間を編入し1951年に窪川駅まで全通。1963年に中村線(現在の土佐くろしお鉄道中村線)の開業により土讃本線と改称された。

1987年、民営化を前に多度津駅 - 琴平駅間が電化された。ただし、この区間は国鉄時代末期に予算不足もあり直吊架線方式で電化されたため、電車の最高速度は85km/hに制限されている。気動車は2000系のみ最高速度120km/hで、その他の一般型気動車は95km/hで走行することができるため、電車より気動車が速く走れる区間となっている。同区間に電気機関車が入線する際は架線への負担軽減のためパンタグラフを1基のみ使用し速度制限をかけて運転される。ただし琴平駅1番線のみはシンプルカテナリー方式になっている。

JR化後、予讃線電化区間延伸とともに、土讃線も電化区間を阿波池田、高知方面へ延伸することが計画されたが、その時点では見送られた。これは、琴平以南では輸送量が激減することから投資の効果が薄いことや、山岳区間は狭小トンネルが多く架線を張りにくい状況だったことが理由であり、電化工事を行うよりも高速運転に対応した新型特急用気動車を投入した方が合理的と判断されたためである。なお、JR四国は2006年に国土交通省交通政策審議会・交通体系分科会の地域公共交通部会に提出した資料で、長期的に望まれる投資の一つに、琴平駅 - 高知駅間の電化を挙げている[42]

四国山地区間の改良工事

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土讃線のうち徳島 - 高知県境区間は吉野川や支流である穴内川に沿う急斜面に線路が敷設されたため、たびたび災害に見舞われる区間となった。1962年には島秀雄技師長を委員長とする土讃線防災対策委員会が国鉄本社に設置され、1964年には大歩危駅 - 土佐岩原駅間および大杉駅 - 角茂谷駅間で抜本的な対策が必要であるという答申が行われた[43]。この答申に基づいて1966年に大歩危駅 - 土佐岩原駅間の工事が開始され、1968年に大歩危トンネルが開通した[43]。大杉駅 - 大王信号場間でも工事が進み、1973年に大杉トンネル経由の新線に切り替えられた[43]

そんな中で1972年には繁藤災害が発生し、60人もの死者行方不明者が出る事態となった。この災害によってさらなる防災機能強化が求められ、1973年には香川大学の斎藤実農学部長を委員長とする四国総局防災対策委員会が国鉄四国総局内に設置された[43]。1975年には同委員会によって報告書がまとめられ、この中で大杉駅 - 大王信号場間にトンネルを新設する必要があると指摘された。防災強度を高めるため、穴内川の左岸側に大豊トンネルを新設し、右岸側から移設する工事が行われた。新規敷設区間は最小曲線半径600メートル、最急勾配14パーミルとなり、穴内川を二度渡るためトンネルの両端には大杉方に第四穴内川橋梁が、角茂谷側に第三穴内川橋梁が整備された[43]。新線は1986年3月3日から使用開始となり、これに併せて土佐北川駅と大王信号場の機能が統合され、第三穴内川橋梁内部に移設された[44]

年表

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多度津駅 - 三縄駅間(讃岐線→讃予線→予讃線・徳島本線)

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山陽鉄道株式会社 1906年の路線図。買収した讃岐鉄道会社線も掲載されている。

三縄駅 - 須崎駅間(高知線)

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  • 1924年(大正13年)
  • 1925年(大正14年)
  • 1928年(昭和3年)11月27日:佐川駅 - 斗賀野駅間で、混合第131列車(2800形蒸気機関車+客車6両・貨車3両)の貨車1・2両目が連結の不完全により分離、1kmほど進行して機関士が気付き退行するも速度の出し過ぎにより止まりきれず分離した編成に衝突。旅客19名・職員1名負傷、客車3両・貨車2両小損[51]
  • 1930年(昭和5年)6月21日:土佐山田駅 - 角茂谷駅間が開業[48]
  • 1932年(昭和7年)12月20日:角茂谷駅 - 大杉駅間が開業[49]
  • 1934年(昭和9年)10月28日:大杉駅 - 豊永駅間が開業[49]
  • 1935年(昭和10年)11月28日:三縄駅 - 豊永駅間が開業(旧高知線区間が多度津側と一続きになる)[49][52]。予讃本線多度津駅 - 阿波池田駅間、徳島本線阿波池田駅 - 三縄駅間および高知線を併合し、多度津駅 - 須崎駅間を土讃線とする[49]。天坪駅 - 土佐山田駅間に新改信号場開設。

須崎駅 - 窪川駅間(土讃線改称後)

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  • 1939年(昭和14年)11月15日:須崎駅 - 土佐久礼駅間が開業[53]
  • 1941年(昭和16年)10月1日:豊永駅 - 大田口駅間で、準混合列車[注釈 6]第158列車(8620形68648号機+客車1両・貨車11両)の機関車および客車1両・貨車8両が崩壊した築堤より吉野川に落下し、死者6〜7名、負傷者2名を出す惨事になる[54][55][56][注釈 7]
  • 1942年(昭和17年)6月20日:吾桑駅 - 須崎駅間に多ノ郷信号場が開設[53]
  • 1945年(昭和20年)
    • 9月1日:多ノ郷信号場が廃止[57]
    • 10月3日:阿波川口駅 - 西宇駅間で大雨による地滑りが発生。5日、8日にも地滑りが発生し、路盤・擁壁の沈下・破壊、橋台・橋脚の変状により8日より運転休止。11月2日仮復旧[58][59]
  • 1946年(昭和21年)
  • 1947年(昭和22年)
    • 6月1日:新改信号場、多ノ郷信号場が駅に変更され、新改駅、多ノ郷駅が開業[62]
    • 10月20日:土佐久礼駅 - 影野駅間が開業。同区間に笹場信号場を設置[62]
  • 1949年(昭和24年)8月1日:土佐久礼駅 - 影野駅間の笹場信号場が廃止[63]
  • 1950年(昭和25年)
  • 1951年(昭和26年)11月12日:影野駅 - 窪川駅間が開業し、全線開通[65][66]

全通後

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  • 1952年(昭和27年)
  • 1953年(昭和28年)10月23日第8回国民体育大会御出席のため、松山駅→高知駅間(多度津駅経由)で旧1号御料車編成によるお召列車を運転。C58 295牽引。翌24日には高知駅→徳島駅間(徳島本線経由)で運転(牽引機はC58 339[68]
  • 1954年(昭和29年)3月30日:大田口駅 - 大杉駅間を和田トンネル(長さ1,198m)経由の新線に切り替え、土佐穴内駅を新線上に移転[67][69][70]
  • 1956年(昭和31年)
  • 1960年(昭和35年)
    • 5月24日チリ地震津波により、多ノ郷駅 - 須崎間において約500mにわたり道床が流失、須崎駅がホーム上まで浸水。吾桑駅 - 須崎駅間でバス代行輸送、翌々日復旧[76]
    • 8月20日:岡花駅が開業[77]
    • 10月1日:土佐北川駅、襟野々駅、大間駅が開業[77]
  • 1961年(昭和36年)
  • 1962年(昭和37年)
    • 2月13日:土佐岩原駅 - 豊永駅間で土砂崩壊のため不通[78]